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第104話 整いました
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ラスネルさんは店に着くなり、慣れた足取りで店内にズカズカと入っていき、俺達を仕切りのある部屋に案内する。
そして、カウンターまでジョッキに注がれたジュースを取りに行って戻ってくる。
「さあ、飲んでちょうだい! 硬っ苦しいのはどうにも苦手でね。こうしてジョッキ片手に話してる方が性に合うの」
「私もこういう感じで話をした方が楽なんでその気持ち解ります。ところで、ここってラスネルさんがよく来るお店なんですか?」
「そう、ここはギルドの人間が集まる酒場なの。この時間だから客少ないけど、もうじき混んでくるわ」
「仕事を終えた後の一杯ってやつですか。どこの世界でもそれは一緒のなんですね」
「それにしてもみんなが異世界から来た人間なんて驚いたよ。あのときは大した話をせずに別れたけど、みんなのことは気になっていたんだよ」
「実はグラヴェールに潜入してギフトを奪われないようにしようとしてたんですよ」
「そこのフィオがシブサワを一撃で気絶させたのもこれで合点がいったわ。こんな小さいのに強いんだね」
ラスネルさんに褒められたフィオが、照れくさそうにジュースを口にする。
「でも、私達のせいでラスネルさん達がグラヴェールに追われることになってしまったって、本当に申し訳ないかったです」
「別に構わないよ。私はどうせ辞めるつもりだったし、ストレイングも前からあそこを辞める決心はしてたみたいだしね」
「ストレイングさん達は今どこにいるんですか? ラスネルさんと一緒にこの町に帰って来てないんですか?」
「いや、あいつ等はアークの仲間になるって言ってどこか行ってしまったよ」
「ストレイングさん達がですか?! どうしてまたアークなんかに……」
「私達は元々グラヴェールの裏を探るためにあの国の傭兵になったんだよ。というのも、私達はグラヴェールに故郷を焼かれた恨みがあったからね」
「それって……」
言葉を失うリネットにラスネルが話を続ける。
「ストレイング達とは同郷でね。一緒に行こうと誘われたんだけど、私は行かなかったんだ。復讐は何も生まないからね……」
「そうですよ! そんなのずっと続けてたって幸せにはなれませんって。そりゃあ……気持ちは痛いほど解りますけど」
リネットの主張にラスネルは静かに頷く。
「リネットの言う通りだとは思うけど、世の中キレイごとだけじゃすませられない人間もいるんだよ。まあ、私はリネットの言うことに賛成だからこそ止めたんだけどね」
「復讐するにしても他に方法があるはずです。でも、グラヴェールがそんなことをやってるっていうのは本当だったんですね」
「結局証拠を押さえることは出来なかったけどね」
残念そうに首を横に振るラスネルを見て、リネットは何かを思い付く。
「ねえ……みんな。今回の失踪者の事件ってグラヴェールとかが一枚噛んでるってことありそうじゃない?」
「異世界の人間が絡んでるんだとしたら可能性はあるだろうな。実は俺もそれはあるんじゃないかと睨んでる」
「ラスネルさんの話を聞いてて思ったんだけど、あいつ等って平気で人を殺したりもするじゃない? だから誘拐とかもしてもおかしくないかなって」
「確かにグラヴェールならやりかねないよな。もしそうだとしたら絶対許せないし、これ以上被害が増える前に早く真相を確かめて止めないと」
失踪した人達が見つかってないことを考えると拉致された可能性は十分ありそうだな。
俺達が思案していたら、ラスネルさんがテーブルの上にジョッキをドンッ! と置いて仕切り直す。
「さあ! 暗い話はここまでにして飲もうよ! せっかく場所移したのに真面目な話ばかりしてたらジュースが不味くなるよ」
少し重たくなった場の空気を変えて、酒のつまみ等を持ってくる。
その後他愛もない話をしばらくしてお店から出る。
「いやぁ、最近は湿っぽい話ばかりだったから、久しぶりにみんなと話せて楽しかったよ」
「俺達も酒場でジュースとか飲んだことなかったから、新鮮で楽しかったですよ」
「結局どうでもいい話ばっかりしてしまったけど、明日からどうするんだい? 私に出来ることがあれば何でも言ってくれていいよ」
