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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む「期待してたぶん、裏切られたって気持ちが強いっていうか。家族で暮らしたいっていう望み無下にされたなぁーとか、努力とか、時間とか色々、無駄にされたなぁー…って思っちゃうんだよねぇ。…でもまぁ、祐子さんだって」
「あー、そういうの良いから。枕詞みたく擁護すんな」
「擁護って…」
「お前、ホントに悪口苦手なやつだな。相手がどうのとか関係ない。たまには自分の事だけ考えろ」
「そんなこと言われても…」
彼女なりに努力した事は事実であり、それを言うことが擁護になるとは思わないのだけれど…
『自分の事だけ、か…』
相手の行動や感情を、度外視して考えるのはあまり得意ではないし、そうする言う事は、全てを他責にしてしまうという事でもある為、抵抗がある。
しかし、悪口が苦手なやつと言われるのも、なんだか語彙力がないと言われているみたいで、それはそれで少々癪だ。
『……別に、言わないだけで、まったく思わないってわけじゃないし…言おうと思えば、俺だって』
なかなかに矛盾であるが、それが人であるが故の美しさの様なもので、面白く感じる所でもあり、楽しめる所でもあるのだと思う。
そう思えるかは人各々だとは思うが、矛盾さえ楽しめれば、きっと人生は豊かになるはずだ。
「……本当はさ、大っ嫌いだよ。俺から全部奪ったあの人が、嫌い。俺の全部を嫌悪して、蔑ろにして、消そうとまでしたあの人が憎いし、悲しかった」
それはそうと、誰かを悪く言うことの、なんと自分本意で不愉快な事か。自分の悪いところを棚に上げるのにも程がある。
「痛いのも苦しいのも嫌に決まってるじゃん。人が大人しくしてれば、それに胡座かいたように好き勝手して…あの人がもっとちゃんとしてくれれば、そんな思いする事も、悪者になる必要だってなかった。1人だけ辛いみたいな態度で他人の優しさに気がつきもしないし、自分の気持ちのままに好き勝手するあの人が腹立たしかったし、ズルいって思った。なんで自分ばっかり我慢しなきゃならないんだろうって…」
自分を棚上げした言葉達に不愉快極まりないが、それに反するように微かに気持ちが軽くなっていく気がするのが受け入れがたい。
「見えるのだって聞こえるのだって好きでそうなった訳じゃないのに、なんで自分ばっかりこんな思いしなきゃならないんだよって、悔しかった」
「そうだよな。理不尽だよな。昔は、こんな力なきゃ良いのにってずっと言ってたし。自分のせいでもないのに辛い目にあわされたら、当たり前に誰だってそう思うさ」
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