お飾り婿の嫁入り 血の繋がらない息子のために婿入り先の悪事を暴露したら、王様に溺愛されました

海野璃音

文字の大きさ
上 下
53 / 114
第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

10:隣にある温もり

しおりを挟む
「ありがとう……お前にばかり負担を増やしてすまない」
「僕の事も考えての判断だったんでしょう? なら、僕は君を責められないよ」

 向かい合って座っていた長椅子から立ち上がり、シュロムの隣へと腰を降ろす。

「静かに、ひっそりと暮らしていければよかったけど……そうだよね。そうもいかないよね。君は王様だもの」

 シュロムの肩に寄りかかり、シュロムの手に手を重ねながら呟く。

「すまん」
「謝らないで、そんな君を好きになったのは僕だもの」

 シュロムの指が僕に絡む。見上げるように視線を上げれば、シュロムの深紅の瞳と視線が交わった。

 先ほどの真剣なものとは違い、慈しむよう柔らかい色に感じる瞳へと笑みを浮かべて、わずかに背を伸ばして唇を重ねる。

「だから、シュロムの方が辛そうな顔しないで」
「……すまん」
「さっきから謝ってばっかりだね」

 アグノスの話を聞いて、イデアルに婚約者の話から僕の事まで話さなければならなかったシュロムの心労は、大きなものだったに違いない。

 僕も僕で……心は落ち着いていないけど、シュロムの沈んだ顔を見るのは嫌だった。

「今日は休もう。疲れたでしょう」
「俺は、お前に甘えてばかりだな」

 シュロムの手を引くように立ち上がれば、シュロムは小さく笑みを浮かべて僕に続く。

「普段は、僕が甘やかされてるんだよ」
「いや、普段から甘やかされている自信があるぞ」
「そんなことないって」

 互いに胸の内に抱えたものはあれど、軽口を叩きながら寝台へと寝転べば、シュロムの腕の中に抱えられた。

「ほら、すぐに僕を抱き込んじゃう」
「これは甘えてるんだ」
「……そう言うことにしといてあげる」

 シュロムの言い分を苦笑しながら受け入れ、その背中に腕を回す。

「……これからも、いろんな事があるんだろうね」
「だろうな」
「君と一緒に居たいから、なにがあっても頑張るよ」
「俺も努力しよう。王として足りるよう……お前達を手放さないように」
「うん」

 互いの存在を感じながら思う事を呟く。

 隣にある温もりがあれば、挫けそうな時も頑張れる気がした。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。