お飾り婿の嫁入り 血の繋がらない息子のために婿入り先の悪事を暴露したら、王様に溺愛されました

海野璃音

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一部番外編

後日談1-6:陛下の帰宅

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 イデアルに僕とシュロムの絵も描いてもらい、勉強そっちのけでお絵描き大会になった頃、シュロムが帰って来た。

「なんだか楽しそうだな」
「ちちうえ!」
「ちちうえー!」

 シュロムの姿を見たティグレとアグノスがソファーから立ち上がって、駆けていく。

「みんなでえをかいてて!あにうえが、すごくじょうずなんです!」
「あにうえ、えじょーずなの!」

 足元にまとわりつく二人を屈み込むように抱き締めた後、二人に手を引かれるようにシュロムが僕とイデアルの座るソファーへと歩み寄る。

「お帰りなさい父上」
「おかえりシュロム」
「ああ、ただいま」

 視線を合わせようと立ち上がった僕とイデアルをシュロムは順番に抱き締めた。

「今日も帰ってこないんじゃないかと思ってたよ」
「それなりに忙しかったが、お前達の顔が見たくてな。明日が少し忙しくなるが……どうにかするさ」

 僕の言葉に苦笑いを浮かべながら肩をすくめたシュロムは、視線をテーブルに移す。

「それより机がずいぶんと賑やかだな。どれが誰が描いた絵なんだ?」
「これがおれ!」
「あぐのすのこれー!」

 柔らかい声で尋ねたシュロムにティグレとアグノスが自分の描いた絵を掲げる。

「俺達の絵か?よく描けてるな」
「へへへっ」
「えへへーっ」

 二人の絵を見ながら、頭を撫でたシュロムにティグレとアグノスが嬉しそうに笑う。

「でも!あにうえがすごいんです!」
「そういえば、さっきもそう言っていたな……イデアルの絵は……なるほど、いい出来だな」

 ティグレが指差したイデアルの描いた絵を見たシュロムが驚いたように目を見開く。

「すごいよね。みんなの特徴をつかんでるし……その場に居なかったシュロムの顔だってよく描けてるんだよ」
「でぃ、ディロス様っ……!そんなに……素人の、絵なので……!」

 シュロムの描かれた紙を取って、シュロムへ見せるように差し出したら、顔を赤くしたイデアルが僕の服の裾を掴む。

「いや、本当によく描けている。……宮廷画家にでも師事してみるか?」
「い、いいのですか……!?」

 僕から受け取った自分の絵を見たシュロムが少し考えて、イデアルへと提案をすれば、イデアルから驚きながらも期待の滲む声が出た。

「かまわん。一つくらい趣味があった方がいいだろうからな」

 シュロムの言葉に顔を期待に輝かせたイデアルの頭をシュロムが撫でる。

「だが、こうやって絵を残すのもいいな。俺の肖像画はいくつかあるが……家族で描かれたものはレーヌがティグレを妊娠していた時の物が最後だ……これを機にいくつか描かせてもいいだろう」
「そうだね。シュロムとティグレとイデアルの肖像画はあった方がいいと思うよ」
「なにを言っている。お前とアグノスが入ったのも描かせるぞ」

 肖像画について考え込むシュロムに同意すれば、予想外の答えが帰って来て驚いた。

「せっかくだからな。俺とイデアルとティグレの三人の物にレーヌ含めた俺達四人の物とお前とアグノス二人の物、今ここにいる五人揃った物。四つ頼めば間違いないだろう?」
「いや、でも……!僕みたいな側妃にそこまでしなくても……!」
「俺がお前達の絵を残したいんだ」

 当たり前の事のように告げるシュロム。断ろうとしたら、慈しむような視線で微笑まれてなにも言えなくなってしまった。

「俺が時間を取れるようになるまでもうしばらくかかりそうだが、春になる頃には王宮も国も落ち着くだろう。時間が取れたら皆で描いてもらおう」

 なんて事ないように言うが、後数ヵ月で収まる騒動だと思えないんだけど……そう言いきってしまったシュロムなら収めてしまいそうだ。

「夕食までもう少し時間がある。お前達が描いた物を見せてくれないか?」

 そう言ったシュロムに僕の描いた絵まで見られる事になったのだが……イデアルの絵の後だったから恥ずかしかったのは言うまでもない。

 可愛いと褒められたけど、それはそれ!これはこれなの!
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