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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む「…とんでもない。私も本当の弟が出来たようで嬉しいですよ」
「俺もっ、俺もですっ! ほぼ一人っ子みたいに育ってきたし、聖と会えて、お義姉さんも出来るなんてっ、しかもこんな短期間でっ! 凄く嬉しいですっ!あっ、あとっ!もう1個!」
「なんでしょう?」
「俺の事、敬称なしで呼んで欲しいんですけど、駄目ですか? 」
「分かりました。ではこれからは聖と呼ばせていただきます」
「はいっ!! ありがとうございますっ!」
少しだけあった間が地味に気にはなるが、了承をもらえた事に、安積はホッと胸を撫で下ろす。
“さん”付けをされると、勝手なイメージ、可愛いらしいおばあちゃんが連想されるのがちょっと嫌だったのと、なんだか1線引かれたような距離感を感じてしまい嫌だったのだ。それ故本当は敬語も止めて欲しい所だが、兄に対しても敬語で話しているようなので、これが蓮の普通なのかもしれない。
誰に対しても敬語で話す人は、身近な友達にも居るし、それは別に距離を取る為、敬語を使っているわけではないのも勿論知っている。
蓮が敬語で話す事に理由があるのか、ないのかは分からず、これからもそうなのか、そうじゃなくなるのかは蓮次第であり、それは蓮に任せることにした。
「じゃぁ、今度こそ本当に帰ります! 遅い時間にお邪魔しましたっ!」
「いえ、お気をつけてお帰りください」
元気良く一礼すると満面の笑顔を残し、玄関から去って行く弟の勢いに置いていかれた兄は、若干の寂しさを感じつつも、急いで車の鍵を指で引っかけた。
「じゃぁ、送ってくるから!」
「聖」
「ぅん?」
「…貴方と結婚して良かった」
「……なんかそれ、ちょっと複雑なんだけど」
恍惚とした表情で弟の去った方向を見つめ、染々と言った様子で呟く嫁に、なんだか複雑な心情になる。弟を気に入ってくれたのは勿論嬉しいのだけど…
『俺も未熟だなぁ…』
彼女の1番が自分なのは分かっているのだけれど、信用していない訳でもないのだけれど、それでも感じる微かな独占欲や、複雑と言ってしまった発言を冗談で流せるよう、なんでもないように笑顔を作り彼女へと向ける。
「まぁ、あれねっ、可愛いでしょっ!? 俺の弟っ!」
「そうですね。とても可愛いです。無論、結婚して良かったと思うのはそれだけではないですが」
「……蓮と結婚して良かった」
「それはどうも」
早く追いかけないとと思いつつも、振り向き妻の体をギュッと抱き締めた。なにを言うわけでもなく、回し返される腕が胸を堪らなく締め上げる。
「…良かったですね。沢山話せて」
「うん」
「心残りなく、ちゃんと全部、話出来ましたか?」
「うん」
「…聖が優しい子で良かったですね」
「ほんとにね…」
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