一緒に始めませんか?異世界農業生活✩

ブラハム酢

文字の大きさ
上 下
4 / 11

4 俺氏、猟師に転職します。

しおりを挟む
※猟師になる事は絶対にありません。

7p.m.

チリリーーーーッ。

変わらぬ目覚ましの音、朝日が射す俺の寝床。
いつもこの光が刺す感触で目を覚ます。
まだ眠たくても、はやく~はやく~と餌を待ちわびている動物達に、餌の時間が遅れてしまってはとても申し訳ない。

もう戻れないであろう地球。
これからの生活は異世界で暮らしていかないとならないと考えた方がいい。

しかし、なによりこの異世界のインパクトが強すぎて...!!!!!!
もうこれが現実だとしか思えない...

何故なら..





































空にはドラゴン!!謎の神の存在!!魔法で農具が作れるというクラフト法!!!!!!

こんな濃すぎる印象の異世界を誰も忘れられるものか...っ!!!!!!
し~~~っかり、と脳に焼き付いてくれちゃってますよ~~。



そんなこんなを、俺はふわぁぁ~、とあくびをしながら考えていた。
























そして次の瞬間、何かを思い出したかのように俺はガバッ、と体を起こした。
目が覚めたァァ!!

まずここは異世界であること、まだ何も栽培していないこと、餌を与えなければならない動物もエリザベスだけだということ。
あらゆる現実を俺は思い出した。

そうだ、まだ何も始まっていない。
召喚されてからまだ初日だ。





その後また思い出した。
記憶がまるで紙吹雪の様にパラパラと舞落ちてくる。

あぁそうだった、昨日あのまま説明書を読みながら眠くなってソファーに座りながら寝落ちしてたんだっけ。
えっ、じゃあ俺はどうやってベッドの上に移動したんだ??
混乱する中、俺は左右に目をキョロキョロさせた。



ん...魔法か?
そんなはずない。
俺魔法使えないし。
ウッ、嘘だろ、まさか魔法を手に入れたか?!
うぇ~い、やった~
とか想像してみる。


















え、まさかエリザベス?


そう気づき、真顔で右のカーペットで座っているエリザベスの方へ顔を向ける。

その時、エリザベスもこちらに顔を向け、ウィンクした。
きらりん、しゃきーん。
そんなエリザベスは、今にもぐっじょぶ、と親指を立てそうな雰囲気だった。

そのエリザベスに俺は、瞬間的に顔を明るくさせ、

「えぇぇええぇえぇ...ありがとうエリザベスたぁ~~ん♡お陰様で暖かくすやすや眠れました~っ。お礼に何でもしましょう(イケボ)」

と抱きついてしまった。
頭に、エリザベスが俺をくわえてベッドまで引きずっていくシーンが思い浮かぶ。
お前~いつもつ~ん、としちゃって俺の事見下してるように見えるけど、ちゃんと俺のサポートしてくれてんじゃん。




さぁ、俺も頑張って農業始めるか。























その前に、おれは知りたいことがあった。
それは、いつから出荷期限の2週間が始まるor始まっているか、だ。
今日は2日目。
もう始まってるとすると、1週間と5日残っているわけだ。
だが考えてみると1週間と5日しかない。

説明書に載ってるかも。

俺はスマホを固く握りながら説明書を全て読み漁った。
そして読み始めて、開始3分後。

『初め、召喚されてからの2週間、出荷額を稼ぐためにドラゴン狩りをおすすめする。』

と書かれた文を見つけ出した。




「は」





は、と目を丸くするしかなかった。
開いた口が塞がらない。

俺は異世界に農業をしに来たのにドラゴン猟師になれってか?!?!
しかもまだ召喚されてからそんなに経ってないのにこんな異世界初心者な俺にドラゴンを狩ることをおすすめするだと?!
何それ?!?!
どんだけ鬼畜なんですか、苦しめたいんですか、俺を殺したいんですか!!!!!!
確かに分かるよ、今から畑耕して、だの、植えて、だの、して1週間と5日後に出荷出来るわけない。
そのためにドラゴンを狩る必要あるか?!?!
もっといい方法あったよね?!?!

