52 / 114
第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます
9:覚悟
しおりを挟む
今日一日でこんなにも感情が忙しいことなんてあるんだろうか……。
「待って……本当に待って……どうしてそんな事になるの……」
僕の妃教育? 未婚のご令嬢との妃としての交友?
普通だったら本当にありえない。でも、シュロムの口から出たものは、この私的な時間の中でも……公的なものとして考えているという事に間違いなかった。
「本当は、俺の口から順に話すべきだったが……悪かった」
シュロムがロンを一睨みして、僕へと軽く頭を下げる。
「今、国内は安定しているが、この王宮内で不安定なものが二つある。それは、お前とアグノスの立場だ」
それは……わかっている。あの事件が終わって、僕はここにいなくてもいい立場になった。
シュロムと想いあっていたとしても……国内の貴族からしたら側妃としての僕の存在は不要のものだ。
「正直に言うと……イデアルだけでなく、俺にも縁談の話が来ている。ここ二年落ち着いていたが……やはり正妃は必要ではないのかという声も多いんだ」
予想していた言葉に両手を握りしめる。
シュロムが正妃や他の側妃を娶るのは、国に必要な事だ。それは、わかっている。理解しているけど……それを想像すると心が苦しい。
「だが、俺は今後もレーヌとお前以外の妃を取るつもりはない。正妃は、レーヌだけ。側妃は、ディロス。お前だけだ」
その言葉にほんの少しだけ安心した。
「だから、お前には正しく俺の隣に立つものに立ってもらう」
深紅のシュロムの目が僕を真っ直ぐと見つめる。
「騙し討ちのような形になってすまない。どうか、公的に俺の隣に立つ覚悟を決めてくれ」
深く深く……シュロムが頭を下げる。
本来、誰にも頭を下げさせてはいけない人が……側妃である僕を、男である僕を……公的な立場の人間になってほしいという頼みの為に、僕へと頭を下げていた。
「アグノスは、どうするの……?」
「アグノスは、十の顔見世の時に正式に俺の養子にする。その時にお前の事も、ただの側妃ではなく、公務に携わる公人として貴族に顔見世したいんだ」
なるほど……それなら、彼の考えも理解できる。
でも、僕が? それほどの大役を勤められるのか……。
アグノスの十歳のお披露目と言うことは、あと四年もない。
それなのに、公人として立てるようにならねばならない。
元々は、ただの伯爵家子息であり、侯爵家のお飾り婿であった僕が。
なにもかも……なにもかもが足りない……。
でも、それでも……。
「君の望むほどには足りないかもしれない……それでもいいの?」
「お前は、側妃としての立場を……。いや、次代を守り育む為の心得を得ていると思う。どうか、力を貸してほしい」
真剣な表情のシュロム。ロンからのからかい混じりの言葉ではなく、シュロムが真剣に考えた結果なのであれば、僕は受け入れるしかないだろう。
「わかった。どこまでできるかわからないけど……頑張ってみるよ」
アグノスの事だけでなく、イデアルの事と僕自身の事……いろいろ考えなくちゃいけなくなったけど……ここで暮らし続ける為には、頑張らなければならないことばかりだった。
「待って……本当に待って……どうしてそんな事になるの……」
僕の妃教育? 未婚のご令嬢との妃としての交友?
普通だったら本当にありえない。でも、シュロムの口から出たものは、この私的な時間の中でも……公的なものとして考えているという事に間違いなかった。
「本当は、俺の口から順に話すべきだったが……悪かった」
シュロムがロンを一睨みして、僕へと軽く頭を下げる。
「今、国内は安定しているが、この王宮内で不安定なものが二つある。それは、お前とアグノスの立場だ」
それは……わかっている。あの事件が終わって、僕はここにいなくてもいい立場になった。
シュロムと想いあっていたとしても……国内の貴族からしたら側妃としての僕の存在は不要のものだ。
「正直に言うと……イデアルだけでなく、俺にも縁談の話が来ている。ここ二年落ち着いていたが……やはり正妃は必要ではないのかという声も多いんだ」
予想していた言葉に両手を握りしめる。
シュロムが正妃や他の側妃を娶るのは、国に必要な事だ。それは、わかっている。理解しているけど……それを想像すると心が苦しい。
「だが、俺は今後もレーヌとお前以外の妃を取るつもりはない。正妃は、レーヌだけ。側妃は、ディロス。お前だけだ」
その言葉にほんの少しだけ安心した。
「だから、お前には正しく俺の隣に立つものに立ってもらう」
深紅のシュロムの目が僕を真っ直ぐと見つめる。
「騙し討ちのような形になってすまない。どうか、公的に俺の隣に立つ覚悟を決めてくれ」
深く深く……シュロムが頭を下げる。
本来、誰にも頭を下げさせてはいけない人が……側妃である僕を、男である僕を……公的な立場の人間になってほしいという頼みの為に、僕へと頭を下げていた。
「アグノスは、どうするの……?」
「アグノスは、十の顔見世の時に正式に俺の養子にする。その時にお前の事も、ただの側妃ではなく、公務に携わる公人として貴族に顔見世したいんだ」
なるほど……それなら、彼の考えも理解できる。
でも、僕が? それほどの大役を勤められるのか……。
アグノスの十歳のお披露目と言うことは、あと四年もない。
それなのに、公人として立てるようにならねばならない。
元々は、ただの伯爵家子息であり、侯爵家のお飾り婿であった僕が。
なにもかも……なにもかもが足りない……。
でも、それでも……。
「君の望むほどには足りないかもしれない……それでもいいの?」
「お前は、側妃としての立場を……。いや、次代を守り育む為の心得を得ていると思う。どうか、力を貸してほしい」
真剣な表情のシュロム。ロンからのからかい混じりの言葉ではなく、シュロムが真剣に考えた結果なのであれば、僕は受け入れるしかないだろう。
「わかった。どこまでできるかわからないけど……頑張ってみるよ」
アグノスの事だけでなく、イデアルの事と僕自身の事……いろいろ考えなくちゃいけなくなったけど……ここで暮らし続ける為には、頑張らなければならないことばかりだった。
66
お気に入りに追加
5,688
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく
しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ
おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。