転生冒険者と男娼王子

海野璃音

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1-2.転生冒険者と男娼王子の最初の一日

二十話★

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 フレデリック様を抱えたまま、風呂の準備をする。着替えやタオルは脱衣所に用意されているから問題はないが、家の機能を使って風呂を沸かすとなると少し時間がかかるので自分の魔力を使って湯船にお湯を生成した。

「二コラは凄いな。こんな事もできるのか」

 湯船に揺れるお湯を見ながら目を見開くフレデリック様の様子はどこか幼い。魔法について勉強されてはいるはずだがどれも自衛の範囲でしかない為、転移魔法の時と言い物珍しいのだろう。

「詠唱有りであればあまり難しくないからフレデリック様も直ぐにできますよ。魔法学の授業では成績は悪くなかったのでしょう?」
「そうだろうか……だが、お前が言うのならお前から習うのも悪くないだろうな」

 悪くないと言いながらも楽し気に笑うフレデリック様に俺も嬉しくなる。色々制限をつけられていたこの人に新しいものを俺の手で教えていくのは嬉しい事だからだ。

「それじゃあ、風呂に浸かりながら水流操作でも試してみますか?初級魔法で習うようなものですが……この浴槽ほどの水を動かした事はないでしょう?」
「いいのか?あまり、湯船で暴れるのは行儀が悪いのではないか?」
「俺とあなたしかいないのだからいいんですよ」

 些細な事を気にするフレデリック様に笑いながら許可を出せば、フレデリック様はきょとんとした顔になって、俺と同じように楽しげに笑う。

「確かにそうだな」
「ダメだって言われてきたのを出来るのを考えるとワクワクするでしょう?」
「ああ、入る前から楽しみだ」

 二人で楽し気に笑いながら、俺はフレデリック様を脱衣所に降ろし、服を脱がせていく。と言っても、俺のシャツと下着しか身に着けていないのだが。

「先に入っていてもいいですよ」
「いや、お前と一緒がいい」

 フレデリック様を脱がした後、先に入っているように促すもいいと首を横に振るフレデリック様にならばいいかと俺も服を脱ぎ捨て、その細い体を抱き上げた。

「……別に抱えてほしいとまでは言っていないのだが」
「俺がしたいんでいいんです」

 ちょっと不満そうに言うフレデリック様だが、抱き上げると同時に俺の首へと腕を回したので満更でもなさそうだ。ここまで甘やかすのはダメかもしれないと思いつつも、フレデリック様が受け入れてくれるかぎりは甘やかしたいので節制は保留とする。

 フレデリック様を抱えたまま浴室に入り、椅子へと降ろす。

「洗っていきますね」
「ああ」

 フレデリック様の白い肩に湯船から組んだお湯を掛けていく。この浴室にはシャワーも有りはするのだが、こちらの方が慣れているだろうとの判断だ。

 お湯を掛けていくたびに、フレデリック様の背中に流れる金糸が水を含み体に張り付いていく。背中の凹凸に沿って張り付くそれはどこか艶めかしかった。

「……二コラ?」
「ああ……すみません。頭からも湯を掛けていいでしょうか」
「頼む」

 いけないいけない。水に濡れるフレデリック様も扇情的だがこれで興奮するようではいけない。これから何度も一緒に風呂に入る事になるのだろうから堪えなければ。

 フレデリック様の頭にお湯を掛けつつ、髪にお湯を含ませていく。十分に濡れた髪に薬師から買った洗髪剤……シャンプー的なものを馴染ませながら、フレデリック様の頭皮もマッサージすれば、フレデリック様の口から小さく吐息が漏れた。

「っ……」

 それだけで色っぽいんだから、凄まじい色気だと思う。元気になりそうな愚息を理性で抑えながら、洗い終えた髪をすすぎ、脱衣所から持ってきたタオルで纏めておく。

 で、ここからだ。フレデリック様は世話されるのが当たり前だったから自分で体を洗うという思考はないだろう。俺としても世話をして差し上げたいからいいのだが……髪を洗うだけで理性が揺れるのだから未熟すぎるぞ俺。

