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黎編
34話 過去 脱出後
しおりを挟むそして…おれが目を覚ましたのは…それから3日後だった。
目を覚めると──知らない天井だった。
おれの目覚めを待ってくれるものはいなかった。いつもは…正兄がおれを心配してくれていたんだ…と昔のことを思い出す。
正兄は───おれが目覚めてから5日後に目を覚ました。傷の損傷は大きくすべてを治療するには何ヶ月もかかるらしい。
おれも…親につけられた傷を直すのに何ヶ月もかかった。
────今回の件は正兄がおれを監禁していたこと、おれが正兄を殺そうとしたこと、母がおれを殺していたこと…問題な点が多すぎだった。
そのため───おれたちはその問題を隠すことにした。
そして、約束があった。正兄に近づくなということだ。もう、二度と正兄の家族とは関わるなとはっきりいわれた。
病院から退院したときには──おれの家はすっからかんになっていた。
金持ちの正兄の家族は家を残してくれた。気味の悪いおれを置いて。
だから──その日からおれは1人になった。
割れた窓ガラスから冷たい空気が入ってくる。
おれは────これまでの正兄のことを思い出していた。
正兄は…おれのこと、どんな気持ちで
一緒にいたのだろう…、おれに告白するとき…とても緊張したのだろうか…。
そう、考え───あの恐ろしい日々が蘇る。
──────思い出すなっ…!
そう、叫ぶ。
もう、正兄とは関わることもない、もう会うともない、なら捨ててしまえ。
いい思い出も悪いことも───すべてなくしてしまえ───。
おれは毎日怯えながら生活をした。怖かった…正兄のことも、ここにおれが生きているということも──。
そして、それから何ヶ月か経った。
おれは学校に通えるようになった。
学校では元生徒会長が不登校になったとおれへの噂が立っていた。
そして、おれが正兄をナイフで刺したことも。
それによってまた、おれは恐怖の対象にされ怯えられてしまった。
また、いつもの日常が始まる。
あれから───自分の部屋のカーテンを開けた。いつでも亮に会えるように。
だが────亮にはあれから一度も会っていない。
亮は────どこに行ってしまったのだろう。
───────亮。
「──────悲しいよ…亮。」
どんなに泣いても亮が来ることはなかった。
そして──────また、何ヶ月か経った。おれは不登校が続いてしまったため正兄が行けなかった高校にいくことはできず、誰でも入れるような家から近い学校への受験となってしまった。
…高校など、どこへでもいい。
おれは…ただ正兄を超えたくて勉強していただけだから。
時が流れた。全部の授業が終わり家に帰ることにした。あの──1人だけの家に。
そのとき────ボコっボカっと人を殴る音が聞こえた。
おれはその元に耳を済ませる。
「てめぇ…、なんで勇太さんの兄なんだよ!?」
「おーい、生きてるぅ?」
ギャハハっと不良たちが誰かをいじめていた。…おれはふぅっとため息をついてみていた。
…懐かしいな。とそう思った。おれも…いじめられていたっけ。
正兄に監禁される前は。
監禁されるのが一番辛かった。けど、毎日殴られるのも…それはそれでつらかった。
だから───おれは。
助けようと思った。亮がおれを助けてくれたようにおれも───誰かを。
「起き上がれよっ…!このクズがっ…!!」
そう、不良が殴りかかったとき──。
「─────やめろっ。」
おれはナイフを向け、不良たちの前に立つ。
「あ?てめぇ…!!」
「お、おい、やめとけ!こいつ黎だよ!なにするかわかんねぇやつだ!逃げようぜっ!!」
不良たちはおれの姿を一目見るとそのまま走って逃げてしまった。
噂に助けられたとおれはナイフをポケットにしまう。
そして、
「─────大丈夫か?」
そう、話しかけた。
「─────大丈夫だよ。ありがとう、黎君。」
声が────聞こえた。
おれの大好きな声、おれがずっと会いたかった声。
おれの────生きる意味を与えてくれた、そんな。
「…え?もしかして──亮?」
まじまじといじめられている人の顔を見た。
「───そうだよ。良かった、黎君。あそこから───出られたんだね。」
亮はそういうとポロッと涙を流した。
それに吊られておれも涙が流れる。
「うっ…。、おれっ…。」
「─────泣けば?ずっと1人で我慢してたんでしょ?
──────おれがいるよ。」
亮のその優しい声におれは…涙を止めることが出来なかった。
「うっ…おれ、知らなかったんだよっ…!正兄がっ…、おれのために色々…してたことっ…!なにも、知らなかったっ…!!おれっ…、酷いことして…!!」
おれは自分の思いを亮に話した。泣いているおれに亮は抱きしめてくれた。
ずっとおれのそばにいてくれた。
亮の方が身体ボロボロで泣きたいはずなのに…。
正兄はおれのことを抱きしめてくれなかった。
亮の体温が暖かくて───おれは
─────亮のことが好きだと改めて感じた。
────亮への思いを消すことなんかできないとそう、思った。
しばらく時間が経っておれはやっと泣き止んだ。亮はおれのそばで抱きしめてくれていたけど…本当はとても恥ずかしかった。
うん、本当に…。
「あ、すまない…。亮。おれ…つい、泣いてしまって…。」
「ううん、いいんだよ。おれこそ、助けてくれてありがとう。
…今まで言えなかったけど…凄く辛かったんだよ。」
亮はにこっと笑ってそのようなことを言う。
「…大丈夫だ、これからはおれが亮を守るぞ。」
おれは咄嗟にそう言った。そんなおれを亮はにこっと笑った。
「黎君って…ほんと、真っ直ぐだよな…。」
「…え?」
「…誰かさんとは大違い…。」
亮はそういうとぽっと顔を赤らめた。
そのとき───亮が誰を思って言っているのかわかってしまった。
わかりたくなどないのに。
「…弟のことか?」
おれがそういうと亮はもっと顔を赤らめる。
「あー、まぁ。うん。そう。
あいつさ…おれを頼らないんだよなぁ。自分で何とかしようとしてさ…。ほんと、ひねくれてるし。
…黎君みたいに…泣いてくれればいいのに…。」
亮はそういって慌てて言い直す。
「いや、黎君が悪いんじゃなくて、ごめん!黎君みたいに泣いてくれればなんていって…!!」
「いや、いい。泣いたのは事実だ。
弟は…あまり泣かないのか?」
「…うん。昔はさ、よく泣いてたよ。しょーもないことで。
でも…最近は強くなっちゃったから。」
「強く…?」
「そう。お兄ちゃんより、強くなっちゃって…少し寂しいんだよな。」
亮はそういって笑みを浮かべた。
その目、仕草から───亮が弟のことが好きであることが読み取れる。
胸がズキズキとなる。
亮が好き。だけど───叶うわけがない。
だって───亮の弟への思いの方がおれの思いよりも強い。
亮は弟が好きだ。自分を犠牲にしてしまうくらいに。
おれには────出る幕はない。
(───おれは何回亮に失恋するのだろうな…。)
おれはこれからもずっと亮に失恋し続けるのだと思うと…この苦しい胸を止めることが困難であると知ることが出来た。
そして、少し間を置いておれに聞いてきた。
「…ねぇ、監禁って──どうだった?」
「え?」
「ご、ごめん。嫌なこと思い出しちゃうと思うんだけどさっ…!!」
おれはなぜ、亮がそのようなことを聞くのか全くわからなかったが…答えた。
「…辛いな。とても。外に出たいのに…カーテンはドアは近くあるのに外にでれなくて…死にたくなる。」
「…そっか。」
亮はそういうとボロボロの身体を起き上がらせる。
「─────次はおれか。」
「え?」
「───黎君も監禁から…頑張って自分の力で抜け出したんだもんね。
おれも───黎君みたいにがんばるよ。」
「──────え?」
おれは亮の言うことがわからずきょとんと首を傾げる。
「今度はって───?」
「黎君は頑張ってあの部屋から出た。
なら────おれも終わらせるために出ないとな。」
「…───っ出るって?」
亮の言っていることがわからずおれは心臓がバクバクとなっていた。
「おれね───大好きな弟を守るために───身体、張らなくちゃいけないんだよ。」
「なにいって────?」
「─────おれも、監禁されてくるよ。」
亮はそういうとにこっと笑った。
「…何を言っているんだ?」
おれは体が凍るのを感じる。
亮は────何をしようとしているんだ?
「こんなこと…誰にもいっちゃいけないんだけど…黎君にはつい話しちゃった。」
亮はにこっと笑ってそう答える。
にこっと笑う亮は遠い遠いところを見ていた。まただ…亮はおれの遠いところにいる。
おれは────亮のこと、何も知らない。
「亮は───何をしようとしてるんだ?なんでっ…!」
「…ごめん、これ以上話せない。
話したら…おれ、殺されちゃう。」
亮はそういうと遠い未来について話し出した。
「今──ここで頑張らないとおれと弟の…未来がなくなっちゃうんだ。
だからね───今、苦しめばいい。」
亮はボロボロの身体で動き出す。
「監禁なんて───本当は怖い。
だけど────早く、自由を手に入れるためには─────やらなきゃ。」
そういって亮はそのまま動き歩きだす。
「─────亮っ!!」
おれは亮の手を引っ張った。
────怖かった。やっと出会った亮が…どこか遠くへ行ってしまうと感じた。
いや、感じるだけでない、
多分───亮は遠くへ行ってしまう。
「やめろっ──!!ここにいろっ!
おれ、おれっ───嫌だっ…!
亮が…いなくなってしまう感じがして…怖いんだっ!!
どこにも行くなっ!!
ここにいてくれっ───!!
──────お願いだからっ…!!」
おれは亮にそういって腕を引っ張る。
だが────意味なんてない。
だって、最初からおれは、
────亮の視野に入っていない。
「ごめん、おれ────
─────弟のために、今
──────動かないとダメなんだ」
亮にはおれの言葉なんて入らない。
亮はいつも、───弟しか見えていない。
おれは亮の弟に──叶わない。
あの亮の目がそういっている。
熱を帯びたその目が───
──────おれを傷つける。
「─────ありがとう、黎君。」
──────最後に聞いたのはそんなありきたりの言葉だった。
ボロボロの身体で歩く亮をおれは
どうしても止められなかった。
力ずくでも止めればよかったのだろうか?
─────いや、おれはどんなに亮に声を掛けても意味ない。
「──────亮っ、亮っ…!
好きだっ…!亮がっ…好きだっ…!」
おれの声は届かない。
─────その日から、おれは亮に会うことはなかった。
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