あぁ...大根でも種植えてから収穫まで最低20日はかかると思うし...。
ガーデンレタスも2週間じゃ間に合わない...。







「おいエリザベス!今日やること決まりだ!」


俺はそう言って髪も整えぬまま、猟師となるためにクラフト工房へと向かった。

(※エリザベスはドラゴンに食われたら嫌なので置いてきました。とても悲しそうにしてました。ごめんね。しっかりとドアの鍵閉めたからね。)






























クラフト工房なう。
猟師に必要なものをクラフトするため、初めて、(当たり前)家の隣に常設されているクラフト工房に足を踏み入れた。

内装はいわゆる古小屋であった。あまり広くなく、人が2人入れるか入れないかのスペースだ。
そして机と1台のログチェアが設置されており、机の中心には大きい魔導書の様な本が、開いて無造作に置いてあった。


「...えぇ~っと?どーすりゃいいんだこれ?...なんか触っちゃいけないオーラびんびんなんですけど」

この本触ったら呪われる~みたいなやつ。
でも他に見渡してもこの本以外に作ってくれそうなやつないし。
俺はとりあえず席に着き、魔導書に恐る恐る手を近づけた。
その時。

「何勝手にさわるんですのっ」

「アウチ!!!!!!」



すぐ近くから、鈴の音のような少女の声が聞こえた。
しまいには俺の手を叩いてきやがったぁぁ!

その後、俺が魔導書に目を戻すと、そこには...



ティ○カーベルが怒り顔で俺を見つめていた。
いや、正確にはティ○カーベルでは無いが。
妖精、というのかこれ。
ちいちゃくてみえないわ。

「小さくて悪かったわねっ!!」

またぷんぷん、と顔を赤く染めて俺を睨みつけてきた。
直径10cm。
よく見れば(よく見なくても分かる)水色の瞳に、モカ色のツインテールの幼き女の子だった。
限りなく可愛い。

「あのぅ...えっと...俺はここにクラフトしに来たんだけど~...やっぱここ違ったのかなぁ~??なんちゃってえへへ...」

「全くもう、気味悪い男ったら...。
私はこのクラフト本の守り主、レフィーネと言うわ。...勝手に此処に来るとは貴方一体どこの使い主であってよ?
...まさか此処に召喚された人...なわけ無いわよね...?!」

「いやそうですけど」

「えぇ...あんたみたいなゲス男が...?
信じられない」

「すんごく胸に突き刺さる言葉なんですけど?!」


どうやら彼女は精霊らしく、この本を長い間守り続けてきたらしい。
怪しい者が、この本を手に取ろうとすると、そいつを追い払い、自分が認めた者だけにしかこの本を使わせないらしい。

「...それで、私はあの方にここに来るよう、派遣されたわけだけれども。貴方がこの家の主らしいわね」

レフィーネが頬ずえを着きながら俺を見上げて言った。

「...確かにそうみたいだな。実のトコ俺もよく分からねぇんだ。昨日ここに召喚されたわけでさ~...それでここでドラゴン狩りのための武器を作ってもらおうと思って」




「そこでおねがいっ、俺のためにクラフトしたげてっ」




と、俺は祈りのポーズをしながら、机の上で空中に浮かびながら頬ずえをしている妖精に、語りかけた。









「は、無理」

「えw」



即答だった。
これじゃあ何にもできないじゃーん!
第1試練 クラフト本を使わせてもらう
ってか?!
むむむっ、この俺に使わせないとは...お前、よくぞそんなことを言える...ッ!!!!!!



「ふふふっ...ふははは...ふっはっはっはっ!!......俺は地球の大魔王✩レンであるぅぅっ!!俺様に逆らうとは何者であるかァ―――――っ!!!!!!」


俺は魔王のフリをした。
こうすればあんな小さい妖精は俺にビビるであろう!
「ごめんなさい!私が間違ってました!魔王様!」とか言ってつかわせてくれるんだろ~な~。
これぞ方法1、洗脳術っ!!!!!!

しかし妖精の返答は。

「何お馬鹿な事言ってるのかしら笑
くふふふっ...くははっ...笑いが止まらない...じゃないっ......www」

なんだよコイツ。
腹抱えて笑いだした。
この洗脳術いけると思ったのにぃ~!
人を笑うなんてひどいぞ、この『背ちっこ妖精野郎』!!俺は絶対許さないからな!!
その後、また妖精は腹抱えてくすくす笑い始めた。

「...ふっ...ははははっ.............ふふっ...............wwwそうね、じゃあ、そこまで言うのならいいわ...」






使わせてくれるのっ?!
やったーーーーー!
俺は召喚されてからの今までの中で1番心を踊らせていた。
洗脳術が成功したのか...!

だが俺の笑顔は、真顔へと、変わることになる。


彼女が呟いたその言葉は。











「私とゲームをしましょ?」


という、変哲の無い言葉だったのだが。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました

ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。 そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。 家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。 *短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました

星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

処理中です...