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一部番外編
番外編4-2:誕生日
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「とうさま!あぐのすのすきなものいっぱい!」
全員が揃った夕食の席で、テーブルに並ぶ好物の数々にアグノスの興奮が最高潮に達していた。まだ、ケーキがあるんだけど大丈夫かな……?
「今日はアグノスの誕生日だからね」
「……たんじょうび?」
僕の言葉にアグノスだけではなく、ティグレやイデアルも首を傾げる。
「この国では、祝う習慣はないが他の国では生まれた日を祝う習慣があってね。その事をちょうど思い出して準備してもらったんだ」
シュロムに許可と一緒に祝ってもらえるかの確認をして、一応用意してもらっていた厨房にも決行を告げて、プレゼントは用意できなかったけど、それでもアグノスの好物で夕食を揃えてもらった。
急ごしらえの祝いの場ではあるが、唐突なお願いだったのに叶えてくれた厨房の皆には感謝してもしきれない。
僕の誕生日の説明にへー……!と、目を見開く子供達に小さく笑い告げる。
「もちろん、ティグレやイデアルの時もやるから楽しみにしてて」
「っ!ほんと!おれのすきなものいっぱい!?」
「うん、厨房の皆に作ってもらおうね」
今にも立ち上がりそうなほどに目を輝かせるティグレを微笑ましく見つめながら頷く。
「その……私は、もう十一ですし……十の祝いもやったので……」
もじもじと断ろうとするイデアルにシュロムが笑った。
「ははっ、別に十の祝いをしたとしても、祝っていいじゃないか。俺としてもお前達の成長を祝える習慣ができるのは嬉しい」
「……父上が、そう言ってくださるなら」
シュロムの言葉にイデアルがはにかみながらも笑う。そんな姿を和みながら見ていたら、ティグレが椅子から立ち上がった。
「じゃあ、ちちうえとディロスのたんじょうびもいわっていいってことですね!」
アグノス以上に興奮が最高潮を突き破ったかのような勢いで目を輝かせるティグレの笑顔があまりにも眩しすぎて押される。
「ま、まあ、そうだね」
「他国では王の即位記念日以外に生誕祭として祝いもするようだから、有りと言えば有りか」
大人になっても祝ってもらえる気恥ずかしさにどもる僕とは違って、他国の風習を知っているからゆえに当然のごとく受け入れるシュロム。そういうところもかっこいい……。
「やった!」
僕とシュロムの言葉に喜ぶティグレがガッツポーズを決めた後、満足気に椅子に座り直すと、ハッとしたように僕を見た。
「ちちうえとあにうえのたんじょうびはしってるけど、ディロスのたんじょうびはいつなんだ?」
ティグレの質問に、計八つ……四人の赤い瞳が僕を見つめる。
「えっと……先月の二十八日……本当は二月の二十九日なんだけどね」
「もう過ぎてるし、本当は四年に一回しかないじゃないですか!」
「なんで、じぶんのたんじょうびのときにおもいださなかったんだ!」
ちょっと、気まずい思いになりながら答えれば、案の定イデアルとティグレから言葉が飛んできた。
いや、あんまり自分を祝う感覚がなくて……という言い訳は別の意味で怒られそうだから黙っておく。
でも、初めてやる誕生日祝いが自分の誕生日って凄く自己愛が強く見えちゃうし、思い出したのがアグノスの誕生日でよかったと思うんだ。
「来年!来年は祝いますからね!来年は、二月の二十九日もある日ですし!」
「おれもあにうえも忘れないからな!ちちうえもおぼえておいてくださいね!アグノスも!」
「わかってる。覚えておこう」
「?はーい」
なぜだかやる気のイデアルとティグレに、そんな二人に苦笑いしつつも微笑ましく見つめるシュロム。そして、首を傾げながらもティグレの言葉に頷くアグノス。
来年は、ちょっと覚悟しておいた方がいいのかも……。
なんて思いながら、アグノスの誕生日を祝い楽しんだのだった。
全員が揃った夕食の席で、テーブルに並ぶ好物の数々にアグノスの興奮が最高潮に達していた。まだ、ケーキがあるんだけど大丈夫かな……?
