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第67話 神殿から現れたのは

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 「なにが起きたのよ……。ほとんど戦った痕跡がないじゃない。アークの連中こんなに強いギフトを所持してるっていうの?」
  
 「いや……これは多分ギフトじゃない。何故かは分からないけど、あの大きな力のやつの仕業だろう」

 「私はなにも感じないけど、前にもそんなの言ってたわね。だったらジューラールが近くにいるかもしれないってことよね」
 
 「そうだとしても、神殿には入れそうもないし確認のしようもないな」

 俺達は影に隠れ様子を窺ってると、サルブレムの騎士団長が自軍の士気を上げるため大声を上げて、残った兵士達に命令する

 「いいか! サルブレムの意地を見せろ!
一番厄介なあいつは死んでも俺が倒す! 他の連中は大したことはない! お前等ならこの人数でも十分勝てるぞ!」

 「ええか! 我等魔法兵団の力を見せつけるんじゃ! そのために過酷な訓練をしてきたのだろう! 命に代えてもテロリストに屈してはならんぞ!」

 魔法兵団の年老いた兵長も残った兵士に激を飛ばす。

 「あのじいさん、年なのによくやるねえ」

 イネス先生が魔法兵長を見て感心をしてるようだ。

 いや……あなたもなんですけどね。

 前にも見たことがあるクリケットが剣を持って、神殿の入り口を固めているアークの軍に突っ込んでいく。

 「私達が突っ込む! ロマリ、お前達は援護をしてくれ!」

 「.了解だ! お前等も後に続け! 《フレイムストーム》!」

 神殿を陣取っていたアーク軍の一部が迎撃しようとクリケット達の方に向かって来るが、激しく燃える巨大な炎に包まれてしまいどこかへ逃げていく。

 前方から向かってくる敵が居なくなり、クリケット達は神殿の入り口を固めていた敵に狙いを定める。

 「うおおお! 【双炎連覇斬】!」   

 剣を振ると二発の炎の斬撃が空を切り裂き飛んでいき、アーク軍と神殿の柱に爆音を立てて当たる。

 神殿の柱は剣で切られたような跡が残り、アークの軍勢数十人が吹き飛ぶ。

 おお! これはいけるんじゃないのか!?
数こそ少ないものの、サルブレム軍の方が圧倒してるじゃないか!

 「よし! 残り敵を今のうちに叩くんだ!」

 クリケットにそう命じられ数十人の兵士達は神殿の敵を掃討しにいくが、神殿の中から二人の人間が姿を現すと進むのを躊躇する。

 「きやがったか!」

 騎士団長は焦りの表情を浮かべ神殿から出てくる二人を見る。

 中からサルブレム城に来ていたゲイツと水色の髪をした女が出てくる。

 女の手には丸いオーブが持たれていて、キョロキョロと周囲の状況を確認している。

 「あの女……! あいつだ! 多分あいつがグラヴェールのギフトを奪って、この国の兵士達を氷漬けにしたやつだ!」

 「え!? そうなの? ソウタが言ってた大きな力の持ち主ってあの女の人なの?」

 「俺にも何故かは分からないけどそんな気がするんだ……」

 「でも、あのオーブがギフトっぽいし、そうかもしれないわね。ソウタ! あなたまたスゴイ汗かいてるわよ!」

 リネットが滝のように汗を吹き出してる俺を心配してくれるが、俺はそれとは違う別のことに頭を巡らせる。

 それにしてもあの女どこかで見たことあるような……誰だ? あの氷のように冷たい瞳は一度見たら忘れないはずだ。 
 
 どこで会ったんだ?!

 エルソールか? それとも地球か? 
ダメだ思い出せない……どうして会ったことがあると思うんだ?

 頭の中で自問自答をするが答えは出てこない。

 二人の姿を確認すると騎士団長は魔法兵長にお願いをする。

 「ウェアリ殿……あれを使ってもらっていいですか?」   

 「そうだな。よし! お前達! 魔力を集めるぞい!」

 ウェアリ魔法兵長は部下の兵を呼び、自分の体に魔力を集めさせる。魔法兵が体に手をかざすと、ウェアリの体から光が溢れてくる。

 「むう! この体……持ってくれるかの。《サンシャイン》!! 」

 ウェアリの全身から眩しいほどの巨大な光の塊が出現し、一直線に空へと舞い上がる。

 巨大な光の塊が空中で一瞬停滞した後、オーブを持った女に目掛けて目では追えない速さで飛んでいく。

 一瞬何が起きたのか分からなくなるが、神殿が激しい爆発とともに崩れ落ちていっている。

 ウェアリは身体中からプスプスと煙を上げ、その場に倒れる。

 「ありゃあ……あのじいさん即死だね」

 イネス先生が倒れたウェアリを見て冷静に判断する。

 やめてやれ! 一生懸命戦ってんだからそんな不吉なこと言うなよ。

 「やったか?!」

 騎士団長は光の塊が直撃したのを確認したはずだが、それでも半信半疑で二人の方を見ている。

 崩れ落ちた神殿から巻き上がる土埃が収まり、周囲が徐々にはっきりしてくる。
 
 だが、先程と同じ位置にオーブ持った女達が、バリアを張って何事も無かったかのように立っている。

 神殿を取り囲んでいたアークの軍勢も衝撃に巻き込まれていたが、軍勢の一部は傷を負いながらもオーブを持った女達にバリアを張っている。

 「お前達……こんなことをしなくても私は平気だぞ? どうして自分の身を守らなかった?」   

 オーブを持った女が仲間達にそう言うと、バリアを張った十数人の人間が笑いながら答える。

 「ベルナデッド様に万が一のことがあっては困りますからな。我々の悲願を必ず成し遂げなければなりません!」

 「そうですとも! たとえ我々が死んでもベルナデッド様とジューラール様が生きてこの世界を変えて下さるなら私は本望です!」
 
 「これ以上無法者達をのさばらせてはいけません! お二人は我々の希望なのです! それにその美しい顔に傷でも付いたら大変だ!」

 あいつ等本気かよ! 自分を犠牲にしてまで守るなんてよっぽどだぞ。

 ずっと気になってたけど、アークはどんな人間達が集まって出来た組織なんだ?

 ジューラールとあの女は宗教の教祖的な立ち位置で、盲信した信者が守ってるとかの可能性もあるが、そんな感じでもなさそうだな。

 騎士団長は悔しそうに拳を握りしめ、力を使い果たしたウェアリの体を起こす。

 「ウェアリ殿! 生きておりますか!」

 「その顔……ダメだったようだな。やはりSランクの魔法を使用するのに、この人数では魔力が足りなかったのかもしれん……。我々が築き上げたサルブレムを……頼む……」

 ウェアリは騎士団長の手の中でぐったりとしたまま動かなくなる。

 騎士団長は国章が入った自分のマントを剥ぎ取り、その上にそっとウェアリ体を置く。

 そして、大剣を抜きクリケット達に命令を下す。

 「クリケット! ロマリ! 残った兵士を連れて退却しろ! 後は俺がやる! 」

 「それは出来ませんウラガン団長! 私も最後の一人になるまで戦い抜きます!」

 「ええ! 僕等の兵長がやられたんですから、それの弔い合戦をやらせて下さい!」

 「ダメだ! これは命令だ! 生きてお前達が避難したサルブレムの町人を助けてやるんだ!」

 食い下がるクリケットとロマリに語気を強めて再度命令をする。

 その時、残ったサルブレム軍の兵士達の中から三人の人影が跳躍して、オーブを持った女の前に立つ。

 あれは!
 
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