1,075 / 1,107
- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む絵本が本屋に並ぶまでなんて、今まで1度も考えたことはなかった。ざっくりとしか分からないと言った兄の説明だけでも、沢山の人が手を貸してくれているのが分かる。きっと、もっと沢山の人の手がかかって居るのかもしれない。
共に頭を悩ませ作家さんを支えてくれる人が居る。出来上がった物をより良いものにする為に、紙からこだわって考えてくれる人が居て、こだわり抜かれたまっさらな紙に、色を着け命を吹き込んでくれる人が居て、それを形にしてくれる人が居て、それを沢山の人の手に届くように考えてくれる人が居て…
こんなにも沢山の人が、“ 思いを形にしてくれる ”。
『…そっか、聖みたいに絵が描けなくても、服とか作れなくても、思いを形にする事って出来るんだ…』
それなら…
「どうしたの? 急に?」
「あっ、いやっ、なんでもない! ちょっと気になっただけ!! 凄いねっ!そんな沢山の人のおかげで絵本が出来てるんだなんて、びっくりだよっ!」
「うん。1人では難しいけど、沢山の人の技術や知識のおかげで、良い物が出来るんだよねぇ。ほんと、ありがたいよ」
しみじみと言う兄に頷き返し、膝の上に置いたままの絵本へもう一度視線を落とすと、安積は密かに決意を固め、ゆっくりと閉じた。
「あのさっ」
「うん?」
「ありがとう!宝物って言って、大事に取っといてくれたの、すっごい嬉しかったっ!!」
「…ううん、どういたしまして」
和やかに笑い合い、話もちょうど途切れた所でゆっくりと立ち上がった。そんなに長くはかからないと言っていたけれど、なんだかんだ時間が経ってしまっている。
兄は気にしないかもしれないが、いつまでも居座っては蓮に申し訳ないと帰る旨を伝えると、笑顔で頷き、見送りの為、兄も立ち上がった。
「お帰りですか?」
「あっ、はい!長々すいませんでしたっ!」
2人並んで部屋を出た瞬間、リビングからかけられた声に反射的に背筋が伸びる。緊張とは違うが、シャンとした彼女の声や話し方に自然とそうなってしまう。
「起きててくれたんだ? ありがとう!」
「いえ、別に。 沢山、話せましたか?」
その問いに、寸分違わぬタイミングで視線を向けあった兄弟は、瞬間、眩しい程の笑顔を浮かべた。
「うん!」
「はいっ!」
「…そう。それは、良かったです」
嬉しそうに声を揃えた兄弟に、つられるように、そう笑顔で返した蓮は、見送りの為リビングを出ると、2人の元へと向かった、のだが…
『……えっ、なにっ??』
真っ直ぐに近づいてくる蓮の目線は、1ミリも外される事なく安積を捉え続け、そのあまりの真っ直ぐさに視線が反らせなくなる。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる