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第167話 備えあれば憂いなし
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ドルムの町を出て二日が経ち、何事もなくザイヘルベルグに帰り着く。
俺達はムングスルド城の近くにある広場に下ろしてもらい報告に向かう。
城付近はだいぶ片付けられていて、城の方にも人が出入りをしているようだ。
サルブレムの軍営場所でエクシエルさんを見つけ、リネット達が声を掛けに行く。
みんなが報告に行ってる間、俺は近くで何かの作業をしているプリムと話をすることに。
プリムは屋根しか無いテントの中で補給物資の確認をしていて、真剣な顔つきで箱の数を数えている。
「ただいまプリム。手伝おうか?」
「あっ、おかえりなさい。こっちはもう終わるから大丈夫よ。そっちはどうだった?」
「特に問題も無くリネット達の仲間を連れて帰ること出来たよ」
「良かったわね! こっちもキニングとフィオちゃん達が来たわよ」
「なんだかんだフィオ達も来たのか。キニングも着いたんだったら、次の戦いに参加してもらえるな」
「ふふ、あまり無理はさせないでね。そうそう、それからもう一人ロイに会いに来た人がいるみたいなの」
「誰だろう? その人がどこにいるか分かるか?」
「いないことを伝えたら、その辺で待ってるって言ってどこかに行ったらしいわ」
「……もしかして長い前髪で目元を隠した青年じゃないか?」
「そこまでは聞いてないんだけど、グラヴェールの軍が進軍してきてることをロイに伝えてくれって言ってたみたいよ」
「なんだって!? それが本当なら急いで態勢を立て直さないと戦いに間に合わなくなるぞ」
「今シュビィさん達が偵察に行ってるわ。まだどうなるか分からないけど、一応念のために作戦会議を開いて準備だけは進めてるの」
「こっちが疲弊してるところを狙ってきたか……。それで現在の状況はどうなってるんだ?」
「今回の戦いで思ったよりも負傷した人達が多かったわ。だから連戦となると、みんなの体力が持つかどうかが問題になってるくるわね」
「グラヴェールに攻め込んでくるだけの戦力があるようだし、初めからこうする予定だったんだろうな」
「お昼過ぎに城内で会議をするからそこで詳しい話をしましょう」
「おっ! 帰っておったのかロイ」
プリムとの話が一段落ついたところで、テントの中にキニングが入ってくる。
隣にはディアナも一緒にいて、何やら布に巻かれた長い棒みたいなもの二本持っている。
「待ってたよキニング。遅くなったみたいだけど忙しかったのか?」
「なに、アリエル達に付き合わされたおかげで、自分の武器を作る暇がなかったからのう。それでちょっと時間が掛かったんじゃ」
「ああ、そういうことだったのか。じゃあディアナの持ってるその棒みたいなやつがキニングの武器ってことか?」
「いや、それは重いから別の武器を使うつもりじゃよ。その武器は万が一に備えて持ってきただけじゃ」
「これからが本番だし、使う機会があるかもしれないな」
「なんじゃ、これから始まるのか。ワシも年じゃからそう長くは戦えんぞ?」
「その武器と同じで万が一に備えていてくれればそれで十分だよ。でも年は取ってるとはいえ、体は鍛えてあるから全然戦えそうだけどな」
「まあ早いとこ戦争も終わらせたいし、ワシも頑張るつもりではおるぞ。ところでお主ウィルの力を貰って何か変化はあったのか?」
「うーん……少し魔力が上がった感じがするのと、光の精霊の力が少しだけ使えるようになったくらいかな」
「少ししか変わらんのか……。それじゃったらそんなに期待出来んのう」
「適正はあったかもしれないけど選ばれたわけじゃないからな」
「能力が飛躍的に上がるんじゃったらワシの力もやって良かったんじゃがなあ」
「いやいや! 畑で採れた大根じゃないんだから、そんな簡単に譲渡出来るものじゃないだろう! それに、もしそれでキニングが死んじゃったら夢見が悪くなるよ」