「今日はアグノスの誕生日だからね」
「……たんじょうび?」
僕の言葉にアグノスだけではなく、ティグレやイデアルも首を傾げる。
「この国では、祝う習慣はないが他の国では生まれた日を祝う習慣があってね。その事をちょうど思い出して準備してもらったんだ」
シュロムに許可と一緒に祝ってもらえるかの確認をして、一応用意してもらっていた厨房にも決行を告げて、プレゼントは用意できなかったけど、それでもアグノスの好物で夕食を揃えてもらった。
急ごしらえの祝いの場ではあるが、唐突なお願いだったのに叶えてくれた厨房の皆には感謝してもしきれない。
僕の誕生日の説明にへー……!と、目を見開く子供達に小さく笑い告げる。
「もちろん、ティグレやイデアルの時もやるから楽しみにしてて」
「っ!ほんと!おれのすきなものいっぱい!?」
「うん、厨房の皆に作ってもらおうね」
今にも立ち上がりそうなほどに目を輝かせるティグレを微笑ましく見つめながら頷く。
「その……私は、もう十一ですし……十の祝いもやったので……」
もじもじと断ろうとするイデアルにシュロムが笑った。
「ははっ、別に十の祝いをしたとしても、祝っていいじゃないか。俺としてもお前達の成長を祝える習慣ができるのは嬉しい」
「……父上が、そう言ってくださるなら」
シュロムの言葉にイデアルがはにかみながらも笑う。そんな姿を和みながら見ていたら、ティグレが椅子から立ち上がった。
「じゃあ、ちちうえとディロスのたんじょうびもいわっていいってことですね!」
アグノス以上に興奮が最高潮を突き破ったかのような勢いで目を輝かせるティグレの笑顔があまりにも眩しすぎて押される。
「ま、まあ、そうだね」
「他国では王の即位記念日以外に生誕祭として祝いもするようだから、有りと言えば有りか」
大人になっても祝ってもらえる気恥ずかしさにどもる僕とは違って、他国の風習を知っているからゆえに当然のごとく受け入れるシュロム。そういうところもかっこいい……。
「やった!」
僕とシュロムの言葉に喜ぶティグレがガッツポーズを決めた後、満足気に椅子に座り直すと、ハッとしたように僕を見た。
「ちちうえとあにうえのたんじょうびはしってるけど、ディロスのたんじょうびはいつなんだ?」
ティグレの質問に、計八つ……四人の赤い瞳が僕を見つめる。
「えっと……先月の二十八日……本当は二月の二十九日なんだけどね」
「もう過ぎてるし、本当は四年に一回しかないじゃないですか!」
「なんで、じぶんのたんじょうびのときにおもいださなかったんだ!」
ちょっと、気まずい思いになりながら答えれば、案の定イデアルとティグレから言葉が飛んできた。
いや、あんまり自分を祝う感覚がなくて……という言い訳は別の意味で怒られそうだから黙っておく。
でも、初めてやる誕生日祝いが自分の誕生日って凄く自己愛が強く見えちゃうし、思い出したのがアグノスの誕生日でよかったと思うんだ。
「来年!来年は祝いますからね!来年は、二月の二十九日もある日ですし!」
「おれもあにうえも忘れないからな!ちちうえもおぼえておいてくださいね!アグノスも!」
「わかってる。覚えておこう」
「?はーい」
なぜだかやる気のイデアルとティグレに、そんな二人に苦笑いしつつも微笑ましく見つめるシュロム。そして、首を傾げながらもティグレの言葉に頷くアグノス。
来年は、ちょっと覚悟しておいた方がいいのかも……。
なんて思いながら、アグノスの誕生日を祝い楽しんだのだった。
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