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2-1.転生冒険者と男娼王子の新しい日常
三十六話
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俺がアンデットキングを倒してから三ヶ月が経った。
あの日、抱いたフレデリック様は、翌日寝込んだが熱を出すこともなく、その次の日には、起き上がる事ができるくらいで済んだ。
それ以降は月一くらいの頻度で淫紋の禁断症状が出ないように抱いている。
それもこれもアルフレッドの治療があるからだろう。
俺の母国の後始末があるはずなのに、定期的に時間を見つければ診察に来てくれる。
貰える薬や副作用の少ないポーションのおかげで、フレデリック様の起きていられる時間は増え、今では部屋の中なら一人で歩けるようにもなってきた。
家の中も十分に歩けるはずだが、多少広い家な事もあって、ついつい抱えてしまうのは俺の悪い癖だろう。
フレデリック様も嫌がっているわけでもないし、受け入れてくれているから今のところ止めるつもりもないが。
「……ニコラ」
「はい、こちらに」
朝、目覚めたフレデリック様に呼ばれ、その体を抱き寄せながら答える。
冒険者はフレデリック様を連れ帰ってからアレ以外は活動休止中。こうやってフレデリック様が起きるまで寝続け、一日の始まりを共に迎えるという至福の生活を続けていた。
「ん……」
まだ、微睡んでいるフレデリック様の頭を髪を梳くように撫でれば甘えるように体を寄せてくる。
その愛おしさに笑みを浮かべていると、完全に目が覚めたフレデリック様と視線があった。
「いつも飽きずに楽しそうだな」
「楽しいですから。起き抜けの貴方は可愛らしい」
「……そうか」
可愛いと言われるのが不服なのか、少し拗ねた様な表情をしながら、フレデリック様は俺を見上げる。
長い睫に縁取られた青い瞳が、真っ直ぐに俺を見つめ、ツンと形のよい唇が俺に向く。
口づけを待っているわけではないんだろうが……これを見るとついつい唇を重ねてしまいたくなるんだよな。
そんな事を思いながら、自分の欲のままにフレデリック様の唇を奪う。
「っ……!ん……」
少し驚いた様子はあれど、拒む事なくフレデリック様は口づけを受け入れる。
「ん……っ……はっ……」
最初は触れるだけだったものが、何度も重ねる内に深いものへと変わっていく。
舌を絡め、フレデリック様の腰を抱き寄せる。俺のその動きに答えるようにフレデリック様も俺の首の後ろへと片手を回した。
「っ……いきなり、なにをする……」
唇を離せば、やや異義があるといった感じの言葉が飛んで来るが顔は満更でも無さそうに頬が赤く染まっている。
「フレデリック様の唇が美味しそうだったので」
「お前はっ……最近可愛くなくなってきたぞ!」
「貴方を愛することに遠慮はしたくないので……可愛くない俺はお嫌いですか?」
「……悪くはない」
ポツリと呟かれた言葉に顔を綻ばせば、フレデリック様は照れたように俺の首元へと額をくっつけるように顔を隠した。
「ふふっ……フレデリック様」
「……なんだ」
「おはようございます」
「……おはよう」
ここ最近お決まりとなったじゃれあいを一通りこなしてから朝の挨拶をすれば、呆れたような笑みと共にフレデリック様からも言葉が返ってくる。
このまま寝転んだままじゃれついていたいところだが、フレデリック様の小さな腹の音が聞こえてきたら話は別だ。
フレデリック様を空腹のままにするわけにもいかないからな。
「朝食はなにがいいですか?」
「そうだな……サンドイッチだったか?あれがいい」
「かしこまりました」
フレデリック様は、俺の問いに少し気恥ずかしそうにしながらも朝食に食べたい物を答えてくれる。
体調が安定し、体力も少しづつ回復してきたフレデリック様は、今では普通の食事も食べれるようになった。
朝は軽めの物を好まれるが、夕食はガッツリとした肉料理等も少しなら食べてくれるし、俺としては嬉しいかぎりだ。
朝食の用意をするためにベッドから起き上がれば、フレデリック様も俺に続くように起き上がる。
どうやらここで待たずについてくるつもりのようだ。
「フレデリック様」
「ん」
抱き上げるために少し屈んで腕を開けば、慣れたように俺の首へとフレデリック様が腕を回す。
両手で横抱きした体は、連れてきた時より体重が増えた感じもするがまだまだ軽い。
そろそろ体力作りの為に運動もさせなければと思うのだが……。
「どうしたニコラ?」
抱き上げたまま動かない俺にフレデリック様が不思議そうな顔で首を傾げる。
こうやって、腕の中に収まり、近い距離で視線が交わる特権を手放す事も惜しいんだよな。
