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第163話 酒は飲めるかと聞いている
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黒い塊は渦を雷光を発して辺りのにある全てのものを吸い込んでいく。
俺は近くにいる兵士達に離れるように注意を促して、マスロンにも呼び掛ける
「今更こんなことをして何になるマスロン?! 最後に俺達を道連れにするくらいなら、ここにいる人達に謝罪の一つでもしたらどうだ!」
「そうだ我が息子よ! お前は許されるべき人間ではないが、せめて自分の犯した罪を認めて謝罪の言葉を残せ!」
いつの間にかルザックさん達を従えたネルデルさんが俺の横に立っていて、マスロンに告げる。
「父親面をするなネルデルよ! 丁度いい、お前達も俺の力で消し去ってやる!」
「ワシの息子であるという重圧に耐え切れなかったのなら、言ってくれれば良かったものを……」
「外面だけは立派なお前のせいで、周囲からバカ息子と罵られ続けた俺の気持ちは分かるまい。母もお前の分不相応な玉座を守るための犠牲となり、城から出ていった!」
「すまなかったマスロン……。お前の言う通りワシは家族すら守れなかった情けない父親だ。ワシがお前達にちゃんと目を向けていればこんなことにはならずにすんだのにな……」
「謝っても手遅れだ。それに俺はお前達など関係無く自分のやりたいことをやったまで! さあ、別れのときだ! 全員死ぬがいい!」
マスロンの頭上にある巨大な黒い塊がゆっくりと地面に落ちてくる。
「あれを打ち消すぞディアナ!」
「ああ! あんなものが落ちたらこの辺一帯が消滅する」
「それには及ばないわ二人とも! 【花紅柳緑】!」
俺達の後ろからプリムの声が聞こえてきて、周囲に赤と緑の二重障壁が張られる。
内側の赤い障壁は前方と後方の味方を覆い尽くし、外側の緑の障壁は更に遠方まで伸びていく。
この世の全て飲み込みそうな黒い塊が外側の障壁にぶつかり、地面が大きく揺れ出す。
周り兵士達があわてふためく中、俺とディアナも万が一に備えて武器を構える。
しばらくの間、黒い塊が緑の障壁を破壊しようと押し込んでいくが、やがていきおいが無くなり音を立てて爆散する。
その衝撃で障壁に覆われてなかった一部の地帯は、岩壁や木などは全て吹き飛ばされて更地となる。
マスロンの放った魔法は消えたものの、プリムは障壁を解除せず完全に落ち着くのを見守っている。
俺達と同じように障壁の中にいたマスロンは、老人のようにシワが浮き出た顔でプリムを睨み付ける。
「お、おのれぇ! あと一歩でこいつ等を消滅させられたものを!」
「……まだ生きてるとはスゴい生命力だな。放って置いても死ぬだろうが今楽にしてやるぞマスロン」
剣を握りしめてマスロンの首を取りに行こうとする俺をルザックさんが止める。
「私にやらせてくれソウタ殿。これは私ががしなければならないことだ」
「ルザックさん……」
俺は黙って剣を鞘に納め、ルザックさんに任せることにする。
「マスロン王子……あなたを反逆者として処刑します」
「ルザック! 反逆者は貴様達の方だろ!? 国の主である俺を殺すというのか!?」
「あなたを正しく導けなかった私にも責任はある。そして、その責任を果たすときが来たのです……覚悟!」
「ルザックゥ!!」
ルザックさんは迷うことなくマスロンの首目掛けて剣を振る。
一瞬の出来事に辺りは静まり返る。
そんな中ネルデルさんが羽織っていたマントをマスロンにかけて、ルザックさんの肩に手を置く。
「大義であったルザック。人々もこれで安心して眠れるじゃろう」
「……終わりましたなネルデル王よ」
「うむ、しかしまだグラヴェール残っておるから引き続き頼むぞ」
ルザックさんはそれに強く頷き、自軍の兵士達に豚の絵が描かれた旗を掲げるよう命令する。
「よーし! 帰るぞお前達! 帰って、共に戦ってくれた皆さんに勝利の酒を振る舞え!」
ルザックさん率いるムングスルドの軍勢は「ウオオォー!」と声を荒げて撤退していく。
ネルデルさんは俺達やガレインさん達に感謝の言葉を述べる。
「皆さんには何とお礼を申し上げてよいやら感謝の言葉もございません!」
「無事に国を取り戻せて良かったですねネルデルさん!」
「とはいえ民を置いて逃げ出した私の犯した罪も大きい……。全てが終わった後は色々と考えなければなりませんな」