「そのことでラスネルさんに一つお願いがあるんですけど、聞いてもらってもいいですか?」
「ああ、もちろん構わないさ。いい作戦でもあるのかい?」
「ラスネルさん達に偽の依頼を受けて欲しいんです。そして、その情報をデンバーに流して誘ってみようと思いんですけど、どうですかね?」
「テヘルさんに情報を流してもらうやるわけだ……。それでデンバーがどう動くかやってみる価値はあるね。いいよ、やってみようか」
「そのためにはデンバーに偽の依頼を知ってもらう必要があるし、そこからとなると……。三日後とかにしませんか?」
「解った。どっちにしろベドルフから連絡が入るだろうから、明日にでもそっちの宿を訪ねるよ」
「変なことを頼んでしまってすみません」
ラスネルさんと酒場の前で別れ、今日のところは宿屋に戻ることにする。
「ソウタさん、あんな作戦を考えていたんですね。私もどうしたらいいか色々考えましたけど結局答えは出ませんでした」
「本当は俺が囮になりたかったんだけど、俺だと誘いに乗ってこないだろうからな」
「みんな本当にスゴいです……」
サーシャはそう言うと沈んだ顔をして元気無さげに歩き出す。
「どうたんだサーシャ? 何かあったのか?」
「いえ……みんな頑張ってるのに私だけ役に立ててないと思いまして……」
「何言ってんだよ! サーシャが居るからこそ俺達は安心して戦えるんだぞ」
「そうよ姉さん。姉さんがいての私達なんだし、役に立つとかそんなの気にする必要はないわよ」
「そんなこと言っちゃダメだよ。サーシャお姉ちゃんが身の回りのお世話してくてるの、とても助かってるんだからね」
「人にはそれぞれの役割というものがある。サーシャが我々をまとめてくれるからこそ、各々の個性を生かすことが出来るんだ」
「みんな私よりも年下なのに、しっかりしてるから自分が情けなく思えてきちゃって……。でも、みんながそう言ってくれて嬉しいわ」
さっきまで泣きそうだったサーシャの顔が晴れやかになり言葉を続ける。
「よし! いつまでもウジウジしてたらダメよね。こんなときに心配かけてごめんなさい。明日から私も頑張るわ」
サーシャがそんなことで悩んでたなんて気付かなかったな……。
いつも自分のことは二の次で周りを気遣ってくれる女性だから、ずっと溜め込んでたのかもしれない。
目の前にことに集中し過ぎて周りが見えてないなんて俺もまだまだだな……。
もろもろ片付いたらゆっくりお土産でも買いに行くか!
そして、カウンターまでジョッキに注がれたジュースを取りに行って戻ってくる。
「さあ、飲んでちょうだい! 硬っ苦しいのはどうにも苦手でね。こうしてジョッキ片手に話してる方が性に合うの」
「私もこういう感じで話をした方が楽なんでその気持ち解ります。ところで、ここってラスネルさんがよく来るお店なんですか?」
「そう、ここはギルドの人間が集まる酒場なの。この時間だから客少ないけど、もうじき混んでくるわ」
「仕事を終えた後の一杯ってやつですか。どこの世界でもそれは一緒のなんですね」
「それにしてもみんなが異世界から来た人間なんて驚いたよ。あのときは大した話をせずに別れたけど、みんなのことは気になっていたんだよ」
「実はグラヴェールに潜入してギフトを奪われないようにしようとしてたんですよ」
「そこのフィオがシブサワを一撃で気絶させたのもこれで合点がいったわ。こんな小さいのに強いんだね」
ラスネルさんに褒められたフィオが、照れくさそうにジュースを口にする。
「でも、私達のせいでラスネルさん達がグラヴェールに追われることになってしまったって、本当に申し訳ないかったです」
「別に構わないよ。私はどうせ辞めるつもりだったし、ストレイングも前からあそこを辞める決心はしてたみたいだしね」
「ストレイングさん達は今どこにいるんですか? ラスネルさんと一緒にこの町に帰って来てないんですか?」
「いや、あいつ等はアークの仲間になるって言ってどこか行ってしまったよ」
「ストレイングさん達がですか?! どうしてまたアークなんかに……」
「私達は元々グラヴェールの裏を探るためにあの国の傭兵になったんだよ。というのも、私達はグラヴェールに故郷を焼かれた恨みがあったからね」
「それって……」
言葉を失うリネットにラスネルが話を続ける。
「ストレイング達とは同郷でね。一緒に行こうと誘われたんだけど、私は行かなかったんだ。復讐は何も生まないからね……」
