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- 28章 -
-とある休日-
しおりを挟む「アスパラ達はどうする?」
無表情のまま首をかしげた結月の問いかけに、秋山は隣に居る月影を見る。班乃等と鉢合わせした最初こそなにやら気まずそうにしていたが、なんだかんだいつの間にかいつも通りのテンションに戻っている。
結果気まずそうにしていた理由は、結局分からずじまいな為、安易な返事は出来そうもない。
「ひーくん、どうする?」
「………」
「ひぃーくーん? おーい?」
賛否を聞こうと月影へと問いかけるが、なにやら店舗を熱心に見つめたまま微動だにしない。
『…これは、あれかな? 多分、奥さんとか弟君のこと考えてる顔だな』
そして、月影の様子から立てたそんな秋山の予想は、見事的中していた。
『蓮、意外と動物好きだし、今度一緒に来よう。あっ、聖も喜びそうだなぁ、こういうの。仕事も暫く落ち着いてるしー』
そう思い浮かべていた月影だったが、時同じくして聞こえてきた“ 声 ” に、弾かれたようにその声の主へと視線を向けた。
「……え、なにか?」
「あっ、いや…うぅん、なんでもないよ」
「はぁ」
自分と同じ様に、店舗をぼんやりと眺めていた声の主は、その表情とは裏腹、とても優しそうな声色をしていてー
『安積連れてきたら喜びそうだな…』
と、これまた自分と同じ事を考えていた。
「ひーくん、大丈夫?」
「あっ、あぁ、うん。ごめんごめん。ただなんか、もうお役目御免かなぁって、思って」
「え、なにが??」
離れていても、頭に思い浮かべてくれる人が居る。喜ばせようと、楽しさを共有しようと考えてくれる人が居る。自然と思い浮かべてしまうくらい、想いを寄せてくれる人が居る。
そんな幸せな事があるだろうか?
弟の市ノ瀬に対する気持ちは、恐ろしく駄々漏れだった為、どれ程悩み、どれ程好いているのかは分かっていた。大切な弟には誰よりも幸せになってほしい。想いを寄せる相手と、上手く行ってほしいと、本心から思っている。
だからこそ、あまり関わりの深くない市ノ瀬の気持ちが気になっていた。
弟を通して見えた市ノ瀬の姿は、きっと弟のバイアスがかかっている。そうじゃない、市ノ瀬本人からの、本当の想いとは?
本当に、本心から、弟の事を想ってくれているのか。普通とは違う困難な道を、本当に弟と共にしっかり歩んでくれるのか。…弟を裏切るような事をしたりはしないか、そんな不安があった。
けれど、それは無用な心配だったようだ。
弟と同じくらい、市ノ瀬も弟の事を。
もしかしたら、弟以上にー…
「やー…いい加減、弟離れしないとなぁって」
「いい加減って…会ったばっかじゃない」
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