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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む同調してくれる言葉が、嬉しくないわけじゃない。
でも、そうだとしても
望まずとも、手に入ってしまったのならば
手に入れる前に戻る事も
失くす事も出来ないのならば
自分の一部として受け止め、対策を取るしかない。
それが受け入れると言う事で
それをしないのも、うまく出来ないのも
全て自分の責でしかない。
その責を放棄し、トラブルに巻き込んだ上、怪我までさせてしまった長谷川に対しては、今だに申し訳なかったという気持ちが消えないが、だからこそ、無責任とも取れる自分の発言が、被害者である長谷川に肯定される度に救われていくのだ。
事ある毎に謝り、その度に許され、最後にはいい加減謝るの止めろと怒られたので、口に出して謝る事も、そう感じ取られる事も、しないようにはしているけれど。
そんな友人の優しさに何度も救われ、今もなお、救われている。とてもありがたく感じる反面、それが他責を口にする事の壁を低くしてしまうのも、勿論分かっていた。
そして、真面目な事を考えている心の片隅で、自分も文句を言おうとすれば言えるのだと、語彙力がない訳じゃないと、ひっそりと、少しだけ見返せた気になっているのは秘密た。
「大人なんだから、いつまでも甘えてないで、ちゃんと現実見ろって思った。もっと、俺の立場になって考えて欲しかった。俺は、家族の為に、辛いのも痛いのも、寂しいのも我慢した。凄く悲しかったけど、家族とも縁を切って家も出た。全部あの人の望み通りになった。それなのに、最後まで目背け続けたくせに、結局自分が困った時はー……」
「あれは完全に自業自得。お前が気にすることない。都合良すぎるんだよ、アイツは」
途切れた言葉の後に、頭に浮かんだ鮮明な記憶は、きっと2人とも同じ物だろう。
あの時は、月影と継母との間に起こった出来事について、長谷川も秋山も詳しく知り得ていなかった為、月影の取った行動に、かなりの焦りと戸惑い…そして恐怖もあったものの、知ってしまえば咎める気にはなれなかった。
正当性を問えば意見は分かれるもので、月影本人は後悔し反省しているみたいだが、長谷川から言わせれば、そんな事する必要はないとしか思えない出来事だった。
暫しの沈黙の後、大きくため息をついた月影は、上体を起こし、1口喉を潤すと、ぼんやりとグラスへ視線を落とし、憂いを帯びたような表情を浮かべた。
「本当は諦めたくなかったし、諦めて欲しくなかった。……理解、して欲しかったよ。やっぱり。受け入れて欲しかった。だって最初は、本当に好きだったんだよ。お義母さんって言いたかった」
「それなら尚更、死ぬほど嫌うのは自然な事だと思うけどな」
「そうかなぁ…」
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