「はっはっはっ! それもそうか! そうした方が今回の戦いにしても、オルビルトにしても早く倒せるんじゃないかと思ったんだがのう」
「まったく精霊の力をなんだと思ってたんだよ。でもまあ俺達以外にも戦ってくれる人達がいるんだし、次の戦いもすぐに終わるさ」
キニングの武器をテントの中に置いた後、俺達は城内の会議室に向かう。
予定の時間には少し早かったが、会議室にはすでに多くの人達が座って待っていた。
ロムル王やフレールさんはいないが、代わりにウラガン団長やランバートさんが国の代表として出席している。
俺達よりも少し遅れてエクシエルさんとアグローさん達が入ってくる。
「こんにちはエクシエルさん、アグローさん。リネット達との話はもう終わったんですか?」
「あら、ソウタ君達も早いわね。まだ終わってないんだけど大体の話は聞いたわ。さっきイネス先生とフィオも来て、今みんなで盛り上がってるところよ」
「一気に賑やかになりましたね。マグナ達はどうなりそうですか?」
「彼等の処遇については向こうへ帰ってからになるわね。しばらくはうちの観察下に置かれるとは思うけど、重たい罪にはならないと思うわ」
「それと、俺に会いに来たヤツがいたらしいんですけど、多分そいつもマグナ達の仲間なんですよ。良ければそいつも連れて帰ってやって下さい」
「ああ、情報の提供をしてくれた人ね。情報が嘘じゃなければ、協力してくれたってことで、話を良い方向に持っていくことも出来るわ」
「俺だけ何度殺されかけましたが、極悪人ではないようです。……俺だけ何度も殺されかけましたけどね……」
俺達が話をしてる間に時間がやってきたみたいで、ウラガン団長が俺達の正面に立って口を開く。
「えー、僭越ながら私が今日も進行を務めさせて頂きます。それでは皆様よろしくお願いします」
ウラガン団長は一礼して、まずそれぞれの陣営から貰った報告書をまとめた結果から伝える。
それによると十二万の兵のうち、四万の兵が負傷及び戦闘には参加出来ないらしく、およそ八万の兵で戦うことになるとのこと。
あの戦いでそんなに戦力を失ったのか……。グラヴェールも同じように魔獣を用意していたら結構な被害が出るかもしれないぞ。
俺達はムングスルド城の近くにある広場に下ろしてもらい報告に向かう。
城付近はだいぶ片付けられていて、城の方にも人が出入りをしているようだ。
サルブレムの軍営場所でエクシエルさんを見つけ、リネット達が声を掛けに行く。
みんなが報告に行ってる間、俺は近くで何かの作業をしているプリムと話をすることに。
プリムは屋根しか無いテントの中で補給物資の確認をしていて、真剣な顔つきで箱の数を数えている。
「ただいまプリム。手伝おうか?」
「あっ、おかえりなさい。こっちはもう終わるから大丈夫よ。そっちはどうだった?」
「特に問題も無くリネット達の仲間を連れて帰ること出来たよ」
「良かったわね! こっちもキニングとフィオちゃん達が来たわよ」
「なんだかんだフィオ達も来たのか。キニングも着いたんだったら、次の戦いに参加してもらえるな」
「ふふ、あまり無理はさせないでね。そうそう、それからもう一人ロイに会いに来た人がいるみたいなの」
「誰だろう? その人がどこにいるか分かるか?」
「いないことを伝えたら、その辺で待ってるって言ってどこかに行ったらしいわ」
「……もしかして長い前髪で目元を隠した青年じゃないか?」
「そこまでは聞いてないんだけど、グラヴェールの軍が進軍してきてることをロイに伝えてくれって言ってたみたいよ」
「なんだって!? それが本当なら急いで態勢を立て直さないと戦いに間に合わなくなるぞ」
「今シュビィさん達が偵察に行ってるわ。まだどうなるか分からないけど、一応念のために作戦会議を開いて準備だけは進めてるの」
「こっちが疲弊してるところを狙ってきたか……。それで現在の状況はどうなってるんだ?」
「今回の戦いで思ったよりも負傷した人達が多かったわ。だから連戦となると、みんなの体力が持つかどうかが問題になってるくるわね」
「グラヴェールに攻め込んでくるだけの戦力があるようだし、初めからこうする予定だったんだろうな」
