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慰弦

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- 28章 -

-とある休日-

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ならばここは綺麗にスルーするべき所なのだろう。とはいえ、そろそろ潮時だと、市ノ瀬は姉の背中を小突いた。


「…おい、ゆず。予定あるって言ってんだからあんま引き留めんな」

「それもそうか…もう少し話、したかったけど…残念」

「大丈夫、結月さんとはながーい付き合いになると思うから、機会はまだまだあると思うよ」

「長い?なぜ?」

「んー、まぁ、なんとなく?ね、市ノ瀬くん?」

「え?えっと…?」

「なんだ?2人して、なにかあるのか?」

「なにか………Σぁっ。ぇ、えっ!?」

「ふふっ」


突然意味ありげに振られた月影の言葉に、市ノ瀬は顔色を変え、まさかすぎた思い当たる節に戸惑いの声を上げた。不思議そうに姉に見つめられながらも、市ノ瀬の視線はそのじつを問うかのように月影に向いている。

『…あぁ、そっか、2人が付き合ってるって俺が知ってるのは知らないのか?』

そんな市ノ瀬の反応は、月影のいたずら心を少しくすぐるものだったが、不安にさせてしまうのは少し可哀想だしと、慎重に種明かしする事にした。

結月の少し嬉しそうな三角関係という発言を考えれば、理解のある人なのかもしれないという手応えはあったが、それが身内にも当てはまるかどうかは分からない。

只でさえ、安積達の道程は険しいものになるだろう。障害は出来る限り少なくあって欲しいし、少なくとも、自分は障害ではないと伝えたい。遠回しになってしまう為、伝わるかどうかは分からないが、伝われと願いながら月影は口を開いた。


「大丈夫。俺は、応援してるからね」

「………」

「応援って?」

「……良いよ、ゆづは気にしなくて」

「そんな事言われても気になる。私も関係あるんだろ?」

「…まったくないとは、言えないけど…まぁ、追々」

「追々…」

「なにはともあれ、睦月君もゆづさんも、今後とも俺達兄弟をよろしくお願いします!」

「…はい。…その、ありがとう、ございます」

「良く分かんないけど、承知」


市ノ瀬の反応を見るに、月影が伝えたかった事は、どうやら無事伝わってくれたようだ。

最初こそ気まずくてしょうがなかった月影だったが、市ノ瀬の少し赤らんだ顔と、戸惑いと共に確かに伝わってくる隠しきれない喜びが、可愛くて、愛おしくて、こんな穏やな気持ちになれるなら、ここで出会えて良かったと、自然と笑みが溢れた。


「ねぇ、むつ。追々っていつ?」

「…追々は追々だよ。そのうちちゃんと話すって」

「そ。 なら待つ」

「………」

「…………」

「ねぇ、なんの話?」

「気ぃ、短すぎんだろ…」
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