念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第55話 脱出したけど町はどこ?

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 いきなり攻撃され、ストレイングは咄嗟に身をひるがえしハンマーの攻撃を受け止める。

 「お前はシブサワ! どういうことだ?! 」

 「うるせえ! 前からお前も気にくわなかったんだよ。ここでついでに殺してやる!」

 「正気か? 俺はお前の仲間だぞ! いくら勇者でもこんなことしてただで済むわけないだろ!」

 シブサワはニィっと笑い、パンチを浴びせる。

 「さっき城の中からお前が敵と仲良くしてるのを見たぞ。さてはお前スパイだな?」

 「バカなこと言うな! あれは市民がこの戦闘に巻き込まれてたから一時的に休戦しただけだ!」

 「どうだっていいんだよ、そんなことは! 俺が気に入らないやつをぶっ潰せればそれでな!」

 「なんてやつだ………。おい! 俺のことはいいから早く行け!」

 俺達の存在に気付いたシブサワは、獲物を見つけた獣のように目が光る。

 「お前達は確か前に酒場で会った糞ガキ共じゃねえか! また女連れて歩いてるなんて相変わらず生意気なガキだな! ちょうどいいや。女だけ残してあの世に逝け!」

 シブサワはターゲットを俺に変えてハンマーで攻撃してくる。

 それに対して身構えるが、端から観てたのよりも遅く感じる。

 あれ? こんなもんか?

 俺はその場から半歩下がり上体を軽く後ろに反らしてかわす。

 そうだ! 移動中覚えた魔法試してみるか。

 俺は手を前に突き出して何度もしてきたイメージをする。

 「《フレイムロープ》!」
 
 手から炎の縄が出てきてシブサワの体に巻き付いていく。

 「なんだこりぁ! またこんなもの使いやがって! あのヘビ野郎いいムカつくぜ! こんなもんすぐ引きちぎってやる!」

 一瞬驚いたものの、炎に怯むことなく力任せに縄を引っ張る。

 ええ! せっかく使えるようになった新魔法をそうやってほどくの!

 「みんな! このままだとすぐ解かれるだろうから今のうち逃げるぞ!」

 俺達はその場から逃げるため急いで走り出す。

 「やろう! 逃がすかよ!」

 それを見たシブサワは意地でも俺達を逃がすまいと激しくもがきだす。

 そんなシブサワにフィオが足を止めて近づいていき「とうっ!」とみぞおちに一発入れる。
 
 「ぐふっ……」という呻き声とともに動きが止まり膝をつく。

 更に追い討ちで頭に蹴りを入れると地面に倒れて沈黙する。

 フィオは気絶したシブサワの顔に何か描いて戻ってくる。

 「おじさん顔が怖いからそっちの方がいいよ!」

 流石だな……。あのバサラとかいうのが強かっただけで、あいつ等じゃなければこれだけ差があるのか。

 「お前達……何者なんだ? まあ、とりあえずさっさと行こう!」

 ストレイングさんは驚嘆しつつ俺達と一緒に城の外まで脱出する。

 この辺の地形を熟知しているストレイングさんはファクル達とは逆方向に逃げて、バニコス郊外へと抜け出る。

 「ふぅ、ここまで来れば一安心だろう」

 「ありがうございましたストレイングさん。おかげで誰にも見つからずここまで来れました」
 
 「いや、助かったのは俺の方だ。あのままシブサワに絡まれてたら逃げられなかったかもしれないからな。まさかお前が魔法を使えるとは思わなかったよ」

 「あまり魔法は得意ではないんですけど、咄嗟に思いついて使ってみたんです。黙っていてすみません」

 「いいさ。俺はもうグラヴェールの傭兵じゃないから報告する義務もない。それで、お前達はこれからどうするんだ?」

 「このまま国へ戻りろうと思います。ストレイングさん達は傭兵を止めるんですか?」

 「そうだな。グラヴェールに戻るつもりはないが、変に疑いをかけられて追われても困るから手続きだけはしとかないとな。その後はアークの連中にでも雇ってもらうかな」
 
 「ファクル達は別に悪い人間ではなさそうですしね。むしろグラヴェールの人間の方が……あっ! ごめんなさい!」

 「ははっ。本当のことだ。全然構わんさ。黒い鎧の男を見る限り、アークの連中が言うことはあながち嘘ではなさそうだしな」

 「あの男って何者なんでしょうか?」

 「俺にも分からん。だが、ろくな奴じゃないのは確かだろうな。多分あの光線はグラヴェールのSランクのギフトだと思うが、味方もろとも一掃しようとするのは参ったぜ。お前達も気を付けるんだぞ」

 「はい。ストレイングさん達もお元気で!」

 別れを告げて町を目指すも空はすっかり暗くなっている。

 「しかし、一日中走り回ってクタクタだ。早くどこかの町に着いてゆっくりしたいな」

 「私達も疲れてるんだから泣き言言わないの。シブサワが追ってきてるかもしれないんだから早く行きましょう」

 これ以上遅くならないようみんなは疲れた体に鞭を打って歩き出す。

 「ギフトは奪われちゃったけどジュラールの目的が知れたな。それにあの連中に恨まれてるところみるとやっぱり裏で色々やってるみたいだ」

 「どのみちグラヴェールが持っていてもあまり変わりなさそうな感じだったわ。あいつ等残りのギフトを全部強奪するって言ってたわよ」

 「それに新しい世界的を作るとかも言ってたな。報復だけが目的ってわけじゃなさそうし、話せば意外に分かってくれそうだよな」

 「ヘビ男はともかく、あのファクルって男なんかは私達を逃がそうとしてくてたしね。それに比べて黒い鎧を着た男なんて終始上から目線で人をバカにした感じでさ。ああいうタイプが一番キライなのよね」
 
 リネットは先程のことを思い出したのか、眉間にシワを寄せて話している。

 「あの赤い髪の男が言うことが確かならグラヴェール側にも問題があるわけだし、ジュラール側だけが一概に悪いって言えないよな


 俺の意見にマリィは賛同して頷く。

 「強引にギフトを奪うの良くないがな。ただグラヴェール側の話が本当だとしたら、報復されても仕方ないだろうな。ここまでくれば第三者が入って話し合いをした方が良いだろう」

 「そうだよな。このままだとどんどん争いが広がっていくもんな。グラヴェールとかと同じ力関係のサルブレムが間に入って納めるのが良さそうだな」
  
 「本来ならサルブレムやアルパルタが両者の言い分を聞いて判断するべきなんだろうが、どうなんだろうな」

 「サルブレムに帰って今日起きたことを国王に話してみるか。もしかしたらグラヴェールとムングスルドに問いただしてくれるかもしれない」

 「ジュラール側もそれに応じてくれれば一番良いだろうな。しかし事態は悪化してるから急がないとな」

 「みんなのこともあるし、ジュラール達がサルブレムにギフトを奪いに来る可能性もあるから早く戻ろう」
  
 歩きながら少しだけ今後の方針が決まったところでサーシャが町を見つける。   

 「見て! あの光は町じゃないですか?!」

 「そうみたいね! 私なんかもう足が棒よ。難しい話は後にしてとりあえず早く休みたいわ」

 「私はお腹が空いたよ!」

 「そうね。喉も渇いてるし、まずなにか食べましょう。いいでしょリネット?」

 「もちろんいいわよ。とにかく町に着いたらこっちのもんだからね」

 俺達の足取りは一気に軽くなり早足で町に向かう。
 
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