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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む「異母弟の…聖です!ご丁寧な挨拶、ありがとうございます。えっと、日を改めたいと言っていたと、後から兄に聞いて…あの時は何も知らずに話しかけてしまってすいません。こちらこそ、宜しくお願いしますっ!」
「えぇー??ちょっと2人共っ!? どうしたのっ!?固い固いっ!!」
ズイッと足を進め真横に立つと、2人の肩を叩いた兄へ、嫁の冷たい目が突き刺ささるが、そんな事などお構い無しに笑う様子を見るに、もはやこれは兄達の日常なのだろう。
「……気さくなのは良いことですが、見習うべき所は間違えないように。時と場所を選ぶのは大切ですから。どうか貴方は貴方のままで」
「はい。ありがとうございます。俺も薄々、そう思ってたので…頑張ります」
「酷いっ!?時と場所と、なんなら人も選んでるつもりなんだけどぉ!?」
そんな反発の声に、蓮と安積は2人揃って、月影へと疑心の目を向けた。
しかし、月影にはそんな2人の視線も糠に釘状態なようで、腑に落ちないといった表情を浮かべている。
確かに、安積が兄のフランクさに助けられているのは間違いなかった。兄まで畏まっていたら、緊張して挨拶すらまともに出来たかも怪しい。
けれど、蓮にとってどうなのかはまた別の問題で。チラリと蓮の様子を伺う安積だったが、髪に隠れその表情は伺い知れない。
しかし、蓮と見つめ合う兄が、はにかむような、ふんわりとした笑みを浮かべたのを見ると、きっと蓮も、安積と同じように助けられているのかもしれない。
『確か前に人見知りだって言ってたし…』
そう思い出せば、尚更突然来た事を申し訳なく思ってしまう。夜も遅いと言うのに化粧もしているようだし、部屋着ではなく、きっちりとした服装をしている。きっと慌てて準備してくれたに違いない…
「それで? 込み入った話をするようなら席を外しますが」
「あ、大丈夫! 宝物、見せようと思って! だから仕事部屋行くよ」
「…分かりました。何かあったら声かけてください」
「うん! いつもありがとう!」
「いえ」
「よしっ、じゃぁ聖っ!こっち!」
「あっ、うん!」
背を向けた兄を追いかける前に蓮へと軽く会釈をすると、笑顔と共に軽く手を振られ、冷たげな印象が強かった故のギャップに少しドキドキする。大人の女性に言うのも失礼かもしれないが、なんだか純粋に可愛いと思ってしまった。
なんて、口が避けても兄には言えないけれど。
嫁loveすぎる兄に言った日には、いったいどんな反応が返ってくるか予想も出来ず、少し怖い。触らぬ神になんちゃらと言うやつだ。
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