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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

14:憧れ

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「うん。聞いてるよ。ノウリッジ様のところのご令嬢だよね」
「はい。あの……茶会の事なのですが……ご迷惑ではないでしょうか……ディロス様は、父上の側妃でこそありますが……私の母上ではないですし……妃として、私の為に同席してもらうのは心苦しく……」

 話を聞いていると頷けば、イデアルからは僕を気遣う言葉が出てきて驚いた。

「ですので、ディロス様が……抵抗のある場合は、私から父上に断りの言葉を、お伝えしようかと……」

 ものすごく言いにくそうに言葉を選んでくれているイデアルに、僕自身が僕自身に対して情けなくなる。

 まだ十二歳の子供にこんなにも思い詰めるように気を遣わせてしまっている事と昨日シュロムから告げられた時に戸惑った事を。

「ありがとう、イデアル。でも、大丈夫だよ。僕も納得して受け入れたし、イデアルがそんなに思い詰めなくても大丈夫」
「本当ですか?」
「うん」

 大きくなってきたけど、まだまだ幼い体つきのイデアルの背中をさすれば、緊張していたイデアルの体から力が抜ける。

 常々賢い子だと思うけど、早熟過ぎるのがたまに傷だ。

 イデアルの賢さとティグレの元気さとアグノスの純粋さを足して三で割ったらいい感じの性格になりそうだけどね。

 みんなばらばらだからこその性格だし、それがいいから今のままでいいんだけど……ちょっとくらい、気を緩めるところができるようになればイデアルも楽なのにな……と思う。

「よかった……もし、私の事で……父上とディロス様の仲が悪くなったらどうしようかと……」
「僕達の事まで考えていてくれていたの?」

 僕の問いにイデアルが小さく頷いて目を見開いた。

 まさかのまさかである。子供って親が思う以上に親を見ているって言うけど、本当によく見ていると思った。

 王族だからってよりも、イデアル自身の気質だと思うけど……これは、イデアル本人がいろいろ悩んでそうだ。

「どうして、そこまで考えてくれたの?」
「私の伴侶との理想の関係は……父上と母上のような国の為に王として王妃として勤める関係なのですが……父上とディロス様の互いを想い合う関係も憧れているのです……」

 ぽつりと呟かれた言葉に本日二度目の驚きを得る。

「シュロムとレーヌ様だけではなく、シュロムと僕も?」
「はい……」

 頷くイデアルにシュロムとレーヌ様の関係のような憧れと似たものを、僕とシュロムの関係にも持たれている事に恐れ多くもあり、同時に嬉しくもある。

 それならば、シュロムから話を聞いた時は気が気でなかっただろう。

「ありがとうイデアル。でも、大丈夫だからね。お茶会も、レーヌ様の代わりにはなれないけど、僕なりに頑張るから」
「ありがとうございます……」

 まだちょっと沈んでいるイデアルを抱きしめてみると、ほんの少しだけ僕の服の裾を握ってくる。

 その甘え方が細やかすぎてイデアルらしいと思った。
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