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- 28章 -
-とある休日2-
しおりを挟む色々心配したけれど、安積自身が自分を蔑ろにしていると感じているわけでないのなら、それで良いかと、この件は放棄することにした鈴橋だった。
その後、小一時間程当たり障りのない会話を楽しむと、そろそろ解散するかという流れとなり、その前にと植野が立ち上がる。
「ちょっと待ってて、御手洗い行ってくる!」
「あ、俺も」
「行ってらっしゃい」
仲良く連れ立った植野と市ノ瀬を見送り、鈴橋は少し残っていた紅茶を飲み干す。上着を羽織り帰る準備済ましていると、どうも安積の様子がおかしい気がした。
「どうかしたか?」
「…うぅん、なんでもないよ」
「そう?」
なんでもないと言いつつも、少しソワソワした様子でうつむき、テーブルのある一点を見つめている。
なにかあったのかと、見つめ続けているその一点見てみるが、特になにがあるわけでもなく、至って普通のテーブルがあるだけだ。
『…でも、なんだこの感じ。凄い既視感…』
「…まぁ、なんだ。とりあえず、お疲れ。安積」
「ありがとう…」
安積の様子に既視感を持った鈴橋だったが、それがなんなのか、喉元まで来ている気がするのに、なかなか正体を現してくれない。
「…お前はあまり嬉しくないかもしれないが」
「ぅん?」
「凄く上手に化けるようになったって思う。男だって事、忘れそうなくらい。俺でも、役数こなす毎に上手くなってのが分かる。頑張ってんだな」
「……ありがと。そぅ言ってもらえると嬉しいよ」
とりあえず適度に言葉を交わしながら観察し、既視感の正体を探していくが、なかなかに頑固そうだ。
『…でもこれは、まぁ良いかって、しちゃ駄目な気が』
「男だって分かってるけど、女性とデートするのってこんな感じなんだろうなって」
「えっ!?」
「そう思うくらい、可愛らしく仕上がっt」
「まっ、待って待ってっ!ちょっと待ってっ!」
淡々と褒めちぎりつつも、鈴橋の思考は既視感の追及一点に注がれており、その為か、あまりにも見つめながら誉めちぎってくるものだから、安積は恥ずかしさに耐えられなくなり、待ったをかけた。
が、恥ずかしい以上に、気になった事があった。
もしそれがそうなら、申し訳なくて…
「あっ、あのさ」
「なんだよ?」
「がっくんは、女の子とデートしたことないの?」
思わず問うてしまったが、こんな感じなんだろうな、という、予想的な言い回しを考えれば、間違いなく、まだ経験した事がないと言うことで…
「……そうだな。したいと思ったことすらない」
「…なんか、ごめん」
「なにがだよ?」
「なんかその、始めてのデートの実感?てのが…俺でごめん、みたいな」
「…………」
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