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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

9:覚悟

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 今日一日でこんなにも感情が忙しいことなんてあるんだろうか……。

「待って……本当に待って……どうしてそんな事になるの……」

 僕の妃教育? 未婚のご令嬢との妃としての交友?

 普通だったら本当にありえない。でも、シュロムの口から出たものは、この私的な時間の中でも……公的なものとして考えているという事に間違いなかった。

「本当は、俺の口から順に話すべきだったが……悪かった」

 シュロムがロンを一睨みして、僕へと軽く頭を下げる。

「今、国内は安定しているが、この王宮内で不安定なものが二つある。それは、お前とアグノスの立場だ」

 それは……わかっている。あの事件が終わって、僕はここにいなくてもいい立場になった。

 シュロムと想いあっていたとしても……国内の貴族からしたら側妃としての僕の存在は不要のものだ。

「正直に言うと……イデアルだけでなく、俺にも縁談の話が来ている。ここ二年落ち着いていたが……やはり正妃は必要ではないのかという声も多いんだ」

 予想していた言葉に両手を握りしめる。

 シュロムが正妃や他の側妃を娶るのは、国に必要な事だ。それは、わかっている。理解しているけど……それを想像すると心が苦しい。

「だが、俺は今後もレーヌとお前以外の妃を取るつもりはない。正妃は、レーヌだけ。側妃は、ディロス。お前だけだ」

 その言葉にほんの少しだけ安心した。

「だから、お前には正しく俺の隣に立つものに立ってもらう」

 深紅のシュロムの目が僕を真っ直ぐと見つめる。

「騙し討ちのような形になってすまない。どうか、公的に俺の隣に立つ覚悟を決めてくれ」

 深く深く……シュロムが頭を下げる。

 本来、誰にも頭を下げさせてはいけない人が……側妃である僕を、男である僕を……公的な立場の人間になってほしいという頼みの為に、僕へと頭を下げていた。

「アグノスは、どうするの……?」
「アグノスは、十の顔見世の時に正式に俺の養子にする。その時にお前の事も、ただの側妃ではなく、公務に携わる公人として貴族に顔見世したいんだ」

 なるほど……それなら、彼の考えも理解できる。

 でも、僕が? それほどの大役を勤められるのか……。

 アグノスの十歳のお披露目と言うことは、あと四年もない。

 それなのに、公人として立てるようにならねばならない。

 元々は、ただの伯爵家子息であり、侯爵家のお飾り婿であった僕が。

 なにもかも……なにもかもが足りない……。

 でも、それでも……。

「君の望むほどには足りないかもしれない……それでもいいの?」
「お前は、側妃としての立場を……。いや、次代を守り育む為の心得を得ていると思う。どうか、力を貸してほしい」

 真剣な表情のシュロム。ロンからのからかい混じりの言葉ではなく、シュロムが真剣に考えた結果なのであれば、僕は受け入れるしかないだろう。

「わかった。どこまでできるかわからないけど……頑張ってみるよ」

 アグノスの事だけでなく、イデアルの事と僕自身の事……いろいろ考えなくちゃいけなくなったけど……ここで暮らし続ける為には、頑張らなければならないことばかりだった。
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