「そうですよ! そんなのずっと続けてたって幸せにはなれませんって。そりゃあ……気持ちは痛いほど解りますけど」
リネットの主張にラスネルは静かに頷く。
「リネットの言う通りだとは思うけど、世の中キレイごとだけじゃすませられない人間もいるんだよ。まあ、私はリネットの言うことに賛成だからこそ止めたんだけどね」
「復讐するにしても他に方法があるはずです。でも、グラヴェールがそんなことをやってるっていうのは本当だったんですね」
「結局証拠を押さえることは出来なかったけどね」
残念そうに首を横に振るラスネルを見て、リネットは何かを思い付く。
「ねえ……みんな。今回の失踪者の事件ってグラヴェールとかが一枚噛んでるってことありそうじゃない?」
「異世界の人間が絡んでるんだとしたら可能性はあるだろうな。実は俺もそれはあるんじゃないかと睨んでる」
「ラスネルさんの話を聞いてて思ったんだけど、あいつ等って平気で人を殺したりもするじゃない? だから誘拐とかもしてもおかしくないかなって」
「確かにグラヴェールならやりかねないよな。もしそうだとしたら絶対許せないし、これ以上被害が増える前に早く真相を確かめて止めないと」
失踪した人達が見つかってないことを考えると拉致された可能性は十分ありそうだな。
俺達が思案していたら、ラスネルさんがテーブルの上にジョッキをドンッ! と置いて仕切り直す。
「さあ! 暗い話はここまでにして飲もうよ! せっかく場所移したのに真面目な話ばかりしてたらジュースが不味くなるよ」
少し重たくなった場の空気を変えて、酒のつまみ等を持ってくる。
その後他愛もない話をしばらくしてお店から出る。
「いやぁ、最近は湿っぽい話ばかりだったから、久しぶりにみんなと話せて楽しかったよ」
「俺達も酒場でジュースとか飲んだことなかったから、新鮮で楽しかったですよ」
「結局どうでもいい話ばっかりしてしまったけど、明日からどうするんだい? 私に出来ることがあれば何でも言ってくれていいよ」
「そのことでラスネルさんに一つお願いがあるんですけど、聞いてもらってもいいですか?」
「ああ、もちろん構わないさ。いい作戦でもあるのかい?」
「ラスネルさん達に偽の依頼を受けて欲しいんです。そして、その情報をデンバーに流して誘ってみようと思いんですけど、どうですかね?」
「テヘルさんに情報を流してもらうやるわけだ……。それでデンバーがどう動くかやってみる価値はあるね。いいよ、やってみようか」
「そのためにはデンバーに偽の依頼を知ってもらう必要があるし、そこからとなると……。三日後とかにしませんか?」
「解った。どっちにしろベドルフから連絡が入るだろうから、明日にでもそっちの宿を訪ねるよ」
「変なことを頼んでしまってすみません」
ラスネルさんと酒場の前で別れ、今日のところは宿屋に戻ることにする。
「ソウタさん、あんな作戦を考えていたんですね。私もどうしたらいいか色々考えましたけど結局答えは出ませんでした」
「本当は俺が囮になりたかったんだけど、俺だと誘いに乗ってこないだろうからな」
「みんな本当にスゴいです……」
サーシャはそう言うと沈んだ顔をして元気無さげに歩き出す。
「どうたんだサーシャ? 何かあったのか?」
「いえ……みんな頑張ってるのに私だけ役に立ててないと思いまして……」
「何言ってんだよ! サーシャが居るからこそ俺達は安心して戦えるんだぞ」
「そうよ姉さん。姉さんがいての私達なんだし、役に立つとかそんなの気にする必要はないわよ」
「そんなこと言っちゃダメだよ。サーシャお姉ちゃんが身の回りのお世話してくてるの、とても助かってるんだからね」
「人にはそれぞれの役割というものがある。サーシャが我々をまとめてくれるからこそ、各々の個性を生かすことが出来るんだ」
「みんな私よりも年下なのに、しっかりしてるから自分が情けなく思えてきちゃって……。でも、みんながそう言ってくれて嬉しいわ」
さっきまで泣きそうだったサーシャの顔が晴れやかになり言葉を続ける。
「よし! いつまでもウジウジしてたらダメよね。こんなときに心配かけてごめんなさい。明日から私も頑張るわ」
サーシャがそんなことで悩んでたなんて気付かなかったな……。
いつも自分のことは二の次で周りを気遣ってくれる女性だから、ずっと溜め込んでたのかもしれない。
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