「……体も洗いますね」

 理性を総動員して、フレデリック様の体を泡立てたタオルで擦っていけば、小さく漏れる吐息がやはり色っぽく、色々堪えながら全身を洗いつくした。

 陰部を洗っている時なんか、艶っぽい吐息を零し、緩く反応するのだから途中から無になったのは言うまでもない。

 だが、やり遂げた後にお湯を流せば、泡の落ちた体は今まで以上に艶めいて輝いているように見えた。

「それじゃあ、湯船につかりましょうか」
「……お前は洗わなくていいのか?」

 フレデリック様を抱えた俺にフレデリック様が首を傾げる。

「俺は、魔法で清めましたから大丈夫です」

 今のフレデリック様だと俺が洗っている間も側で待つと言いそうなので俺はさくっと魔法で体を清める。風呂は気持ちいいけど清浄魔法はやっぱり便利だ。

「そうか」

 ちょっと納得いっていないという顔をしながらも、フレデリック様はそれ以上の追及はしない。その様子に首を傾げながらフレデリック様と湯船につかる。

 フレデリック様は俺にもたれかかるように華奢な肩を俺の胸につけ、肩に頭を寄せてくる。その腰を片手で抱き寄せれば、フレデリック様は嬉しそうに笑った。

「別にお前から離れるつもりはないぞ」
「知ってます。でも、触れていたいんです」

 フレデリック様の頭へと頬を寄せ、俺の片手を掴んでは遊び始めたフレデリック様を好きにさせる。

 自分より大きく逞しい手に華奢な手を重ねたり、手を繋ぐように握ったりと俺との差を確認するフレデリック様は楽し気で可愛らしいのにその一つ一つの動きに色気と気品がある。

 だが……まあ、あまりに俺の上で楽しそうにされると理性も揺らぐというもので……。

「……私が欲しいのか二コラ」

 自らの太ももに当たる俺の愚息に気づいたフレデリック様がゆるりとした笑みを浮かべて俺を見上げる。

「……すみません。気にしないでください。直ぐに収まりますので」

 そう言った俺に、フレデリック様は片眉を上げながら、横向きに座っていた体を俺を跨ぐようなものへと変えた。

「私はお前に求められると嬉しいのに、お前は私を求めないのか?」
「いえ、昨日したばかりですし……出来る事ならあなたを労わりたいのです」

 不貞腐れたようなフレデリック様を抱きしめ、その額にキスを落とすも納得いかないと言った様子のフレデリック様と目が合った。

「私は良いと言っているのに……こんなにここを反応させているのだから手を出せばいいものを」
「ちょっ……!フレデリック様っ!」

 フレデリック様の細い指が俺の性器へと触れ、緩く扱く。それだけで硬くなりかけていた陰茎はより硬さを増し、腹に着くほどにそそり勃ってしまった。

「……体は素直だな二コラ?」
「あぁ、もう……勘弁してください。紳士でいたいのに……」
「自分で紳士と言っている奴は信用ならん。だから、お前は目指さなくていい」

 俺の言った事をバッサリと切り捨てるフレデリック様。王宮娼夫の時に紳士を名乗る輩に何かされたんだろうなぁ……どこのどいつだ。いつか燃やす。

「でも、大事に扱いたいんですよー。俺の欲だけで抱きたくないし、今は休んでほしいんですから」
「私が求めてるのを拒むのがお前の優しさか?」

 明らかに不機嫌になったフレデリック様に頭を抱える。いや、フレデリック様が求めてくれるのは嬉しい。でも、なんか無理しているようにも見えて痛々しいんだよ。それでしか、俺に応えられる事がないとでも言っているようで。

「わかりました……でも、今日は手だけでしましょう?中も清めていませんしね」
「……わかった」

 俺から妥協案を出せばフレデリック様は渋々と言った様子で頷く。渋々でも納得してくれた事に安堵しながら、俺はもう一度フレデリック様の額へとキスを落とした。

 だけどまあ……風呂場での行為にフレデリック様が耐えられる気はしない気もするんだよなぁ……。
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