「お昼過ぎに城内で会議をするからそこで詳しい話をしましょう」
「おっ! 帰っておったのかロイ」
プリムとの話が一段落ついたところで、テントの中にキニングが入ってくる。
隣にはディアナも一緒にいて、何やら布に巻かれた長い棒みたいなもの二本持っている。
「待ってたよキニング。遅くなったみたいだけど忙しかったのか?」
「なに、アリエル達に付き合わされたおかげで、自分の武器を作る暇がなかったからのう。それでちょっと時間が掛かったんじゃ」
「ああ、そういうことだったのか。じゃあディアナの持ってるその棒みたいなやつがキニングの武器ってことか?」
「いや、それは重いから別の武器を使うつもりじゃよ。その武器は万が一に備えて持ってきただけじゃ」
「これからが本番だし、使う機会があるかもしれないな」
「なんじゃ、これから始まるのか。ワシも年じゃからそう長くは戦えんぞ?」
「その武器と同じで万が一に備えていてくれればそれで十分だよ。でも年は取ってるとはいえ、体は鍛えてあるから全然戦えそうだけどな」
「まあ早いとこ戦争も終わらせたいし、ワシも頑張るつもりではおるぞ。ところでお主ウィルの力を貰って何か変化はあったのか?」
「うーん……少し魔力が上がった感じがするのと、光の精霊の力が少しだけ使えるようになったくらいかな」
「少ししか変わらんのか……。それじゃったらそんなに期待出来んのう」
「適正はあったかもしれないけど選ばれたわけじゃないからな」
「能力が飛躍的に上がるんじゃったらワシの力もやって良かったんじゃがなあ」
「いやいや! 畑で採れた大根じゃないんだから、そんな簡単に譲渡出来るものじゃないだろう! それに、もしそれでキニングが死んじゃったら夢見が悪くなるよ」
「はっはっはっ! それもそうか! そうした方が今回の戦いにしても、オルビルトにしても早く倒せるんじゃないかと思ったんだがのう」
「まったく精霊の力をなんだと思ってたんだよ。でもまあ俺達以外にも戦ってくれる人達がいるんだし、次の戦いもすぐに終わるさ」
キニングの武器をテントの中に置いた後、俺達は城内の会議室に向かう。
予定の時間には少し早かったが、会議室にはすでに多くの人達が座って待っていた。
ロムル王やフレールさんはいないが、代わりにウラガン団長やランバートさんが国の代表として出席している。
俺達よりも少し遅れてエクシエルさんとアグローさん達が入ってくる。
「こんにちはエクシエルさん、アグローさん。リネット達との話はもう終わったんですか?」
「あら、ソウタ君達も早いわね。まだ終わってないんだけど大体の話は聞いたわ。さっきイネス先生とフィオも来て、今みんなで盛り上がってるところよ」
「一気に賑やかになりましたね。マグナ達はどうなりそうですか?」
「彼等の処遇については向こうへ帰ってからになるわね。しばらくはうちの観察下に置かれるとは思うけど、重たい罪にはならないと思うわ」
「それと、俺に会いに来たヤツがいたらしいんですけど、多分そいつもマグナ達の仲間なんですよ。良ければそいつも連れて帰ってやって下さい」
「ああ、情報の提供をしてくれた人ね。情報が嘘じゃなければ、協力してくれたってことで、話を良い方向に持っていくことも出来るわ」
「俺だけ何度殺されかけましたが、極悪人ではないようです。……俺だけ何度も殺されかけましたけどね……」
俺達が話をしてる間に時間がやってきたみたいで、ウラガン団長が俺達の正面に立って口を開く。
「えー、僭越ながら私が今日も進行を務めさせて頂きます。それでは皆様よろしくお願いします」
ウラガン団長は一礼して、まずそれぞれの陣営から貰った報告書をまとめた結果から伝える。
それによると十二万の兵のうち、四万の兵が負傷及び戦闘には参加出来ないらしく、およそ八万の兵で戦うことになるとのこと。
あの戦いでそんなに戦力を失ったのか……。グラヴェールも同じように魔獣を用意していたら結構な被害が出るかもしれないぞ。
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