「まあまあ、一応戦闘も終わったことだし、とにかく帰って酒でも飲みましょうや! なあ!? ファグルド王!」
ガレインさんがそう声を掛けるも、ファグルドさんはやや不満そうな顔をして返事をする。
「そうだな……」
「どうしたんですかファグルドさん? 何か納得出来ないことでもありました?」
「いやなに、せっかく面白そうな戦いが出来ると期待したんだが、奴等全然歯ごたえが無かったから少々物足りんくてな」
「ははっ……あいつ等結構強そうでしたけどね……」
「……ガレイン殿は俺と戦う気はないか? 見たところかなりの腕前のようだ」
「いやいや! どうして味方同士で戦わなくちゃいけないんです!? まだまだ敵はいますので焦らず待ちましょう。ほら、早く帰りますよ」
「それもそうか……。よし! なら帰って酒を頂くとするか!」
ファグルドさんはガレインさんと戦うのを諦めて、二人で城の方に戻っていく。
そんなこんなで周囲も落ち着いてきたらしく、張っていた魔法障壁が解除される。
「ありがとうプリム! おかげでこれ以上被害が出なくてすんだよ」
「ネルデル王と一緒に来て良かったわ。それにしても、どうしてあの人があんな魔法を使えたの?」
「俺も詳しくは分からないけど、どうにもオルビルトの仕業らしい。飴玉みたいな石を食べたらああなったんだ」
「どんなに良いギフトや魔法石を持っていたとしても、個人であれだけの魔法を使えるはずはないわ。異世界の技術かしら……」
「あいつのすることだから、多分イストウィアの人達に聞いても分からないだろうけどな。それはそうと他の方は片付いたのか?」
「ええ! ウラガン団長やエクシエルさん達がやってくれたみたいよ。今頃マスロン王子と共謀して、ネルデル王を裏切った政務官の人達も捕まってると思うわ」
「そっか……これからこの国も大変だな。でもこれで間接的ではあるけどラティエの敵は取れたなディアナ」
ディアナは運びこまれるマスロンの遺体を見送りながら返事をする。
「ああ……ありがとうロイ、プリム。私の中で一つ決着が着いたよ」
「こうしてディアナと一緒に敵を取れて良かったわ。さて、それじゃあアリエルも待ってるだろうし、早く私達も帰りましょ!」
まだ残る戦場の爪痕を背にして俺達はムングスルド城に向かう。
俺は近くにいる兵士達に離れるように注意を促して、マスロンにも呼び掛ける
「今更こんなことをして何になるマスロン?! 最後に俺達を道連れにするくらいなら、ここにいる人達に謝罪の一つでもしたらどうだ!」
「そうだ我が息子よ! お前は許されるべき人間ではないが、せめて自分の犯した罪を認めて謝罪の言葉を残せ!」
いつの間にかルザックさん達を従えたネルデルさんが俺の横に立っていて、マスロンに告げる。
「父親面をするなネルデルよ! 丁度いい、お前達も俺の力で消し去ってやる!」
「ワシの息子であるという重圧に耐え切れなかったのなら、言ってくれれば良かったものを……」
「外面だけは立派なお前のせいで、周囲からバカ息子と罵られ続けた俺の気持ちは分かるまい。母もお前の分不相応な玉座を守るための犠牲となり、城から出ていった!」
「すまなかったマスロン……。お前の言う通りワシは家族すら守れなかった情けない父親だ。ワシがお前達にちゃんと目を向けていればこんなことにはならずにすんだのにな……」
「謝っても手遅れだ。それに俺はお前達など関係無く自分のやりたいことをやったまで! さあ、別れのときだ! 全員死ぬがいい!」
マスロンの頭上にある巨大な黒い塊がゆっくりと地面に落ちてくる。
「あれを打ち消すぞディアナ!」
「ああ! あんなものが落ちたらこの辺一帯が消滅する」
「それには及ばないわ二人とも! 【花紅柳緑】!」
俺達の後ろからプリムの声が聞こえてきて、周囲に赤と緑の二重障壁が張られる。
内側の赤い障壁は前方と後方の味方を覆い尽くし、外側の緑の障壁は更に遠方まで伸びていく。
この世の全て飲み込みそうな黒い塊が外側の障壁にぶつかり、地面が大きく揺れ出す。
周り兵士達があわてふためく中、俺とディアナも万が一に備えて武器を構える。
しばらくの間、黒い塊が緑の障壁を破壊しようと押し込んでいくが、やがていきおいが無くなり音を立てて爆散する。
その衝撃で障壁に覆われてなかった一部の地帯は、岩壁や木などは全て吹き飛ばされて更地となる。
