転生冒険者と男娼王子

海野璃音

文字の大きさ
上 下
7 / 47
1-1.転生冒険者は男娼王子を攫う

七話★

しおりを挟む
「……くしゅっ」

 しばらく到着したままで話していたからかフレデリック様が小さくくしゃみをする。ここは母国より北の国だし季節は夏でも今のフレデリック様の服装じゃ肌寒かったのだろう。……ほぼ裸みたいなもんだし。夏とはいえ、暖炉もつけておくべきだったな。

「何か服を用意しましょう。俺のなんで大きいかと思いますが……今の物よりはマシでしょう」

 娼婦や踊り子が着ている分には扇情的で悪くはないと思うのだが、フレデリック様が着ているのは別だ。一度は婚約者として、忠誠を誓っても良いと思った方ゆえに目のやり場に困る。すごく困る。

 長い絹糸のような金髪、白い透けるような肌、新緑のような碧色の瞳にそれを覆うような長いまつげ、薄くも形のいい艶やかな唇。スタイルだって痩せているが括れた腰と長い脚とそんじょそこらの男娼じゃ敵わないくらいの神々しい美貌なのだ。

 そんな邪な目で見たくないのに、王宮から連れ去ったらより輝いて見える。元々の恋愛対象は女性だったが、なんだかんだとこの世界に馴染んだ結果、男でも美人だと気にならなくなってしまった。早く、早く服を着せなければ。

 フレデリック様を担いだまま、早足で廊下を歩き、自室の扉を開ける。自室にはベッドと長椅子、その二つ用のサイドテーブルしか置いていないので殺風景だが、たまにしか帰ってこないのでこれくらいでも問題ない。

 フレデリック様を長椅子に座らせて、寒くないようにベッドから引きはがした毛布を肩にかける。

「すぐに用意しますので、少しお待ちください」
「ああ……」

 毛布を手で掴み、体を覆うフレデリック様にやはり寒かったのだろう。熱くなるかもしれないが部屋の暖炉だけつけて、フレデリック様に着せる服を探しに隣接する衣裳部屋へと向かう。

 前世的に言えば、ウォークインクローゼットって感じだろうそこは、クローゼットと思えないほどに広い。さすが元貴族の家と思う。まあ、衣装持ちではない俺からしたらあまり収める服はないのだけど。

 依頼中に破けたりしたら廃棄しているので、基本シンプルな服が少量あるだけ。まあ、そのおかげでサイズは大きいが新しい服をフレデリック様に渡せるのでいいのだが。

 俺も礼服のままだから着替えたい所ではあるが、フレデリック様をあまり待たせるわけにもいかないのでシャツとズボン、下着だけ持っていく。ウエストは倍近く違いそうだからズボンと下着は紐で止められるタイプのやつだ。

「お待たせしました。着替えましょう」
「わかった」

 長椅子に座ったフレデリック様に手を伸ばせば、毛布を置いて、俺の手を支えに立ち上がる。

 そして、俺に向けて背中を見せたので、王宮娼夫に堕とされてからも世話自体は王子の時のままに行われていた事を悟った。

「ニコラ?」

 俺が着替えを手伝わない事に首を傾げているあたり、フレデリック様は生粋の王族育ちだ。自分で脱ぎ着するという感覚がないのだろう。俺も実家に居た頃は似たような生活していたけど、前世の記憶とかなければそれが当たり前だったんだろうなぁ……。

「すいません。改めて見るとあまりに細くて……脱がしますね」

 曖昧に笑みを浮かべながら、首の後ろで止められている留め具を外す。踊り子のような薄い布の衣装は宝石の付いた金製の装飾が至る所についており、この服だけでもなかなかに価値が高そうだ。

 それ以外に首飾りや耳のピアス、乳首や陰茎についたピアスも金製で宝石がついているあたり、相当に金が掛かっている。

 おそらく、フレデリック様の王宮娼夫としての価値を上げるための衣装だろうが、よくここまで仕立て上げたものだ。依頼でそれなりに魔石や宝石の採取を頼まれたことがあるが、粒は小さくても一級品のものばかりなのだから。

 あの王宮で用意されたものとはいえ、宝石の価値に変わりはない。一つ一つ外しながら、長椅子の横にあるサイドテーブルへと置いていく。

「終わりました。ピアスはどうされます?」
「休む時は耳のものだけ外している。他のものは付け替える時以外はそのままだ」

 視線を向ければ、乳首のものは乳首の周りをぐるりと覆い、乳輪の半分を隠すような作りになっており、真ん中に一本ピンが入っているのが見える。乳首ピアス同士を繋ぐチェーンが何本か繋がっており、横につながらるチェーンと垂れ下がる縦のチェーンがフレデリック様の胸元で揺れていた。

「……それではチェーンだけでも外しましょうか」
「任せる」

 フレデリック様は特に気にしていないようだが俺が気になるのでチェーンだけでも外すことにする。乳首ピアス自体は、今後のフレデリック様の判断次第で穴を閉じるか、俺から新しいものを贈らせてもらおう。あの王宮から持ってきた物はできるだけ身につけさせたくないからな。

「失礼します」
「っ……」

 フレデリック様の正面へと回り、ピアスとつながっているチェーンの金具を外す。もちろん、外す為にはフレデリック様の乳首に触れなければならないし、小さくもピアスのせいで感度の上がったフレデリック様からあがる吐息に理性を総動員したのは言うまでもなかった。

「っあ……まだ、か……」
「すみません、あと少し……」

 俺の指が太くて、細かい金具に苦戦していると刺激に堪えられなくなってきたフレデリック様が俺の肩に手を置く。きゅっと肩を掴みながらも足から力が抜けぬように堪える姿がいじらしい。

 ……外すことに集中しよう。俺は臣下。俺は臣下。

 男としての欲を押さえつけ、俺は細かい金具を外すことに集中したのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

処理中です...