永遠の誓い

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26.後悔

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***


そして
ジルは港の船員に頼み込んで、船を出してもらうことになり。

……生まれ故郷の島へと、向かいました。

イリアとライアンには、昨日別れを言ってあります。
きっと今頃、イリアは怒っているかもしれませんが。


ーーザザン……ザザン……


「二時間くらいで着くから、中でゆっくりしてるといいよ」


船を出してくれた老人が、そう声をかけてくれました。
しかし、ジルはニコリと笑みを浮かべながら、首を横に振ります。


「ありがとうございます。でも、もう少しだけここにいます」


そして船の上からずっと、シェイドのいる港町を眺めていました。
見えなくなるまで、ずっと。

……もう、二度と会うことはないでしょう。

ふと……
触れ合った唇の感触を思い出し、指でゆっくりと触れてみます。


(……本当に……良かったの?)


いいえ。
きっと、後悔をするでしょう。

シェイドを愛してることに
シェイドと共に生きたかったことに、偽りはなかったのです。
 
それでも……恋人のいるシェイドのそばにいる事は、出来ませんでした。


(私は……こんなに、弱かったのね)


長い長い時間、たった一人で生きてきました。
強くなったと、思っていました。

騎士ライトとの誓いを支えに、どんなに寂しくて辛くても、泣かなかったのです。

しかしシェイドと出会い……
強くなどなっていないのだと、気づかされました。
彼に出会ってから、泣いてばかりいました。


***


一方で
その頃のシェイドはというと、苛立ちながら町の外へと向かっていました。

宿屋から出てすぐ、近場で魔物が出たとの話を聞かされたので、狩りに行くところだったのです。

ちょうど良かった、とシェイドは思いました。
ただがむしゃらに魔物を相手にしてる時は、何も考えなくて済むからです。

……しかし、港町の出口まで来ると。


「……何だよ?」


宿屋の女主人が、シェイドを待っていたかのように立っていました。


「全く……。どうしたら、あの男がそんなにひねくれた性格に生まれ変わってしまうんだろうね」
「……はぁ?」


呆れたようにため息をつくと、女主人はシェイドの目を見て続けて口を開きました。


「自分の気持ちは、自分が一番よく分かってるだろ?
そんなに、前世のライトと比べられるのが嫌なのかい?」
「……!」


何故、宿屋の女主人がそんな事を知っているのでしょうか。


「……あんた、まさか」


シェイドは、ようやく気づきます。


ーービュウッ


「ッ!」


突風が吹き
一瞬、目を閉じました。

そして、次に目を開けた時……シェイドの目の前にいたのは。


「……あんたは」


黒いローブを着た、杖を持つ老女……
ジルに不老不死の薬を与えた、魔女だったのです。
宿屋の女主人の姿は、面影すらありません。


「確かに、騎士ライトはできた男だった。お前さんが今の自分と比べてひがむのも分かる」
「…………」
「お前さんが望むなら、前世の記憶を綺麗さっぱり消し去ってやろう。前世に振り回されたくないのなら」


シェイドはその言葉に、困惑した表情を浮かべます。

魔女は戸惑うシェイドに構わず、話を続けます。


「ただ一つ、忠告しよう……。
もし、くだらない意地でジル姫を手放すというのなら
お前さんは、一生後悔するだろう」
「……どういう意味だ?」


……後悔。

思わず、シェイドが心配そうな表情でその意味を尋ねます。


「今すぐジル姫を追わなければ、手遅れになるって事さ」
「!!」
「さぁ、どうする? 記憶を消すかい?」


問いかける魔女に背を向けて
シェイドは町の出口ではなく……港の方へと、駆け出しました。

そんなシェイドの後ろ姿を見て、魔女は優しく微笑みます。
そして、


「今度こそ、幸せにおなり……騎士ライト、ジル姫……」


それだけ呟くと、魔女は姿を消しました。

……そうです。
魔女は、ジルと騎士ライトの生まれ変わりであるシェイドを、ずっと見守っていたのです。
国王の命令だったとはいえ、ジルをここまで苦しめた責任を感じていたのです。

……この先どうするのかは、二人次第。
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