「いえ……行きましょうか」
そんな事を考えているのを隠すように俺は笑みを浮かべて、歩き出すのだった。
あの日、抱いたフレデリック様は、翌日寝込んだが熱を出すこともなく、その次の日には、起き上がる事ができるくらいで済んだ。
それ以降は月一くらいの頻度で淫紋の禁断症状が出ないように抱いている。
それもこれもアルフレッドの治療があるからだろう。
俺の母国の後始末があるはずなのに、定期的に時間を見つければ診察に来てくれる。
貰える薬や副作用の少ないポーションのおかげで、フレデリック様の起きていられる時間は増え、今では部屋の中なら一人で歩けるようにもなってきた。
家の中も十分に歩けるはずだが、多少広い家な事もあって、ついつい抱えてしまうのは俺の悪い癖だろう。
フレデリック様も嫌がっているわけでもないし、受け入れてくれているから今のところ止めるつもりもないが。
「……ニコラ」
「はい、こちらに」
朝、目覚めたフレデリック様に呼ばれ、その体を抱き寄せながら答える。
冒険者はフレデリック様を連れ帰ってからアレ以外は活動休止中。こうやってフレデリック様が起きるまで寝続け、一日の始まりを共に迎えるという至福の生活を続けていた。
「ん……」
まだ、微睡んでいるフレデリック様の頭を髪を梳くように撫でれば甘えるように体を寄せてくる。
その愛おしさに笑みを浮かべていると、完全に目が覚めたフレデリック様と視線があった。
「いつも飽きずに楽しそうだな」
「楽しいですから。起き抜けの貴方は可愛らしい」
「……そうか」
可愛いと言われるのが不服なのか、少し拗ねた様な表情をしながら、フレデリック様は俺を見上げる。
長い睫に縁取られた青い瞳が、真っ直ぐに俺を見つめ、ツンと形のよい唇が俺に向く。
口づけを待っているわけではないんだろうが……これを見るとついつい唇を重ねてしまいたくなるんだよな。
そんな事を思いながら、自分の欲のままにフレデリック様の唇を奪う。
「っ……!ん……」
少し驚いた様子はあれど、拒む事なくフレデリック様は口づけを受け入れる。
「ん……っ……はっ……」
最初は触れるだけだったものが、何度も重ねる内に深いものへと変わっていく。
舌を絡め、フレデリック様の腰を抱き寄せる。俺のその動きに答えるようにフレデリック様も俺の首の後ろへと片手を回した。
「っ……いきなり、なにをする……」
唇を離せば、やや異義があるといった感じの言葉が飛んで来るが顔は満更でも無さそうに頬が赤く染まっている。
「フレデリック様の唇が美味しそうだったので」
「お前はっ……最近可愛くなくなってきたぞ!」
「貴方を愛することに遠慮はしたくないので……可愛くない俺はお嫌いですか?」
「……悪くはない」
ポツリと呟かれた言葉に顔を綻ばせば、フレデリック様は照れたように俺の首元へと額をくっつけるように顔を隠した。
「ふふっ……フレデリック様」
「……なんだ」
「おはようございます」
「……おはよう」
ここ最近お決まりとなったじゃれあいを一通りこなしてから朝の挨拶をすれば、呆れたような笑みと共にフレデリック様からも言葉が返ってくる。
このまま寝転んだままじゃれついていたいところだが、フレデリック様の小さな腹の音が聞こえてきたら話は別だ。
フレデリック様を空腹のままにするわけにもいかないからな。
「朝食はなにがいいですか?」
「そうだな……サンドイッチだったか?あれがいい」
「かしこまりました」
フレデリック様は、俺の問いに少し気恥ずかしそうにしながらも朝食に食べたい物を答えてくれる。
体調が安定し、体力も少しづつ回復してきたフレデリック様は、今では普通の食事も食べれるようになった。
朝は軽めの物を好まれるが、夕食はガッツリとした肉料理等も少しなら食べてくれるし、俺としては嬉しいかぎりだ。
朝食の用意をするためにベッドから起き上がれば、フレデリック様も俺に続くように起き上がる。
どうやらここで待たずについてくるつもりのようだ。
「フレデリック様」
「ん」
抱き上げるために少し屈んで腕を開けば、慣れたように俺の首へとフレデリック様が腕を回す。
両手で横抱きした体は、連れてきた時より体重が増えた感じもするがまだまだ軽い。
そろそろ体力作りの為に運動もさせなければと思うのだが……。
「どうしたニコラ?」
抱き上げたまま動かない俺にフレデリック様が不思議そうな顔で首を傾げる。
こうやって、腕の中に収まり、近い距離で視線が交わる特権を手放す事も惜しいんだよな。
「いえ……行きましょうか」
そんな事を考えているのを隠すように俺は笑みを浮かべて、歩き出すのだった。
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