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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む「…聖、あのさ」
「まだね、正直理由をハッキリ言葉にすることはまだ出来ないんだけど…でも、絶対後悔しないってのだけは、自信もって言えるよ」
「…そう」
「それにさ!それだけじゃなくて、ぼんやりだけどやってみたい仕事もあるんだよね!!」
「……そぉ、なの? それは初耳」
自分と継母の事もあるかもしれない。けれどそれだけではなく、ちゃんと自分のやりたいの為でもあって。そらならば選んだ道を応援するだけだ。
そしてそれは、今無理して継母と話す必要もなく、居心地悪くも都合の良い、ぬるま湯のような悪者という立場居られる事も指し示していた。
1歩踏み出す時なのかもしれないなんて格好いい事を思っておきながら、無責任にも人心地が訪れたのを感じ、小さく息を吐いた。
「で、やってみたい仕事って?」
「ひっ、秘密!!」
「……秘密ねぇ」
「Σあぁっ、秘密っ!秘密に、出来てる?」
「大丈夫、出来てるよw でもどうして秘密なの?」
「いや、なんかちょっと恥ずかしいというか…もうちょっと固まったら話す!!」
「そっか、じゃぁ楽しみにしてるよ。がんばれ、聖!」
「ありがと!!」
少し気にはなるが、まだ言いたくないのなら、言える時が来るまで待つとしよう。
自分の未来の事を思い浮かべているのだろうか?隣で気持ち良さそうに寝転び、少しワクワクしたような表情で天井を眺める弟を微笑ましく思いながら、髪から流れ落ちた水滴を指ですくうと、しわがれた指先がふと目に入った。
なんだかんだ話をしている内に、かなり時間が経ってしまっていたようだ。
「そろそろ上がろうか?結構居座っちゃったし」
「あっ、確かにっw 」
最後に折角だからと露天風呂に浸かり、2人仲良く温泉を後にした。
着替えを済まし、髪も乾かし終え、帰る準備は万端。
…なのは弟だけだった。
服が濡れないようバスタオルを縦にかけ、隅っこに座っているのにも関わらず、注目を集めているのは他の誰でもない兄だった。
スーパーロング以上もあるだろう髪はまだ乾ききっておらず、その長さのせいで驚いたような2度見を、何人もの人から受けている。
あ、男だ……という呟きと共に、ホッとした顔をした人とすれ違えば、なんだか少し申し訳なくなる。連れが居れば、少しは驚きも緩和されるだろうか……
兄へと近づくと、少しぼんやりとした目が弟を見上げ、笑い返すとその手からドライヤーを奪い取った。
若干忘れかけていたけれど、激務の後だって言っていたし長々話にも付き合わせてしまった。周辺の目の事もあるけれど、それ以上に感謝を込めて髪を乾かし始めた。
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