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魔法の国のお姫様
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それから更に数年が経って……
テスは、17歳の誕生日を迎えた。
胸のあたりまで伸びた、ゆるやかなウェーブのかかった艶やかな金色の髪。
人形のような長いまつ毛に、宝石のような緑色の美しい瞳。
きめ細かで、思わず触れたくなる陶器のような白い肌……。
可愛らしさも残しつつ、国中の誰よりも美しい女性へと成長した。
まだ成人していないにも関わらず、国中の独身男性から求婚の申し込みが殺到しているほどだ。
「おめでとう、テス。あと1年であなたも成人ねぇ」
「コホン。今日はね、君に大事な話があるんだ」
17歳の誕生日。
お祝いのケーキを家族で食べていると、両親がにこやかに口を開いた。
「? 大事な話?」
一体、どんな話だろうか。
テスには何のことだかさっぱり分からない。
両親は互いに目配せをする。
そして、
「実はね、この王家に生まれたお姫様は……」
この時初めて、テスは魔法の国のお姫様の運命を知ることになったのだった。
***
「よぉ」
「ねージャック、お祝いして?」
相変わらず、数日に一度くらいのペースで夢の中でジャックと会っていたテスは、彼に会うなりそう口にする。
「いきなりなんだよ……」
唐突なお祝いの催促に、ジャックは呆れた表情を浮かべた。
彼もまた、先日17歳になったばかりらしい。
幼い頃に比べて、ぐんと背が伸びた。
それになにより、男らしくなったとテスは思う。
無愛想なことに変わりはないのだが。
「あっ、海!」
テスはちょこんとジャックの隣に座るなり、目の前に広がる光景に思わず叫んだ。
今日の夢の中の舞台は、どうやら浜辺らしい。
空に浮かぶ国クラスタではお目にかかることのない広大な海に、テスは目を奪われる。
「……で、お祝いってなんだ?」
ジャックがめんどくさそうに話を促すので、テスは砂浜の砂を手にとりながら、
「私ね、今日、17歳の誕生日だったの」
楽しげに、サラサラと手から溢れる砂を眺めながら答えた。
ちなみに、別にプレゼントがほしいわけではない。
ここは夢の中だ。
だからそうではなくて、ジャックからひとこと、「おめでとう」の言葉が欲しかっただけ
……なのだが。
「ふーん……」
…………。
…………。
ジャックはそれきり、黙ってしまった。
「もージャック! 『おめでとう』は??」
テスがズイ、と隣のジャックの顔に自分の顔を近づけて催促すると。
「ん」
ジャックが、ぶっきらぼうに何かをテスに差し出した。
「えっ?」
「……おめでとさん」
目の前に差し出されたものは--一輪の、可愛らしい白い花。
「……っ、」
こんなの、不意打ちだ。
胸が、きゅんと締め付けられた気がした。
頬が、なんだか熱くなった。
嬉しくて嬉しくて、たまらなかった。
「可愛いお花……。ありがとう……! すっごく嬉しい!!」
「そうか」
まさかジャックからプレゼントをもらえるなんて思わなかったテスは、それはもう、満面の笑みを浮かべるばかりだ。
もちろん、この花は現実の世界に持ち帰ることはできやしない。
それはとても、とても残念だけれど。
この気持ちは、絶対に忘れないだろう。
「ジャックが運命の赤い糸の相手だったらいいなぁ……」
「あ? なんだって?」
テスの言葉は、波の音でかき消されてしまった。
テスは、17歳の誕生日を迎えた。
胸のあたりまで伸びた、ゆるやかなウェーブのかかった艶やかな金色の髪。
人形のような長いまつ毛に、宝石のような緑色の美しい瞳。
きめ細かで、思わず触れたくなる陶器のような白い肌……。
可愛らしさも残しつつ、国中の誰よりも美しい女性へと成長した。
まだ成人していないにも関わらず、国中の独身男性から求婚の申し込みが殺到しているほどだ。
「おめでとう、テス。あと1年であなたも成人ねぇ」
「コホン。今日はね、君に大事な話があるんだ」
17歳の誕生日。
お祝いのケーキを家族で食べていると、両親がにこやかに口を開いた。
「? 大事な話?」
一体、どんな話だろうか。
テスには何のことだかさっぱり分からない。
両親は互いに目配せをする。
そして、
「実はね、この王家に生まれたお姫様は……」
この時初めて、テスは魔法の国のお姫様の運命を知ることになったのだった。
***
「よぉ」
「ねージャック、お祝いして?」
相変わらず、数日に一度くらいのペースで夢の中でジャックと会っていたテスは、彼に会うなりそう口にする。
「いきなりなんだよ……」
唐突なお祝いの催促に、ジャックは呆れた表情を浮かべた。
彼もまた、先日17歳になったばかりらしい。
幼い頃に比べて、ぐんと背が伸びた。
それになにより、男らしくなったとテスは思う。
無愛想なことに変わりはないのだが。
「あっ、海!」
テスはちょこんとジャックの隣に座るなり、目の前に広がる光景に思わず叫んだ。
今日の夢の中の舞台は、どうやら浜辺らしい。
空に浮かぶ国クラスタではお目にかかることのない広大な海に、テスは目を奪われる。
「……で、お祝いってなんだ?」
ジャックがめんどくさそうに話を促すので、テスは砂浜の砂を手にとりながら、
「私ね、今日、17歳の誕生日だったの」
楽しげに、サラサラと手から溢れる砂を眺めながら答えた。
ちなみに、別にプレゼントがほしいわけではない。
ここは夢の中だ。
だからそうではなくて、ジャックからひとこと、「おめでとう」の言葉が欲しかっただけ
……なのだが。
「ふーん……」
…………。
…………。
ジャックはそれきり、黙ってしまった。
「もージャック! 『おめでとう』は??」
テスがズイ、と隣のジャックの顔に自分の顔を近づけて催促すると。
「ん」
ジャックが、ぶっきらぼうに何かをテスに差し出した。
「えっ?」
「……おめでとさん」
目の前に差し出されたものは--一輪の、可愛らしい白い花。
「……っ、」
こんなの、不意打ちだ。
胸が、きゅんと締め付けられた気がした。
頬が、なんだか熱くなった。
嬉しくて嬉しくて、たまらなかった。
「可愛いお花……。ありがとう……! すっごく嬉しい!!」
「そうか」
まさかジャックからプレゼントをもらえるなんて思わなかったテスは、それはもう、満面の笑みを浮かべるばかりだ。
もちろん、この花は現実の世界に持ち帰ることはできやしない。
それはとても、とても残念だけれど。
この気持ちは、絶対に忘れないだろう。
「ジャックが運命の赤い糸の相手だったらいいなぁ……」
「あ? なんだって?」
テスの言葉は、波の音でかき消されてしまった。
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