1,059 / 1,142
- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む「ありがとー!結構腕疲れるんだよねぇー」
「いや、別に良いんだけど…あのさ」
「うん?」
「バッサリいけとは言わないけど、もう少し短くしたら?」
鏡越しに向けられる呆れたような弟の目に、渋い顔をし、不満を込め小さく唸った。ちょくちょく痛みのでた毛先を切ったりはしているが、それ以外では、記憶にあるかぎり切った事はない。
手入れやなんや大変だと思うことはあっても、負けじとここまで伸ばしてきたのに、それを切るなんて…
「折角ここまで伸ばしたのにぃー?」
「それはそうかもだけど…皆びっくりしてるよ?」
「そうでしょそうでしょ!めちゃくちゃケア頑張ってるからね!!キューティクル凄いでしょ!」
「いや、確かにそれは凄いけど、皆驚いてるのそこじゃないから…」
本気でそう思っているのか、あえて話を反らしているのか…どちらにしても兄本人に切るつもりは毛頭なさそうだった。
『まぁ、本人が嫌なら切れとは言えないしなぁ』
しかし、本人も言っている通り、その髪は天使の輪がハッキリ浮かぶほど綺麗に手入れされており、染めたりなどは一切していないようだ。それももしかしたら、痛んでしまうからなのかもしれない。
『俺も見習うべきかな?』
金髪に近い程色を抜いているせいで、かなりダメージを受けているし、就職活動ともなれば、それを抜きにしても黒に戻すべきだろう。
「そうだ、聖!髪乾くまでまだまだ時間かかりそうだし、ちょっと昔話していーい?」
「えっ?…良いけど、なに急に? 昔話?」
「そ」
暖かなドライヤーの熱と、髪を乾かす優しい手に、今にも閉じてしまいそうになる瞼をなんとか持ち上げた月影は、戸惑いの表情を浮かべる弟へ精一杯の穏やかな笑顔を向ける。
只でさえ1度落ち、洗髪までしもらったのだ。寝てしまいそうになるのをなんとか堪える為、苦肉の策で昔話を持ちかけた。
「父さんが再婚したときの話」
「……再婚」
「あっ、暗い話じゃないから安心して!」
先程まではずっと暗い話が続いてたので、身構えるのも致し方ないだろう。安心させるように補足を入れる月影だったが、弟の顔は、どこか疑いが晴れないままだ。苦笑を浮かべると、古い記憶を手繰り寄せた。
「俺ね、エリシア……産みの母親の事は勿論記憶にはなかったんだけど、父さんが写真見せてくれて、沢山話も聞かせてくれてたから、自分の母親はこの人なんだって思ってたし、会うことは出来なくても、幸せそうに母さんの話をする父さんの姿が、すっごく大好きだったの」
「…凄く仲が良かったんだね」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる