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第2話 忍び寄る影
しおりを挟むあれから隼人は誰かに電話をして、ソウルイーターとかいう化け物の様子を伝えると別の任務があるからとどこかへ行ってしまった。
「それにしても凄かったなー。俺も隼人みたいに物を一瞬で凍らせたり出来ないかなー。父ちゃんに会ったら何となく聞いてみるか……」
「君が報告してくれた室谷君?」
ベンチに座ってぼんやりと氷漬けになったソウルイーターを眺めていると、背後から突然声をかけられた。
「うおっ!!」
「アハハッ!!」
思わず変な声を出してしまった。慌てて振り返ると、黒髪の長い女の人が笑いながら立っていた。
「俺は結城月霞。室谷隼人は、別の任務があるって言ってどっかに行ったよ」
「悪いね、驚かせるつもりは無かったんだ。ところで君もセイバーなのかな?」
黒髪の女の人は笑いながら俺の隣に座った。
「いや、違うよ。俺は故郷の島からさっきこの街に来て、この街のこととかはまだ何も知らないんだ」
「ふーん、そっか。あれっ、君って珍しい瞳をしてるね。青眼!?」
女の人は急に顔を近づけてきて俺の目を覗き込んできた。
「青眼の人ってこの国にあまりいないんだよ。瞳が太陽の光を多く取り入れようとしているから青くなるらしいんだけど。まぁそれはさておき、いっちょやりますかー!!」
女の人は何だかよく分からないことを言って、ソウルイーターに向かって歩き始めた。
今気付いたけど、腰にフォルダーみたいなものを巻いていて何丁か銃を持っているみたいだ。
「そういえばあのソウルイーターってどうするの?」
「これで消すだけさ」
急に鳴り響いた銃声と氷の砕け散る音が同時に重なった。
「体が消えていく……!!」
銃弾を撃ち込まれたソウルイーターの肉体は、煙のように消滅していった。
「ちなみにこの仕組みは部外者の君にはちょっと教えられないな。君がソウルセイバーになったら教えてあげるよ」
女の人は銃をフォルダーになおすと、何か紙を渡してきた。
「何? この紙……」
「それは、名刺って言うんだよ。この私の名前や連絡先が載ってる貴重な物だよ。なんちゃって、アハハッ!!」
名刺にはソウルセイバーだという事と、ランクはAだということも書いていた。
「白井美琴って名前なの?」
「そうだよ。白井さんでも美琴さんでも好きに呼んでくれて構わないよ。まぁ、どうしてもソウルセイバーに興味があるっていうならその番号に連絡してきなよ」
美琴さんはそう言い残してどこかへ行ってしまった。
ソウルセイバーか……。
正直、興味は出てきた。
俺と同じくらいの歳の隼人は物を凍らせることが出来るし、美琴さんだって俺には見えない速さで銃を撃っていた。
「ふぅ~っ」
っていうか携帯持ってないから番号知ってても連絡出来ないんだよな。
さてと、これからどうしよっかな。
気付けば日が沈みかけて夕方になっていた。
「そう言えば、夜の方がソウルイーターが出やすいって隼人が言ってたな……」
そろそろ寝床を探すかー。
元々野宿する予定だったんだけど、まさかソウルイーターなんて化け物がこの世にいるとは思わなかったから予定が狂ってしまった。
うーん、船に戻ってそこで寝るしかないなぁ。
途中、民宿みたいな看板があったんだけど俺にはそこに2週間も泊まるお金なんて無いし。
しばらく歩いて港に着くと、完全に日が沈んで夜になってしまった。
月が海に反射して綺麗で幻想的な景色が視界に広がった。
「母ちゃん、心配してるかなぁ? って、あれ!?」
いくら船を探しても父ちゃんの船が無い。
港をくまなく探したけど、小舟すら停泊していなかった。
もしかして、父ちゃんのヤツ島に帰っちゃったのか!?
だとしたらマズイ……。
体中から血の気が引いて行くのが分かった。
俺はこの先、父ちゃんがここに来るまで1人で生きていかないといけないんだ。
流石に島までは泳いで帰れないし。
「あー、何で父ちゃん帰っちゃったんだよ……」
ジタバタしていると、獣のような声が遠くで聞こえた。
もしかして、ソウルイーターか?
港には人影すら見当たらない。今ソウルイーターに遭遇すれば誰にも助けを呼べないんだ。
もうどこでもいい、とにかく建物に入って隠れないと……。
夢中で走ってどこか建物を探していると、近くで女の人の悲鳴が聞こえた。
「あークソッ!! どうすれば良いんだよ!!」
助けに行くべきかだろうか。
目の前には民宿が見えてるんだよな……。
立ち止まって悩んでいると、再び悲鳴が聞こえた。今度はさっきよりも近くで聞こえる。
もう民宿に入って助けを呼ぶ暇なんて無い……。
「もうどうにでもなれ!!」
民宿の外に立て掛けてあった傘を手に取って悲鳴のする方向へと全速力で走った。
「ハァハァハァッ……。ここか?」
人気の無いこの倉庫周辺から悲鳴は聞こえたはずだ。
「キャアアアア!!」
倉庫の中から悲鳴が聞こえた。
やっぱりこの倉庫に違いない。
何の倉庫かは分からないが、家くらいの大きさの倉庫だ。
閉ざされたシャッターの横にドアがある。
開けてみるか……。
ドアノブに手を伸ばしてドアを開けると、電気がついていて中は何も無い空っぽの倉庫だった。
「だ、大丈夫?」
倉庫の中央には女の人がうずくまっている。
ソウルイーターは居ないみたいだ。
女の人に近づいて肩を叩くが反応は無い。長い髪で顔は見えないが、腕がドス黒くなっているのが目に付いた。
「あ……」
逃げようとしたその時だった。
「ギャアアアア!!」
女の人が悲鳴をあげて俺の右腕を掴んだ。
「は……離せ……」
人間離れした力は俺の腕を握り潰すかのようだ。
コイツは人間じゃない。
人間を装っておびき寄せるソウルイーターだ……。
体は人間のようだが、目が六つもあるし鼻も二つある。よく見ると足は爬虫類のような皮膚をしていた。
「ふふふふっ。いとおかし、いとおかし」
な、何か喋ってる。
ソウルイーターはもう片方の手で俺の首を掴んだ。
し、死ぬ…………。
「が、ガハッ!!」
苦しくて息が出来ない。
「ふふふふっ。いとおかし」
やばい……。
誰か助けて…………。
手足に力が入らなくなり、目の前が真っ白くなっていく。
薄れる意識の中で、誰か女の人が必死に俺を呼びかけてくれているのが分かった。
駄目だ……もう……。
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