マスロンの放った魔法は消えたものの、プリムは障壁を解除せず完全に落ち着くのを見守っている。
俺達と同じように障壁の中にいたマスロンは、老人のようにシワが浮き出た顔でプリムを睨み付ける。
「お、おのれぇ! あと一歩でこいつ等を消滅させられたものを!」
「……まだ生きてるとはスゴい生命力だな。放って置いても死ぬだろうが今楽にしてやるぞマスロン」
剣を握りしめてマスロンの首を取りに行こうとする俺をルザックさんが止める。
「私にやらせてくれソウタ殿。これは私ががしなければならないことだ」
「ルザックさん……」
俺は黙って剣を鞘に納め、ルザックさんに任せることにする。
「マスロン王子……あなたを反逆者として処刑します」
「ルザック! 反逆者は貴様達の方だろ!? 国の主である俺を殺すというのか!?」
「あなたを正しく導けなかった私にも責任はある。そして、その責任を果たすときが来たのです……覚悟!」
「ルザックゥ!!」
ルザックさんは迷うことなくマスロンの首目掛けて剣を振る。
一瞬の出来事に辺りは静まり返る。
そんな中ネルデルさんが羽織っていたマントをマスロンにかけて、ルザックさんの肩に手を置く。
「大義であったルザック。人々もこれで安心して眠れるじゃろう」
「……終わりましたなネルデル王よ」
「うむ、しかしまだグラヴェール残っておるから引き続き頼むぞ」
ルザックさんはそれに強く頷き、自軍の兵士達に豚の絵が描かれた旗を掲げるよう命令する。
「よーし! 帰るぞお前達! 帰って、共に戦ってくれた皆さんに勝利の酒を振る舞え!」
ルザックさん率いるムングスルドの軍勢は「ウオオォー!」と声を荒げて撤退していく。
ネルデルさんは俺達やガレインさん達に感謝の言葉を述べる。
「皆さんには何とお礼を申し上げてよいやら感謝の言葉もございません!」
「無事に国を取り戻せて良かったですねネルデルさん!」
「とはいえ民を置いて逃げ出した私の犯した罪も大きい……。全てが終わった後は色々と考えなければなりませんな」
「まあまあ、一応戦闘も終わったことだし、とにかく帰って酒でも飲みましょうや! なあ!? ファグルド王!」
ガレインさんがそう声を掛けるも、ファグルドさんはやや不満そうな顔をして返事をする。
「そうだな……」
「どうしたんですかファグルドさん? 何か納得出来ないことでもありました?」
「いやなに、せっかく面白そうな戦いが出来ると期待したんだが、奴等全然歯ごたえが無かったから少々物足りんくてな」
「ははっ……あいつ等結構強そうでしたけどね……」
「……ガレイン殿は俺と戦う気はないか? 見たところかなりの腕前のようだ」
「いやいや! どうして味方同士で戦わなくちゃいけないんです!? まだまだ敵はいますので焦らず待ちましょう。ほら、早く帰りますよ」
「それもそうか……。よし! なら帰って酒を頂くとするか!」
ファグルドさんはガレインさんと戦うのを諦めて、二人で城の方に戻っていく。
そんなこんなで周囲も落ち着いてきたらしく、張っていた魔法障壁が解除される。
「ありがとうプリム! おかげでこれ以上被害が出なくてすんだよ」
「ネルデル王と一緒に来て良かったわ。それにしても、どうしてあの人があんな魔法を使えたの?」
「俺も詳しくは分からないけど、どうにもオルビルトの仕業らしい。飴玉みたいな石を食べたらああなったんだ」
「どんなに良いギフトや魔法石を持っていたとしても、個人であれだけの魔法を使えるはずはないわ。異世界の技術かしら……」
「あいつのすることだから、多分イストウィアの人達に聞いても分からないだろうけどな。それはそうと他の方は片付いたのか?」
「ええ! ウラガン団長やエクシエルさん達がやってくれたみたいよ。今頃マスロン王子と共謀して、ネルデル王を裏切った政務官の人達も捕まってると思うわ」
「そっか……これからこの国も大変だな。でもこれで間接的ではあるけどラティエの敵は取れたなディアナ」
ディアナは運びこまれるマスロンの遺体を見送りながら返事をする。
「ああ……ありがとうロイ、プリム。私の中で一つ決着が着いたよ」
「こうしてディアナと一緒に敵を取れて良かったわ。さて、それじゃあアリエルも待ってるだろうし、早く私達も帰りましょ!」
まだ残る戦場の爪痕を背にして俺達はムングスルド城に向かう。
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