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- 28章 -
-とある休日-
しおりを挟む確かに、再会してからまだ1年程しか経っていない。けれど、共に歩む人が出来たのなら、弟がその人と過ごす時間を奪うわけにはいかない。
ある程度の距離感は必要だ。
「行く? 行かない?」
「あっ、ごめんね結月さん、俺達これからカフェデートだから」
「デート…そう、分かった」
そんな断りの言葉に、さして残念そうでもなく一言で返した結月だったが、別れの挨拶をするでもなく、月影と秋山をまじまじと見つめた。
今度はなにを言い出すのだろうか?そんな好奇心に、同じように見つめ返しているとー
「なる程、アスパラ達はそういう関係なのか」
「そういう関係っ!?ww」
「そうきたかぁっ!!ww」
ただの軽口で言ったデートという言葉を、まさか本気に捉えられるなんて思わなかった。大抵の人は、同性同士で付き合っている、と言うよりも、ただの冗談と捉えると思うのだけれど…
『言葉をそのままに捉えちゃう素直な子なのか、同性愛が当たり前だって思える境遇に居るのか…』
それも気になる所だけれど、それ以上に気になるのは、もし彼女が受け取った通り、自分達が付き合っていたのだとしたら、それを彼女がどう思うかだ。
弟達にとっての壁は、少ないに越したことはない。
「本気にしたら駄目ですよ、結月さん。この人達のいつもの冗談ですから」
「そうなのか……残念」
「残念ってw でも、そうだなぁー。もし結婚してなかったら、のんちゃんならありかも?」
「それはなしだって前言ってたじゃん!ww でもそれなら、俺はひーくんよりてっちゃんが良いなぁw」
「辛辣っww」
「ほぅ? 三角関係か…良いな」
「いやいや、それは早計ですよ。長谷…てっちゃんさんがどう思ってるか分からないじゃないですか」
「…確かにっ」
「……………」
冗談に冗談を重ね、更にはその冗談に真剣に返す。周囲で繰り広げられるそんな会話の流れに、最早どこに突っ込むべきなのか、諌めるべきなのか見当もつかない。
それ以前に、口を挟むタイミングすらも計りかね、口を噤むしかない状態の市ノ瀬は、自分と同じように、先程から喋らない班乃姉へと助けを求め視線を向けた、のだが…
「……ん? どうかしたの、市ノ瀬君?」
「…いえ、なんでもないです」
近くで飛び交う収拾不可能な会話を、見事にスルーし、ガラス越しに見える動物達を笑顔で眺めていた姿に、スルースキルがどうのと話していた言葉を、まるでまざまざと見せつけられたようだった。
『…俺も、少しは見習うべきだな』
失礼な事を言わないか心配ではあるけれど、秋山や月影は嫌そうな素振りを見せていないし、万が一にも、この2人が姉に危害を加える事はないだろう事も確信は持てる。
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