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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む「そう、普通に飲むなら綾鷹」
「割りで使うなら伊右衛門、だろ」
「…よく覚えてるね」
「あんな力説されたら忘れねぇよ」
以前、宅飲みをした際、緑茶ハイはどのお茶が良いのかから始まるお茶論を、小1時間ほど力説された事があった。
因みに、常時は綾鷹、割りには伊右衛門、喉が乾いた時にはお~いお茶、等々、場面に合わせたお茶論が色々とある、らしい。
とはいえ、細かすぎて、後半は話し半分に聞いていた為、正直全部を覚えてはいなかった。
緩い笑みを浮かばせながら、再びお茶を口にする月影を見れば、もう少し真面目に聞いてあげれば良かったかなと、微かな後悔が過る。
が、月影のこだわりはなかなかに変わっており、更に事細かくもあるので、全てを覚えるのは難しいよな、と、そんな後悔は秒で流した。
「それで?あんま時間ねぇんだろ?」
「うん…」
「嫁さん待たせるのも可哀相だし、単刀直入にどーぞ」
「…単刀直入」
中身が半分ほど減ったグラスを、両手で握りしめた月影は、逡巡とした様子で、しばしその水面を眺めていたのだがー
ゆっくりとグラスを端に寄せたかと思うと、ゴンッと音を立て、唐突に机へと突っ伏した。
「おい、止めろ馬鹿。机割れる」
「…俺の頭の心配してよ」
「頭大丈夫か」
「なんかそれ、心配されてる気がしないなぁ」
「我が儘だなぁ。ってか、単刀直入とは?」
「話しずらしたの鉄司じゃん」
「そうか? 悪いな」
悪びれた様子もなく、テンポ良く返される長谷川の返事に、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。長谷川のこういうサッパリとした物言いは、落ち込んでいる時には、とてもありがたいものだ。
「単刀直入に言うとね」
「おぅ」
「俺は、全く成長出来てない、お子様のままなんだなぁーって」
「ふーん。で、そのお子様は、なんでお子様のままなんだ?」
「…今日さぁ、聖に祐子さんの話をしたの」
「あー…あのキチガイ女」
「…ちょっと鉄司、言い方」
「間違ってないだろ」
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「…お前さぁ」
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彼女がパニック状態だったのと、月影自身、継母への憎しみがまだまだ消化しきれておらず、その事が、長谷川の評価を大きく助長するに至っているのだろう。
「いい加減さぁ、優しい良い子になろうとすんの止めたら?」
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