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魔法の国クラスタ
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--夢の中で。
テスの隣に立ち、クラスタの城の屋上から雲を見下ろすように眺めている。
遠くに見えるのは、緑の大地……ジャックの住む地上だ。
「久しぶりだな」
「うん」
ここ数年、毎晩のように徹夜続きで何度体を壊しそうになったか分からない。
だから、疲れを取らなきゃダメだ、とあえてテスは夢に現れなかった。
何ヶ月ぶりだろうか。
「ジャックに会わなかった間ね。ミリアと会えたよ」
「ミリア? ふーん……」
王都に出てから、時々、忘れた頃にジーグと様子を見に来てたな、と思い出してると。
「ミリア、ジーグさんと結婚するんだって。幸せそうな笑顔で教えてくれたよ」
「……そうなのか?」
ジーグとミリアが、結婚。
それはまだ、聞いてない。
とはいえ、そんなに驚くような事でもなかった。
ここ一年ほどは、会いに来る二人の雰囲気が、なんだか甘ったるいものに見えたからだ。
「好きな人と結婚できるなんて、幸せだね」
そう、嬉しそうに話すテスの手を、ジャックは握りしめる。
すると、テスは頬を赤らめて、更に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「完成した。明日、試運転だ」
「……! おめでとう、ジャック!」
テスが、興奮気味にギューッと首に手を回して抱きついてきた。
「すごいすごい! ホントに、ホントに夢を叶えられるんだね! ジャック、おめでとう!!」
「テスのおかげだ」
「私? 私は、なにも……」
「お前がいたから、諦めずに頑張れた」
ジャックがこんな事を言うなんて、珍しい。
だからか、テスは耳まで赤くなってしまう。
「……ふふっ。実はね、このままジャックが先におじいちゃんになったらどうしよう、って考えてたの」
クスクスと笑うテスは……18歳のまま、何も変わっていない。
いや、正確には18歳になる直前だが。
とにかく、彼女の中の時間は、眠りについた時から止まっているらしい。
「じじいのオレは嫌なのか?」
ジャックである事にかわりはないのだが。
そう、少し複雑な気持ちで聞いてみると。
「一緒に歳をとりたいもん。それに……」
テスは頬を赤らめた。
「……ジャックの赤ちゃん、いつか欲しいよ……。おじいちゃんになったら、作れないでしょ?」
「…………」
思わずかたまってしまうジャックの手を、テスがギュッと握りしめてきた。
そして、
「ジャックは……子供、嫌い?」
とても、とても幸せそうな笑みで、そんな事を質問してきて。
思わずジャックは、頭を抱えた。
7つも年上になったはずなのに、いつまで経ってもテスにかなう気がしない。
「……行くぞ」
「えっ、どこに?」
どうにも我慢できそうにないと悟ったジャックは、テスの部屋に向かう。
そして、その後は……久しぶりのテスを、味わうのであった。
テスの隣に立ち、クラスタの城の屋上から雲を見下ろすように眺めている。
遠くに見えるのは、緑の大地……ジャックの住む地上だ。
「久しぶりだな」
「うん」
ここ数年、毎晩のように徹夜続きで何度体を壊しそうになったか分からない。
だから、疲れを取らなきゃダメだ、とあえてテスは夢に現れなかった。
何ヶ月ぶりだろうか。
「ジャックに会わなかった間ね。ミリアと会えたよ」
「ミリア? ふーん……」
王都に出てから、時々、忘れた頃にジーグと様子を見に来てたな、と思い出してると。
「ミリア、ジーグさんと結婚するんだって。幸せそうな笑顔で教えてくれたよ」
「……そうなのか?」
ジーグとミリアが、結婚。
それはまだ、聞いてない。
とはいえ、そんなに驚くような事でもなかった。
ここ一年ほどは、会いに来る二人の雰囲気が、なんだか甘ったるいものに見えたからだ。
「好きな人と結婚できるなんて、幸せだね」
そう、嬉しそうに話すテスの手を、ジャックは握りしめる。
すると、テスは頬を赤らめて、更に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「完成した。明日、試運転だ」
「……! おめでとう、ジャック!」
テスが、興奮気味にギューッと首に手を回して抱きついてきた。
「すごいすごい! ホントに、ホントに夢を叶えられるんだね! ジャック、おめでとう!!」
「テスのおかげだ」
「私? 私は、なにも……」
「お前がいたから、諦めずに頑張れた」
ジャックがこんな事を言うなんて、珍しい。
だからか、テスは耳まで赤くなってしまう。
「……ふふっ。実はね、このままジャックが先におじいちゃんになったらどうしよう、って考えてたの」
クスクスと笑うテスは……18歳のまま、何も変わっていない。
いや、正確には18歳になる直前だが。
とにかく、彼女の中の時間は、眠りについた時から止まっているらしい。
「じじいのオレは嫌なのか?」
ジャックである事にかわりはないのだが。
そう、少し複雑な気持ちで聞いてみると。
「一緒に歳をとりたいもん。それに……」
テスは頬を赤らめた。
「……ジャックの赤ちゃん、いつか欲しいよ……。おじいちゃんになったら、作れないでしょ?」
「…………」
思わずかたまってしまうジャックの手を、テスがギュッと握りしめてきた。
そして、
「ジャックは……子供、嫌い?」
とても、とても幸せそうな笑みで、そんな事を質問してきて。
思わずジャックは、頭を抱えた。
7つも年上になったはずなのに、いつまで経ってもテスにかなう気がしない。
「……行くぞ」
「えっ、どこに?」
どうにも我慢できそうにないと悟ったジャックは、テスの部屋に向かう。
そして、その後は……久しぶりのテスを、味わうのであった。
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