お飾り婿の嫁入り 血の繋がらない息子のために婿入り先の悪事を暴露したら、王様に溺愛されました

海野璃音

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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

8:未来の知識

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「……良い子だよ。とても」
「そうか」

 悩ましげな表情をしていたシュロムの肩から力が抜ける。

「ならば、このまま話を進めよう」
「でも……いいの? 僕の言葉で判断して。シュロムが悩むほどの問題だったんでしょう?」
「もちろん、それだけではないのだがな……落ち着いたとはいえ、国の情勢は不安定だ。縁者として王家に招き入れるのは信頼できる者がいい」

 確かにその通りではある。中立の派閥から迎え入れて、王家派を大きくするのも安定させる手ではあるのだが……王家派の繋がりをより強固にするためには、王家派から迎え入れた方がいい。だろう。

 これには、他の貴族の反発もあるとは思うのだけど……次世代やティグレを婿入りさせる事でバランスを取るつもりなのかもしれない。

「だから、確証が欲しかった。お前からやめた方がいいと言われたら他にも候補がいるとはいえ……筆頭候補だからな。一から見直しになる」
「ああ……だから、あんなに気にしてたんだ」

 シュロムが気にしていたのは、自分の選んだ令嬢が僕の記憶との齟齬がないかだったらしい。

「でも、そこまで気にするのなら全部教えるのに」
「お前に頼りきりというのもな……それに、すでにお前の知る記憶から変わっているのだからお前も話した事と齟齬があったら悔いるだろう?」
「それは……そうだけど……」

 さっき考えた通り、僕が生きていて、アグノスがここにいると言うのは、僕の知る未来とはまったく違う。

 現状、僕の知る知識と一致しても、この世界がどう進むかなんて時代が進むにつれて不確定になっていくものだろう。

「でも、そこまで決まっているなら、ロンが言っていたお茶会はしなくてもよさそうだね……」

 側妃の身分で、お茶会なんて正妃気取りかと思われるところだった。それに側妃と言えど男。既婚の女性と会うのもはばかられるのに、未婚の令嬢をお茶会に招くなんてとんでもない事なのだから。

「それなのだが……」

 ホッとする僕にシュロムが言いづらそうに口を開く。

「茶会はしてもらおうと思っている」
「どうして!?」

 シュロムの口からもマリカ嬢とのお茶会の話が出てきて悲鳴じみた声が口から出る。

「この離宮に居る妃はお前だけだ。マリカ嬢の妃教育、そしてお前自身の妃教育の為に必要な交友だと思っている。もちろん、マリカ嬢の保護者と婚約者となるイデアル同席の元だがな」

 たぶん、この日アグノスの質問と同じくらい思考が停止した時間だった。
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