灰かぶりの少年

うどん

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灰かぶりの少年51

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「Do  do‼︎‼︎」
 
パカ パカ パカ…
ヒヒーンッ




窓際に立つと外から人の声と軽快な馬の足音が頻繁に聞こえる
いつもより騒がしいと思ったら今日はいろんな方々が来られる特別な日であった事を思い出す


侯爵様の甥っ子様の誕生日…


もっと窓から覗き込みたいけれど足首に鎖付きの拘束具をつけられているのでそれ以上は動けない


自分の思いとは裏腹に太陽の光が強く差し込む
これは現実だ
今日は…



「お誕生日おめでとうございます!」



扉の向こうからお祝いの言葉があちこちに飛び交う
華やかで豪華なパーティー


「灰かぶりよ…もう時期ここに私の大事な甥っ子が来る、分かっていると思うが粗相
だけは断じて許さん」


「はい…肝に命じています…」


「フンッ」



侯爵様に念をおされ身体中から冷や汗がプツプツと自然に放出する
不自由な足の方も動かしていないのに何故かズキズキと痛みも感じてきた




トントンッー




「入りなさい」



静かに扉が開き長身な男が入ってきた
顔には仮面マスクがつけられていたのでどんなお方なのかは不明
左胸には大きな勲章がついておりとてもすばらしい方という事だけは分かった



「誕生日おめでとう、我が甥っ子…クロール!」


「……」


「黙りか?せっかく祝っているのに気ままな奴だな…」


「……」


「まぁ…よい、お前の祝福日に免じて目を瞑ろう」


呆れた顔でため息をする侯爵様
そんな様子も微動だにしないクロール様は一言も発せず堂々と接す


「さっそくだが約束のプレゼントだ、少しの間だけ貸してやる…遊びすぎるのではないぞ」


「あっ…」


早く行けと言わんばかりの力で肩腕をドンッと押されクロール様の前に立たされる


「…お目にかかりとても光栄でございます、ぼ…ぼくは灰かぶりと申します」


「聞こえんっっ!」


「すっ…すみませんッ、良い一時になられますように…なんでも…ご奉仕致します」


「 ……」


辿々しく震える声で必死に笑顔を作り2人の機嫌をそこなわないように…
少しの間だけ感情を無くしていれば時が流れ終わるのだ

ドクドクと心の鼓動が波打つ

大きな音を感じるがこの音が聞こえるのは他でもない自分だけ
闇に包まれた悲しみのベール


「部屋は既に用意しておるからクロールよ、そこを使え」


足枷は外され杖をつく暇がないくらい乱暴に連れていかれる
奴隷は物…唯の消耗品にすぎない


部屋に入ると広い空間に高貴なお香が漂う
真ん中に大きなベッドが置かれすぐそばにいろんな道具が並べられていた


「クロール様…僕をご自由にお使い下さいませ…なんでもします、中に出されてもかまいませんし…宜しければ締めつけても…」



「…何をしても良いのか?」


今日、初めてお会いして声を聞く
でも何処かで聞き覚えのある声だ


「はい…っ、僕…お役に立てるようお務め致します」


「それは楽しみだ」


口角を少しあげ含み笑いをするクロール様はご機嫌の様子である

何とか自分も一緒に笑顔を作るが正直、不安でたまらない

すごく怖い…また殴られる?
それとも蹴られる?

僕は乱暴な行為しか知らない
そう…以前いたお兄様方のお屋敷から…


「仮面は外そう、唯のカモフラージュにすぎない…君もそろそろ気がつくだろう、声だけではわからなかったかい?」


「えっ…」


クロール様は仮面を外すとゆっくり髪をかきあげながら微笑む


「あれっ!?…確かっ…!」


「思い出した?」


「先日…っ僕を助けて下さった方‼︎」


「ハハッ、あの時はたまたま通りかかったからね…」


「たとえ偶然でも…こんな汚れた奴隷なんかを…」


またお会いして感謝の気持ちを伝えることができた
この方だったらどんなことをされても大丈夫だろう

きちんとお務めを果たしたい–


「そうだな…ではまず、君のことが知りたいから服を脱いで見せてくれ」


「承知しました」


言われた通りに上半身の前ボタンをゆっくり外し順番に肌を露にしていく
とても貧相でアザや傷が目立つ汚い体
最近は胸下の怪我が新しいので青紫色になり腫れている


「胸下の怪我が目立つが何かしたのかい?」


「あっ…これは僕が悪いんです、上手にできなくて侯爵様に怒られました」


「そうか…叔父さんもやりすぎで呆れる、あんまりお下がりみたいな遊び道具はすきではないんだけどなー」


「申し訳ございません…」


お喜びして頂くつもりが逆にクロール様を不愉快にさせてしまう
焦りと不安が知らず知らずに募っていく


「とりあえず仕方がない…このままで少し遊ばしてもらおうか」


ゆっくりと肩を引き寄せられ激しいキスが降ってきた
念入りに唇や口内を舐めまわされ2人の唾液が混ざり合う


ちゅうっ…っぴちゃ…ぁぴちぁっ…


「うっ…んンンッ」


「花びらのような繊細な唇だ…さぞかしこの小さな胸も開花されるのであろうな」


「ひいぃッッ!」


腫れている胸下の方をグッと掴まれた
あまりにもの痛さに悲鳴が咄嗟に出る


「おやおや…可愛い悲鳴だ、その調子で声を出してくれた方が面白い」


不気味に薄笑うクロール様にゾクツと背筋が凍りつく

この部屋に近づく人はおそらく誰もいない
どんなに音や声がしても…



  






















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