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ブラハム酢

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11 ドラゴン狩り⑤

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「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」

「モオオォォァオ」

人(?)2人と牛1匹が本気で駆けてきた。
彼らの顔は正しく、「会っては行けないものにに会ってしまいました✩」という表情である。マテリオオグモが獲物を全速力で追うのは滅多に無い話だ。理由としては、個々の力が弱い、基本何でも食す事ができるので逃げられてもまた探せばいい、という2つの理由である。それでも、マテリオオグモがこの3人(1匹は牛です)にこだわる理由とは何なのか……?
検討もつかぬまいが、とても興味深い。



「がぁぁぁぁたすけてぇぇぇええ」

俺は疲れを忘れ、ただただ走った。マテリオオグモに食されない為に。ここで命を落とさない為に。
──そしてまた最悪の事態。この森はループする。
=体力勝負
ということかっ!!

「レフィーネっ!!俺もう無理だ!こいつに体力で勝てる気がしねぇ!!」

「死ねぇ?誰に言ってんのよ!!ちょっと現状分かってる?!」

「違うって……w笑わせんなチビ!!うぁぁあきつくなってきたこれ!!!」

驚くのはマテリオオグモの遅さ、ではなくその振動、音である。マテリオオグモの足が地面につく瞬間の地面の振動、砂利や砂を駆ける音が凄まじいのだ。それにしても振動の振れ幅が大きすぎる。それが+されて、さらに体力を奪われるのだ。お陰で何回も転びそうになる始末だ。
あぁ最悪。
あんなに大きい口で食われたらどうなるんだよ、全く。生きた心地がしねぇな。
────と、思い出した。

「なによ?」

レフィーネが息を荒々しくしながら聞いてきた。

「思い出したんだよ、」




「ドラゴン捕獲用の網を持っていることを!!!」

名案だろ?

「ならさっさと用意しなさいよボケ!!」

あれ~?「やるじゃない!」みたいな返答を求めてたのにキイキイ怒鳴られたんですけど。まぁいいや、さっさと用意しないと!

「レフィーネ!すまないが、俺が背負ってるリュックから網出してくれ!1番上にあるはずだ!その代わり今より頑張って早く走ってあげるから!」

俺はレフィーネを呼びかけ、力ずくでリュックのベルトを外した。

「本気で言ってるのかしら?!しょうがないわね、私じゃ持てないから、出したら援護頼むわよ!」

そう言うと、レフィーネはスピードを上手く緩め、俺のリュックのファスナーを掴んで下げ、網を出来る限りの所まで出し上げた。
その間、俺は全速力+‪α‬で走り、マテリオオグモと5m程の差が出来た。

「よいしょっ……!」

俺は疲れ果てた足を無視し、走り続けたままで巻かれた網を解き、道に広げながら置いた(投げた)。
すると、レフィーネが俺とは違う網の使い方をしたかったのか、怒りだした。

「ちょっと!何その使い方!木に引っ掛けるとかもうちょっといい案なかったわけ?!それでマテリオオグモがスピード緩める?」

「知らねーよ!それしか普通無いだろ!追いつかれんのわかってるだろ!」




ふぅ、若い勇士は意外と面倒臭いものじゃな。勇士とその妖精も全く力を使いこなせておらん。
さて、我が、人助けしてやるとするか。





「レフィーネ!!頑張って走れ!!」

俺がそう叫んだ瞬間だった。


ドカッ。


「……は?」

目の前に、謎のコンクリートの壁が立ちはだかった。まるで俺らを嘲笑うかの様に。これは俺らに〇ね、と言っている様だ。残念ながら魔力もない人間にはこの壁をどうにもすることが出来ない。マテリオオグモがこんなこと出来るはずがないと、思っていても、死ぬことは変わらない。


人生短かったな。
後悔沢山あるのにな。
ともう生きる事を諦めている俺の横で、レフィーネが必死にもがいていた。

「ちちちちょっと、あんた、なんかしたの?終わるじゃない、やめてよ、嫌よ……」

「モォォォウ……」

両方、力無くコンクリートの壁をどしどし叩くその瞳には、薄ら涙が浮かんでいた。


「やめろ、レフィーネ、エリザベス。降参だ。レフィーネは出会ってまだ何日だ?1日くらいか?早かったな、っていうか本当にごめん。……お前と約束したのにさ。俺が、守ってやれなくて、本当に、ごめんなさい……許して……」

「ちょって何言ってるのよ、諦めないでよ……!誰も死ぬなんて言ってないじゃない!やめてよ、嫌よ……ねぇ……」


その後、俺の目の前で足音が止まる音がした。
あぁ、やっとマテリオオグモも追いついたか。やっぱり、俺はサバイバル生活に不向きらしい。美味しく食べれよ、血1滴残さず、俺が異世界に来たってのもバレないようにしろよ。
あ、エリザベスは多分美味しいぞ。俺が大事に大事に育てて来たからな。途中で飽きるとか無しな?殺すぞお前。あ、死んでるから無理だったや。
……はぁ、これで終わりか。
俺は壁によしかかり、マテリオオグモに向かって手を伸ばした。
太陽が眩しい。
後悔の無い人生を送りたかった、と再度思う。親孝行もろくに出来てないし、まだ友達だって沢山作りたかった……。

「美味しく食べて、生きろよ」

俺は、その一言を残して、この世を去った。





はずだった。



──────

「何してるんですか?」

聞き覚えの無い声が耳に届いた。
いやいや、まさかね、そんな声聞こえるはずないって。いや、俺まさか、瞬速で生まれ変わった?でも手の感触もあるし、足先も不自由無く動かせる。
これは一体?

「おきてくださーーい!お願いします!」

遠い声がいきなり近くなった。
その衝動に目が覚める。
そして自分は誰か問う。(大丈夫か?コイツ)

「誰?俺?はっ!俺はここで何を……?!死んだんだろ?……まさか幽霊になったのか!未練あったっけ?あれれ?」

俺が首をかしげながら状況を整理していると、

「ひゃっ!私幽霊になってる?!」

と、キーキーした、レフィーネの声が隣で聞こえた。
謎の声の持ち主が、ゴホン、と咳払いをすると、いきなりペラペラと喋り出した。

「お二人様?マテリオオグモです、聞いてますか。ていうか聞いてて欲しいんですけど。聞かない?え?いやいやいや、そんな選択肢は貴方にはないですよ、ねえ。あ、こんなこと僕が言える立場じゃ無かったですね、めんごです、と言いたいとこですけれどもやっぱり謝罪会見は見ないとだめですよねぇ?見ないとあなたが納得しないと思いますよ。僕なりに考えてあげたんです、どうやって謝罪会見開くか。普通だと僕の撮影会、1回につき10000円は頂くんすけど特別に無料!てことでもいいんですよ?それより貴方達の演技最高でした、恋人同士の2人が愛を誓ってこの世を去る、最高でしたね。ドラマ化してもいいくらいです!それでも謎は残りますけどね。僕の言ってる謎って分かります?分かって欲しいなぁ。もううんざり。なんで僕だけ一生絶食なんだよ。」

かみ砕きたいほど、食べたい。けれど我慢。
ベビーの頃から我慢ばっかだった。
だけどやっぱり食べたい。
レフィーネは特に美味しそうだったのに。

僕は何で食べちゃいけないの?











──────
遅れて申し訳ないです汗
冬休み満喫しました。復帰(?)すると思います。
最後に問題です。(唐突)
Q マテリオオグモの最後の言葉にある、「謎」とは何でしょう?
(簡単すぎるかも……。)
でもやってみたかった……やつの1つです……。
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