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- 28章 -
-とある休日2-
しおりを挟む何故こんな事態になっているのか、鈴橋には到底理解出来ないが、そんな安積の姿に、流石に少し心が痛んだ。
小さく溜め息をついた鈴橋は、ひとまずケーキをもう1つ注文すると、この状況の原因を追及しにかかることにした。
「俺等の事はもう良いだろ。で、お前等は一体なんでこんな状況になってんだよ?」
「こんな状況?」
なんの事か分かっていないような顔をした市ノ瀬に、鈴橋は安積を指差すと、市ノ瀬はまるでこの状況の異常さを忘れていたかのような納得の声をもらし、事の経緯を話し始める。
「……で、やるからには全力で、がモットーだからな。全力すぎてあまりにも出来が良かったから、自慢したくなって、言いくるめて連れ出して、今に至るって感じ」
「なるほど、部活の為に化粧の練習してたのね! 相変わらず演劇部は熱心だなぁっw」
「だからって嫌がってる奴連れ出すなよ。というか、なんでお前が自慢したがるんだよ。意味分からん」
「なんでって…なぁ?」
突如として話を振られた安積は、あからさまに破棄のない疲労困憊な声で “ 部員仲間だからだょ ” とだけ短く返した。
部活熱心な安積が化粧を練習するのも、化粧品を喜ぶのも、試しに使ってみるのも納得はいく。確かに、鈴橋も以前、化粧品が高いと愚痴っていたのを聞いた事もあった。
しかし、劇に出るのとプライベートで出掛けるのとではわけが違うという事は容易に予想できる上、その予想は正解なのだと、安積の様子がありありと表している。
「成果を誰かに見せたい気持ちは分かるけど、もう少し安積を気にかけてやれよ。テンションガタ落ちじゃねぇか」
「…驚いた。お前がそんなこと言うとは思わなかったわ。でも、俺ほど安積を気にかけてるやつ、居ないと思うんだけど。なぁ?」
「…………」
しかし、問いかけられた安積は返事を返すでもなく、相も変わらず無言のまま、ケーキを黙々と食べ続けている。
「…お前、こんな事してるとその内嫌われるぞ」
「ははっ、大丈夫大丈夫」
「一体どこから来るんだその自信は」
「どこから?どこからって、なぁ?」
「……まぁ、嫌ったりまでは…しないけど」
「…安積、お前も嫌なら嫌って言わないと、悪化の一途をたどるだけだからな」
「……それは、そうかもだけど…ただ、断ったら断ったで、もっと大事な何かを失う事になるから…」
「はぁ?」
「なにそれkwskっ!」
「植野 stay!」
「がっくんに怒られたっ」
女装姿で無理矢理連れ出されても、嫌いにはならないという懐の深さは驚きだけれど、それが言葉通りなのだとしたら、問題は断ったら失う大事ななにかという事の方だろう。
『一体、なにが…』
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