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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む突っ伏したまま長谷川を見ると、かなり呆れたような目が月影を見ていた。無理もない。これはずっと言われ続けてた事だ。
許せない事に疲れた。
憎む事に疲れた。
なら、許す為に疲れる方が良い。
嫌いより、好きに目を向けられる人間になりたい。
「…だってそーでもしないとずっとしんどいんだもん。良い子になるのも悪い子になるのも、どっちもしんどいなら、良い子になりたいじゃない」
「それで突撃してくるくらい落ち込んでたら世話ねぇよなぁ」
「…それは、ごめん」
無理矢理にでも、彼女にとっては悪者でも、自分にとっては良い人でありたい。そう決めたのだとしても、辛い事に変わりはなく、その結果、長谷川に迷惑をかけ、更には…
「あのなぁ、只でさえお前の場合爆発したらやべぇんだからマジで。溜めて溜めて爆発させるのだけは勘弁しろよな。不満があるなら小出しにして、発散…させ、て……」
「……………」
「……え? なに? なん、だよ?」
サッと目を反らした月影の態度に、なにかを察した長谷川は、顔をひきつらせた。流れていない汗が、鮮明に見えそうな程に。
「おま…えっ? なん…えっ?? まさか…」
「……だからお子様だって言ったじゃん」
「だからって……はぁ!? 今度はなにっ!?ガラス割ったっ!?変なのと追い駆けっこかっ!?もしかしてどっかに閉じ込められたっ!?それともー」
顔面蒼白で身を乗り出した長谷川に、月影は慌てて両手を差し出した。学生時代、長谷川のあまりの鬱陶しさに耐えきれず、うっかり与えてしまったファーストインパクトが強烈だったせいだろう。身を案じてくれただろう事はありがたいのだけど…
どの口が言っているのかと思われるかもしれないが、流石に、当時と同じ事を起こす程子供じゃない。
オーバーリアクションともとれる長谷川の反応に少しムッとするが、つい先程起こしてしまったばかりの事態が頭に浮かべば、瞬時にしてそれもすぐさま引っ込んだ。同じくらいじゃないとは言え、だ。
「お前1人か?それとも誰か被害者が…?」
「……聖」
「うわぁー…気の毒すぎる。大丈夫だったのか?聖君は」
「大丈夫だよ。大爆発したってわけじゃないし。もっと…ちっちゃい爆発。水面がちょっとブクブクーってして、ザザーっとして、木がざわざわーってしたくらい」
「小さいから良いって訳じゃねぇし、可愛く言ったって普通に怖いからなっ?お前基準で考えんなっ!」
「ですよねぇー…でもほら、今日はたまたまというか、油断してたというか、その、色々重なっちゃっただけで…仕事修羅場明けで色々限界だったのもあったし、それで寝湯で寝ちゃって」
「ほらって…修羅場明け眠くなるのは分からなくもねぇけど…ってかそんな所で話してたのかよお前ら」
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「……おじいさんの夢。と、ちょっと事故った時の祐子さんの夢。やけにリアルで、感覚まであって、本当最悪だったの。だからホント、タイミング悪くて」
「ちょっとの事故じゃねぇだろ、あれは」
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「そ。お前が良いなら、良いけど…」
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