転生冒険者と男娼王子

海野璃音

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1-3.男娼王子の療養と王国のこれから

三十五話

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 我慢の入浴を終え、フレデリック様は穏やかに眠りについた。

 風呂で軽いマッサージしていたくらいからウトウトし始め、体を拭いた後に着替えさせて抱え上げ、そのまま寝室へ運んでいる間にはあっさりと寝落ちていた。

 あまりにも無防備な姿に心を許されている事を実感しながら、ベッドで眠るフレデリック様の隣に横たわり、頬杖を突きつつ眺める。

 鋭さと美しさのある方だが、穏やかに眠る姿は幼い。母国の処理も終わり、全てのしがらみから解放されたと言うのも、いつもより穏やかに見えるのかもしれない。

 ここに連れてきた時より、顔色の良くなった頬を指で突く。虚弱体質故か、一度寝たら起きない為、ちょっとした悪戯はやりたい放題だ。まあ、起きていても嫌がられる事はないのだが……寝ている間に悪戯するから面白いのだ。

 突いた頬は、薄いが柔らかさも感じる。頬から指を滑らせ、形の良い唇に触れれば、こちらも柔らかい。風呂上がりで血色がいいのか、紅を引かずともピンク色をしているのが艶めかしい。

「ん……」

 柔らかな唇の感触を指で楽しんでいるとフレデリック様が少し身じろぎをする。起きなくてもこれ以上は眠りを妨げそうだからやめておこう。

 最後に名残惜しむように唇をなぞってから指を離し、また眠るフレデリック様を鑑賞する。

 いやはや、愛しい愛しい最愛の我が君は、本当に麗しい事この上ないな。

 フレデリック様の美貌を堪能しつつ、ふと思い立って収納魔法からフィラム王妃のティアラを取り出す。

 繊細なそれをそっとフレデリック様の頭に乗せる様に近づければ、フィラム王妃によく似たフレデリック様に良く似合う。それこそ、俺以上に似合ってるのではないかと思う。

 それこそ、俺と言う王の伴侶と思えるほどに。

 まあ……ご母堂の形見とはいえ、王位に就くはずだったフレデリック様にティアラを乗せるのは侮辱になるのではないかと言う、俺の中の貴族教育が訴えてくるのだが。

 自分の考えに苦笑しつつ、しばらくティアラの冠したフレデリック様を見つめ、ティアラを収納魔法へとしまう。寝ている間に少し楽しむ程度で抑えておかないと思いあがりそうだからな。

 穏やかな寝息を立てるフレデリック様を眺めながら、笑みを浮かべる。

「貴方の憂いは消えた。これからはゆっくり幸せになりましょう」

 健康を取り戻して、穏やかな日々を共に。

 そんな事を思いながら、頬杖をついていた手を外し、フレデリック様を抱き込むように抱えたのだった。
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