念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第178話 君に伝えておきたいことがある

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 トレインの家を出た俺達は、持っていた荷物を宿屋に置いてから、町の中央にある噴水広場に向かう。

 「見て! 私達が座ってたベンチがまだあるわよ!」

 「本当だな。ジュースも買ってきたし、あそこに座ってちょっと話でもするか」

 俺地は前に座ったベンチに腰を下ろして、ジュース片手に話をする。   

 「確か前は護衛が終わった後、ここでリネットとサーシャに二人の手伝いをさせてくれって頼んだよな」 

 「そうよ、私達の手伝いをすれば勇者になれるとかなんとか言ってたわよね」

 「役に立ちたかったのもあったけど、それよりも自分の存在意義みたいものを見出だしたかったんだと、今になって思うよ」
 
 「私達の方も予定が随分狂っていたから強力してくれて助かったけどね」

 「その後マリィ達に会ったんだよな。フィオはすぐ受け入れてくれたけど、マリィからは殺されそうになったんだっけか」

 話を聞いていたマリィが懐かしそうに返答する。

 「あのときはまだお前を信用していなかったからな。ただでさえ任務に支障がきたしていたのに、そのうえ変な男が仲間になるなどありえないと思っていた」

 「ははっ、でも今じゃ懐かしい思い出だよ。その後も五人で色々なとこに行ったよな……」

 「大変だったけど楽しかったよね……」

 俺が名残惜しそうに言ったのが伝わったのか、フィオが寂しそうに呟く。

 「……終わったな。長い旅路だったけど、終わってみると少し寂しそう気もするよ」

 「そうですね……。みんなでこうして、馬車に乗って旅をすることが無くなると思うと、少し残念ではありますね……」

 「何みんなして暗くなってんのよ! まだオルビルトが残ってるんだから、またみんなで探しに行けばいいだけでしょう?」

 リネットは立ち上がってサーシャとフィオの肩を叩き、暗い雰囲気を吹き飛ばすかのように声を上げる。

 「悪い悪い。そんなつもりは無かったんだけど、つい湿っぽくになってしまったな」

 「それに前も言ったと思うけど、理由なんて無くても一緒に旅をすればいいだけじゃない」

 「そういえばみんなでこの世界を見て回る話もあったよな? 全部片付いたら本当にそうしようぜ!?」

 「いいわね! 次は連休を取ってこっちに来ましょうか!」

 「よーし! そうと決まれば早いとこオルビルトのヤツを捕まえに行くとするか!」
  
 その後、俺達はアステンダルの宿屋で一泊してから再び馬車を走らせる。

 そこからしばらく馬車での移動が何日も続き、色んな町に寄りながらようやくサルブレルに到着する。

 「いやぁ……やっと着いたな。旅が出来なくなるのは残念だけど、馬車から解放されるのは嬉しいかもな」

 「そうね……ちょっと隣の国に行こうと思っただけでもかなり時間が掛かるからね。今回なんて二週間以上よ……」

 「帰りに色んな町へ寄って買い物するのは楽しいけどな。まっ、とりあえず降りるか」

 馬車を家の前で止めてもらった俺達は、行き帰りの道中で買った荷物をリネット達の家に運ぶ。

 そして、荷物の中から自分の買ったものを持ってひとまず帰宅することに。

 「ただいま! お土産買ってきたぞミシェル!」

 玄関を開けてそう言うも、いつものようにミシェルは出迎えには来てくれず、代わりシーンとした静けさが家の中を支配していた。

 ん……? まだムングスルドから帰ってないのか? それか城に行ってるのかもな。

 そのとき、ふとあることが頭の中をよぎる。
 
 ……も、もしかして!?

 俺は買ってきたお土産を玄関に投げ捨てて急いで家の中に入る。

 すると、リビングやアグローさんの部屋はキレイに掃除をされていて、俺がミシェルに買ってあげたカゴも無くなっている。

 なっ……嘘だろ……まさかもう帰ったのか……?

