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- 28章 -
-とある休日2-
しおりを挟む「まぁ、不憫だとも思うけどな…」
「…ありがと」
その熱も、この現状に注がれる同情に一気に引っ込んだ。誉められた事は素直に嬉しいけれど、一気に現実に引き戻され、なんとも言えない気分になる。
「そういや入店直後から気づかれてたみたいだけど、なんで?」
「やー、実はここ来る前さ、がっくんと公園でのんびりしてたんだけど」
「えっ、も…もしかして…」
公園という言葉に、とある予感が安積の頭の中をよぎった。ここに来る前、確かにとある公園の前を横切った。
『ぃやっ、でも横切っただけだよ…?』
公園の中を突っ切ったわけではない。それでバレるだろうか?けれど、このタイミングで公園に居たと言うならば…
「最初は、むっちゃんが知らない女の人と歩いてるなぁって思って見てたんだけど、なんか歩き方に見覚えあるなぁーって思って、気になっちゃってさ! 尾行したっw」
「歩き方っ!?」
歩き方とは盲点だった。まさかそんな前から、しかもそんな事で気がつかれていたなんて…。観察眼怖い…気がつかなかったフリしてよっ!!と思う安積だったが…
「で、せーちゃんだっ!ってなって、ついてったら面白そうな事が起こりそうだなってっ!!」
「そうだよね…綾ってそーだよね…」
「面白そうだと思った事には、光に群がる虫みたいに吸い寄せられるからな、植野は」
「お前、腐ってもこi ……」
「なんだよ?」
「友達になんて言い方だよw」
「わりとまとを得ていると思うが」
恋人になんて言い方、と言いかけて、直前で言葉を飲み込んだ自分偉い、と自画自賛する市ノ瀬だったが…
『まさか、綾の好みがこんな無愛想な毒舌家なんてなぁ。もしかして、綾ってドMだったり…?』
自分ならこんな毒舌家なんてごめんだ。やはり素直で明るく、表情豊かで優しい、そして弄り甲斐のある奴じゃないと一緒に居て楽しくない。
そんな事を思われている等つゆ知らず、植野は幸せそうにケーキを口に運びながら経緯を話続ける。
「でさっ、カフェ前でメニュー見ながらなんか話してたでしょ?そん時にさっと後ろ通って、カフェにお先してたわけよっ! 来なかったら来なかったで諦めようと思ってたけど、ラッキーだったわっ!」
「へぇー、全然気がつかなかった。すげぇな」
「むっちゃんはせーちゃんに夢中だったしねっw」
「もー、楽しくて楽しくてw」
言葉通り楽しそうに会話を交わす植野と市ノ瀬だったが、そんな2人の前では、対照的などんよりとした空気が漂っていた。
いつもの安積であれば、大好きなケーキを前にすれば、テンションアゲアゲで幸せそうに食べている筈なのに、今は身を小さく縮め、モソモソと食している。
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