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第101話 アポなしで行ってみる

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 ガルムと距離が縮まった次の日、紹介状を受け取りにミェスターに行く。
 
 受付の人にテヘルさんを呼んでもらうと紹介状を片手に奥の部屋から出てくる。

 「おお、君達か。今日は紹介状を取りに来たんだろ? 何も協力出来ない分、少しいいように書いてやったぞ!」

 「書いててくれたんですね。ありがとうございます!」

 「もうオルディに行くのか?」

 「時間もあまりありませんし、他に気になることもありますからね」
 
 「隣町だから馬車なら一日もあれば着くだろう。あまり期待は出来ないと思うが検討を祈るよ」   

 「この国に行方不明になってる人がいる以上断られても仕方ないです。帰ってきたらそっちも調べてみようと思ってます」

 「近々この町にも調査団が派遣されるらしくてな、それで何か判明すれば状況も変わるん。君達も失踪しないように気を付けてな」
 
 テヘルさんは俺の肩を叩いて紹介状を渡してくれる。

 俺達はその足で馬車に乗り込み、ダルカデル国王の居る首都オルディへと向かう。

 「また馬車だけど今日中には着くだろう。多分ダメかもしれないけど紹介状もあるからそこに賭けたいな」

 「期待は出来ないって再三に渡って言われたからね。ただでさえ難しいって話なのに、変な事件まで起こってるんだから厳しそうよねえ」
 
 「いずれにせよ紐と布が異世界の物なら事件も解決しておきたいし。そっちをどうにかすればチャンスはあるかもしれない」   

 「そうね。もし協力してもらえたとしてもその件は片付けて帰りたいわね」

 その日のうちにオルディに到着し、翌日みんなでダルカデル城に向かう。

 城の門番に紹介状を渡して国王に会えるか聞いてみると、門番は確認をするため城内に入っていく。

 しばらく待っていたら兵士を連れて戻ってくる。

 どうやら許可が出たらしく、俺達は城内に通してもらい国王が居る部屋に案内してもらう。

 兵士が重厚な扉の前で数回ノックして「失礼します!」と言いながら扉を開け、俺達に中に入るよう促す。

 中に入ると数人の男達が居て、その中央にには五十才くらいの髪を長く伸ばし男が椅子に座っている。

 俺達が頭を下げると、中央にいた男が俺達声を掛けてくる。

 「おお、若いな! 紹介状は軽く読ませてもらったが、お前達が海賊を捕まえたのか? 」

 「サルブレムから来たソウタと申します。今日は突然の訪問にも関わらずお会いしていただき、ありがとうございます。海賊は俺達の力だけではなく、船員の方々と一緒に協力して捕まえました」

 「そうか、それはご苦労だったな。して、紹介状には懸賞金の変わりに援軍を寄越せみたいなことが書いてあるが、サルブレムはお前達のような若い人間を使いに出すほど困ってるのか?」

 「いえ、サルブレムはダルカデルに頼むつもりはないんです。俺が個人的にお願いあってここに来たんです」

 「ふむ……。それだけだとよく分からんが、どちらにしろサルブレムに立てる義理もなければ協力するつもりもない。それに今はこの国も大変だから無理だな」

 「この国の現状も聞いてたんでそう言われると思ってました。けど、そこをどうにかならないですか?」

 「くどい! いかに海賊を捕まえ手柄があるとはいえ無理なものは無理だ! 他国の話は色々と耳に入ってきてはいるが、勝手にやらせておけ」

 大きな声でキッパリと断れてしまい心が折れそうになるが、それでも諦めずに続ける。

 「お言葉ですが、このままだといずれダルカデル国にも被害が及びます。ですからこの国にとっても無関係では話ではないんです」

 「もしそうなったらそうなったときに考えるだけよ。お前はサルブレムの使いではなく、個人的な頼みでここに来たと言っていたがどういうことだ?」
 
 「我々はサルブレムに召喚されて異世界から来たんです。ですがサルブレムのためだけに動いてるんじゃなくて、訳あって自分達の意志でこの世界の混乱を納めようと動いてるんです」

 そのことを伝えると長髪の男が目を見開いて、物珍しそうに俺達を見てくる。

 「ほお? それは本当か? 話には聞いていたが異世界の人間に会えるとはな! 信じてないわけじゃないが、異世界の人間だということを証明出来るものとかないのか?」 

 そんなこと言われても目からビームが出るわけでもないし……何かあるかな?

 どうしようかと考えていたらマリィが俺の横に立ち、ボソッと「手間が省けた」と言ってガルムを呼び出す。

 ブレスレットが光を放ち、黒い犬のガルムが出現する。

 その様子にそこにいた者達全員が「おお……」声を洩らす。

 「ほお! なんとも面妖な術だな! なるほど。それだけでは異世界から来た人間かどうかの判断出来ないが、面白いものを見せてもらった」

 男は興味深そうにガルムを見て、話を続ける。
 
 「いいだろう。個人的な頼みということであれば、今度話を聞いてやってもいい。この国が落ち着いたらまた来い」

 「本当ですか!? 実は協力してもらわなくても失踪者については調べるつもりだったんです。もし俺達が事件を解決したらもう一度ここに来てもいいですか?」 

 「それは大きく出たな。よし、ならばお前達が解決したら真剣に考えてやろう。ただし! 面白そうだから話を聞いてやるだけで、協力するとはまだ言っていないぞ」

 長髪の男が楽しそうに言うと、その場にいた一人の男が声を荒げる。

 「なっ! ちょっと待って下さい! こんな子供達の言うことを信じるんですか?! 嘘を付いてるかもしれないし、サルブレムの罠かもしれないんですよ?」

 「なんだ? 俺の言うことに不満があるのかラルフォード? もしこいつ等が嘘を言っているなら斬ればいいだけだ」

 「そ、それはそうですが……」
 
 ラルフォードと呼ばれた男は気迫に押されてしまい何も言い返せなくなる。
 
 「この国は年齢や性別や生まれは関係ない。それはたとえ異世界人だろうと同じことよ。求められるのは欲しいものを手にする力だけ……。そうだろう?」

 長髪の男の言葉にみんなが黙っていたら、マリィがガルムを連れてラルフォードの前に立つ。

 「あまり私達がこの事件に関わらない方がよろしいのかな?」

 「それはそうだ。お前達が余計なことをして事件がややこしくなるかもしれないからな」
 
 「と言っていますが、どうなんですか?」

 マリィが長髪の男に問う。

 「構うな。お前達がサルブレムの使いじゃないんだったら、ダルカデル国の国王であるこのファグルド=ダインが許可しよう」

 やっぱりこの人が国王だったんだ。

 最初は気難しい人かと思ったけど、話してみると竹を割ったような性格の人だな。
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