 どうやら俺の予感は的中したようで、リビングの上にはミシェルからの置き手紙があった。

 なになに……
 
 「『ソウタへ。まずは黙って出ていくことをお許し下さい。僕は一足先にイストウィアに帰ることになったので手紙を残します。短い間だったけどお世話になりました。次はこっちにも遊びに来てね! 追伸・貰ったカゴは向こうで大事に使わせてもらうね』……か」
 
 俺はひづめの足跡で埋め尽くされた手紙を握りしめてすぐに家を出る。

 そこへ、リネット達も慌てた様子で家から出てきて俺のところに来る。

 「大変よソウタ! ノーマ達が帰ったんですって!」

 「こっちもアグローさん達が帰ったって書き置きがあった。城に行ってみよう!」

 俺達はエクシエルさんに話を聞くため城に向かう。

 エクシエルさんは城の門前にいて、ウラガン団長達と集まって何かを話していた。
  
 その中にアグローさんとミシェルの姿もあったので、俺はすぐに二人のもとに走る。

 「おーい! ミシェル!!」

 「ソ、ソウタァ!?」

 俺の呼び掛けに気付いたミシェルがこっちに向かってトコトコと走ってくる。

 ミシェルは俺の胸に飛び込んできて鼻をグイグイと押し込んでくる。

 「黙って出ていくなんて酷いじゃないか?」

 「ごめんね。待ってたんだけど、もう帰る時間になっちゃったんだ」

 「俺も帰るのが遅くなったからな。でも間に合って良かった。今から帰るのか?」

 「うん。もう後数分もしたら帰るところだったから、最後にソウタと会えて本当に良かったよ!」

 「……色々ありがとうな。二人がいてくれたおかげで毎日楽しかったよ!」

 「もう会えなくなるのは寂しいけど、僕も一緒にいる間スゴく楽しかったよ。ありがとうソウタ!」

 「そうそう、ミシェルにはまだ言ってなかったけど、俺も後でそっちに行くんだぞ?」

 「本当かい!?」

 「ああ、本当さ! ミシェルにそれだけは伝えておきたかったんだ。向こうでもよろしくな!」

 「ふふっ、なんだか一人で早とちりしたみたいで恥ずかしいね。てっきりもう会えないものだと思ってたから、手紙まで残しちゃったよ」

 「ははっ、あの手紙は俺が大事に持っておくよ。それで、後は誰が帰るんです?」

 俺はミシェルを抱き抱えたままエクシエルさんに聞く。
 
 「後はノーマ達とシュヴィ、それにクロムよ。ノーマ達はプリムさんが送ってくれるらしいから助かるわ」

 ミシェルしか目に入ってなかったが、その場にはシュヴィさんとクロムさんも一緒に立っていた。
 
 俺はアグローさんと二人に別れの挨拶をする。
 
 「三人にも色々とお世話になりました。またそっちに行ったときはよろしくお願いします」

 「俺なんか特に世話になったからな。今度は俺が世話をしてやろう!」

 「それは是非お願いします! それから……シュヴィさんにも言っておきたいことがあったんです」

 「……なんだ?」

 「あの……巨大手裏剣の上に乗ってクルクル回るやつあったじゃないですか? あれ、滅茶苦茶格好良かったんです!」

 それを聞いたシュヴィさんは、少しの沈黙の後おもいがけない言葉を口にする。
 
 「……今度お前にも教えてやろう」

 「え!? 本当ですか!?」
 
 シュヴィはコクりと一度だけ頷く。

 「これはスゴい話だぞソウタ! シュヴィ達の技なんて俺達でも知らないからな!」

 クロムさんがやや興奮気味に俺に言う。
 
 「そうなんですか!? 確かにシュヴィの技って、エスプリマとかそういう問題の話じゃなそうですもんね」

 「エスプリマが無くてもワケのわからない技を一杯使うからな……。でもまあ、これで一つ楽しみが増えたな?」

 「ええ! クロムさんもありがとうございました。今度クロムさんのアニマルシェも見せてくださいね」

 「ああ、いいぞ。さて、それじゃあ閉じる前にそろそろ行くとしますか?」

 クロムさんがアグローさん達にそう言って、城門の近くある木の中に入っていく。

 すると木の一部分に歪み生じ、ぶつかることも通り抜けることもなく、クロムさんは木の中に消えていく。

 「じゃあまたね、みんな!」
 
 ミシェルは俺達に前足を上げ、アグローさん達と一緒に時空が歪んだ木の中に入っていく。

 四人が消えたと同時に木の歪みも消え、触ってみても何も起こらない普通の木に戻る。

 帰ったか……これからしばらく寂しくなるなあ……。

 その後、俺達はノーマ達の見送りにも向かい、四人がプリムに送られてイストウィアに帰っていくのを見届ける。
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