人食い熊、襲来!

Mr.ビギニング

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飲み屋

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約束の八時に村の飲み屋に行くと、すでに何人か討伐隊の猟師たちが
飲み始めていた。
座敷の長テーブルで酒を飲み、スルメをつまんでいる猟師たちの中に下塚の
姿を見つけ、隣が開いていたのでそこに座った。
「お、田島のニイさん。どうしたの」
すでに結構飲んでいるのか、下塚は酒臭かった。
「飲みに来たんだよ」
「なんで俺の隣?」
そこでいったん会話を切り、俺はビールを注文した。運ばれてきたジョッキの
ビールを一気に飲み干す。
「お前以外に知り合いがいないんだよ」
「田島のニイさん、元は札幌にいたんでしょ。あっちでも友達いなかったの?」
下塚は酔っているらしく、俺が避けてきた札幌の話題を持ち出してきた。
「あ、もしかして田島のニイさぁん、友達できなくてここに異動になったのぉ?」
呂律が回っていない。
「彼女もいなかったんでしょぉ」
『彼女』という言葉で、脳裏に美香の顔が浮かんだ。
やめてくれ、と言いそうになるのをこらえ、俺はもう一杯ビールを飲んだ。

「・・・・さん、お客さん、起きてください」
店員に肩をたたかれ、俺はふっと顔を上げた。長テーブルにつっぷして
寝ていたらしい。
猟師たちの姿は無く、店内の客は俺だけだった。みんな帰ってしまったのだろう。
空のジョッキやつまみの皿が並べられている様子からして、俺が寝た後も
飲み会は続いていたようだ。
「お客さん、帰ってもらわないと困りますよ」
店員の困ったような顔を見て、俺はのそのそと立ち上がった。
飲みすぎたな。頭が痛い。
「代金はお連れさんが出していったので結構です」と言われ、
俺はふらふらと店を出た。腕時計を見ると、時刻は午前四時。
もうすぐ日の出だ。
下塚に会ったら、代金のお礼をしなくちゃな。
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