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一部番外編

後日談5:ある春の日の一幕

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 春になり、シュロムの政務も落ち着いたので、宮廷画家に肖像画を書いてもらうことになった。

 いつも以上に着飾った服に身を包み、指示されるままに指定された位置へと並ぶ。

 僕がアグノスを抱いたまま椅子へ座り、その横にティグレとイデアルが、僕らの後ろにシュロムが立った状態で何枚かスケッチを描いてもらい、それらを参考に以前シュロムが言っていた分の肖像画を書き起こすらしい。

 画家という職業は、気難しい人が多いと思っていたのだが、宮廷画家として活動しているだけあって、今回呼ばれた彼は物腰が柔らかく、丁寧な人物だった。

「ディロス様。表情が硬いのでもう少し柔らかく笑えますか?」

 僕には真似できないスピードでスケッチを描いている彼に笑うように言われるが、描かれると言う事に慣れていない為どうにも表情が硬いらしい。

 笑みを浮かべようにも描かれているという事を意識するとどうしても上手くいかない……。

 そんな事で困っていると僕の肩が軽く叩かれ、僕は視線を斜め後ろへと向ける。

 そこには柔らかく笑みを浮かべるシュロムがいて、視線が交わった事に思わず口元が緩んだ。

「なに?」
「緊張しているようだから少し気を緩めようかと思ってな」
「ちょっと、くすぐったいってっ」

 僕の肩を叩いた手の甲で僕の首筋から頬へと柔らかく撫でたシュロムにくすぐったくて声を上げて笑う。

「……陛下、ありがとうございます。いい笑顔が描けました」

 どこか安堵したような声にそういえばスケッチされていたんだと気づいて顔が熱くなる。

「ディロス、かおあかいぞー」
「とうさままっかー」
「二人とも、言わないであげて」

 僕を見ながら不思議そうにするティグレとアグノスの言葉をたしなめるイデアルにより羞恥心が刺激された僕は両手で顔を隠したのだけど……後ろから聞こえたシュロムの楽しそうな笑い声を少し恨めしく思ったのだった。
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