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慰弦

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- 28章 -

-とある休日-

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昔と違い、ある程度力をコントロール出来るようになったと言っていたし、そうでもないと言った言葉も嘘ではないのだろうけど。


「気、使わなくて良いんだからね」

「うん」

「誰かの秘密、ペラペラ喋る人の方が嫌だしさ」

「…ありがと」


慣れたと言ったところで、月影の様子を見れば負担になっている事は明らかだ。やはり微塵もなんとも思わないなんて事は難しいのだろう。

“知ってしまった”事や、それに比例するように増えていく“言えない”秘事に、罪悪感や疲労が増えていく。

相手の要望を拒否する事は、優しい人程罪悪感が溜まってしまうものなのだから。

でもきっと、それだけじゃない。

優しいから、知ってしまったからには、どうにかしてあげたいと思ってしまう。
その過程で、うまく行かなくて、もどかしく思うことも、力不足に嘆くこともあっただろうし、時には嘘つき呼ばわりされ、気持ち悪がられることもあった。

大抵気にしていないふうを装っているが、上手く誤魔化せていると思っているのは本人だけだ。

けれど、知られたくないと思っているのなら、知らないふりをする。その上で月影が前を向けるよう、月影の気が晴れるよう、親友として共に馬鹿をやって笑顔を引き出す。それが秋山のした選択だ。

月影の弱さを知り、その支えを担う人は、秋山ではなく他にいる。そして、それで良いと思っている。


「まぁ、俺は既にひーくんと長い付き合いだし?これからだって終わらせる気ないし?そのうち分かるかもしれない事は、楽しみに待つ事にするよ」

「…やだ、惚れるっ!ふつつか者ですが、おじーちゃんになるまで親友で居てくださいっ」

「大丈夫、死ぬまで離さないよ?」

「熱烈っ!w」


先程から変わらず、ずっと外を眺めている月影の陰った笑顔に、晴れ間がのぞいてくれているのを願い、いつもの軽口を叩いた。

月影が結月に、長い付き合いになると言った時。

ついに未来予知も出来るようになったのかと、月影になら、出来ると言われても妙に納得出来そうだと思ったけれど、実際はどうかは分からない。

けれどー

市ノ瀬兄妹に、自分達兄弟をよろしくと言った事。

未来予知ではなく、何かしら、そう思える理由が月影にはあるような気がした。

それが何かは気になるけれど、秋山とて、結月と同じく、いや、それ以上に、月影とは長い付き合いになるだろう。

そうありたい。

違う。

なる。

予想でも願望ではなく、これは確信だ。

気になるその答えは、いつか知る時が来るだろう。


「のんちゃん」

「んー?」

「予知出来るようになったって言っても、納得しないでよね? これ以上俺に変な力つけないで…」

「えっ、ごめんごめんwそんなつもりないよっ!ただ、ひーくんの発言に説得力あるって話!」

「物は言いようだなぁっww」


軽やかな笑い声を響かせながら、2人を乗せた車は颯爽と街中へと姿を消していった。
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