1,082 / 1,142
- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む突っ伏したまま長谷川を見ると、かなり呆れたような目が月影を見ていた。無理もない。これはずっと言われ続けてた事だ。
許せない事に疲れた。
憎む事に疲れた。
なら、許す為に疲れる方が良い。
嫌いより、好きに目を向けられる人間になりたい。
「…だってそーでもしないとずっとしんどいんだもん。良い子になるのも悪い子になるのも、どっちもしんどいなら、良い子になりたいじゃない」
「それで突撃してくるくらい落ち込んでたら世話ねぇよなぁ」
「…それは、ごめん」
無理矢理にでも、彼女にとっては悪者でも、自分にとっては良い人でありたい。そう決めたのだとしても、辛い事に変わりはなく、その結果、長谷川に迷惑をかけ、更には…
「あのなぁ、只でさえお前の場合爆発したらやべぇんだからマジで。溜めて溜めて爆発させるのだけは勘弁しろよな。不満があるなら小出しにして、発散…させ、て……」
「……………」
「……え? なに? なん、だよ?」
サッと目を反らした月影の態度に、なにかを察した長谷川は、顔をひきつらせた。流れていない汗が、鮮明に見えそうな程に。
「おま…えっ? なん…えっ?? まさか…」
「……だからお子様だって言ったじゃん」
「だからって……はぁ!? 今度はなにっ!?ガラス割ったっ!?変なのと追い駆けっこかっ!?もしかしてどっかに閉じ込められたっ!?それともー」
顔面蒼白で身を乗り出した長谷川に、月影は慌てて両手を差し出した。学生時代、長谷川のあまりの鬱陶しさに耐えきれず、うっかり与えてしまったファーストインパクトが強烈だったせいだろう。身を案じてくれただろう事はありがたいのだけど…
どの口が言っているのかと思われるかもしれないが、流石に、当時と同じ事を起こす程子供じゃない。
オーバーリアクションともとれる長谷川の反応に少しムッとするが、つい先程起こしてしまったばかりの事態が頭に浮かべば、瞬時にしてそれもすぐさま引っ込んだ。同じくらいじゃないとは言え、だ。
「お前1人か?それとも誰か被害者が…?」
「……聖」
「うわぁー…気の毒すぎる。大丈夫だったのか?聖君は」
「大丈夫だよ。大爆発したってわけじゃないし。もっと…ちっちゃい爆発。水面がちょっとブクブクーってして、ザザーっとして、木がざわざわーってしたくらい」
「小さいから良いって訳じゃねぇし、可愛く言ったって普通に怖いからなっ?お前基準で考えんなっ!」
「ですよねぇー…でもほら、今日はたまたまというか、油断してたというか、その、色々重なっちゃっただけで…仕事修羅場明けで色々限界だったのもあったし、それで寝湯で寝ちゃって」
「ほらって…修羅場明け眠くなるのは分からなくもねぇけど…ってかそんな所で話してたのかよお前ら」
「ちょっと癒されようと思って。寝るつもりはなかったんだけど、思ったより限界だったみたいでさぁ。それでちょっと…夢見が悪くて…」
「夢見? なんの夢見たんだよ?」
「……おじいさんの夢。と、ちょっと事故った時の祐子さんの夢。やけにリアルで、感覚まであって、本当最悪だったの。だからホント、タイミング悪くて」
「ちょっとの事故じゃねぇだろ、あれは」
「良いの、ちょっとで」
「そ。お前が良いなら、良いけど…」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。


BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

ACCOMPLICE
子犬一 はぁて
BL
欠陥品のα(狼上司)×完全無欠のΩ(大型犬部下)その行為は同情からくるものか、あるいは羨望からくるものか。
産まれつき種を持たないアルファである小鳥遊駿輔は住販会社で働いている。己の欠陥をひた隠し「普通」のアルファとして生きてきた。
新年度、新しく入社してきた岸本雄馬は上司にも物怖じせず意見を言ってくる新進気鋭の新人社員だった。彼を部下に据え一から営業を叩き込むことを指示された小鳥遊は厳しく指導をする。そんな小鳥遊に一切音を上げず一ヶ月働き続けた岸本に、ひょんなことから小鳥遊の秘密を知られてしまう。それ以来岸本はたびたび小鳥遊を脅すようになる。
お互いの秘密を共有したとき、二人は共犯者になった。両者の欠陥を補うように二人の関係は変わっていく。
ACCOMPLICEーー共犯ーー
※この作品はフィクションです。オメガバースの世界観をベースにしていますが、一部解釈を変えている部分があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる