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一部番外編
他視点3-1:王としての悩み[シュロム視点]
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あの惨劇から月日は流れ春となった。
王宮、離宮、軍部を巻き込んだ惨劇による犠牲になった者は予想していたより多くなり、いずれ慰霊碑をディロスの離宮の跡地と戦死者の葬られた墓地へと作る予定になっている。
先王の残した遺恨からここまでの惨事になった事と自らの手腕の無さに気分が沈むが……それでも、子供達の世代に引き継がせる事なく終わったのは幸いだっただろう。
……ディロスの語った話によると、そう遠くない未来。俺はあの異母弟の手によるものによって暗殺され、この国は戦乱の渦へと巻き込まれていったらしいからな。
その頃にはイデアルも成人し、王太子として妃も持っていたようだが……それでも若いうちに王位を継ぐ辛さは知っている。
あの優しい子が、戦乱の時代を王として治め、国の為に戦ったティグレを民の狂刃によって失うという運命と言うのも皮肉なものだ。
ティグレに関しても……英雄と呼ばれながらも最後は民の手によって命を落としたというのはあまりにも報われなさすぎる。
そして、アグノスも……ティグレの手によって命を落とすと、聞いた時は言葉を失った。
今では、本当の兄弟かと思うほど仲の良い二人。その二人が、近い未来。命を奪い合う関係になった可能性があったことを信じきれなかったのだ。
考えれば、イリスィオ……もしくは、リスティヒの落胤であるアグノスが俺の息子達と殺し合うのは今でもありえなくはない未来ではあるのだがな。
ディロスの語った話がすべて事実だと受け入れたわけではないが、俺の知る以前ディロスと前世を思い出したというディロスの差を考えるに、あの覚悟を持つほどの何かがあったのは確かだと思っている。
それが、前世の知識であれ、神からのお告げであれ、未来視であるとしてもな。
どちらにせよディロスは我が王家と同じく神の加護を受けた人間である事は、間違いない。
それゆえにあいつを愛おしいものだと思うと同時に、俺の庇護下から手放すのは危険だと俺の中の勘が告げていた。
実際、あいつの知識は、俺達のものに比べると着眼点の違うものがあるのだ。それを悪用されたら……おそらくこの大陸は混乱に陥る事だろう。
神には、愛おしいものを使わしてくれた事を感謝すべきか……それとも、頭を悩ませる存在を二つも俺の元に寄こした事を恨むべきか……。
そう考えてため息を吐く。頭を悩ませるのもディロスとアグノスが大切だからだ。随分と俺の内面へと深く食い込んだ二人に神へ感謝をしつつも、二人をどう守るべきか悩みは尽きなかった。
王宮、離宮、軍部を巻き込んだ惨劇による犠牲になった者は予想していたより多くなり、いずれ慰霊碑をディロスの離宮の跡地と戦死者の葬られた墓地へと作る予定になっている。
先王の残した遺恨からここまでの惨事になった事と自らの手腕の無さに気分が沈むが……それでも、子供達の世代に引き継がせる事なく終わったのは幸いだっただろう。
……ディロスの語った話によると、そう遠くない未来。俺はあの異母弟の手によるものによって暗殺され、この国は戦乱の渦へと巻き込まれていったらしいからな。
その頃にはイデアルも成人し、王太子として妃も持っていたようだが……それでも若いうちに王位を継ぐ辛さは知っている。
あの優しい子が、戦乱の時代を王として治め、国の為に戦ったティグレを民の狂刃によって失うという運命と言うのも皮肉なものだ。
ティグレに関しても……英雄と呼ばれながらも最後は民の手によって命を落としたというのはあまりにも報われなさすぎる。
そして、アグノスも……ティグレの手によって命を落とすと、聞いた時は言葉を失った。
今では、本当の兄弟かと思うほど仲の良い二人。その二人が、近い未来。命を奪い合う関係になった可能性があったことを信じきれなかったのだ。
考えれば、イリスィオ……もしくは、リスティヒの落胤であるアグノスが俺の息子達と殺し合うのは今でもありえなくはない未来ではあるのだがな。
ディロスの語った話がすべて事実だと受け入れたわけではないが、俺の知る以前ディロスと前世を思い出したというディロスの差を考えるに、あの覚悟を持つほどの何かがあったのは確かだと思っている。
それが、前世の知識であれ、神からのお告げであれ、未来視であるとしてもな。
どちらにせよディロスは我が王家と同じく神の加護を受けた人間である事は、間違いない。
それゆえにあいつを愛おしいものだと思うと同時に、俺の庇護下から手放すのは危険だと俺の中の勘が告げていた。
実際、あいつの知識は、俺達のものに比べると着眼点の違うものがあるのだ。それを悪用されたら……おそらくこの大陸は混乱に陥る事だろう。
神には、愛おしいものを使わしてくれた事を感謝すべきか……それとも、頭を悩ませる存在を二つも俺の元に寄こした事を恨むべきか……。
そう考えてため息を吐く。頭を悩ませるのもディロスとアグノスが大切だからだ。随分と俺の内面へと深く食い込んだ二人に神へ感謝をしつつも、二人をどう守るべきか悩みは尽きなかった。
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