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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む「でさ、母さんにはもう言ってあるんだけど」
「うん?」
「俺、進学しないで就職するから。そんでそのまま実家も出る。実家出たらさ、もうやりたい放題じゃん?」
「やりたい放題って…」
「あっ、もちろん悪い事するつもりはないからねっ!」
焦ったように胸の前で両手を振る弟に、“そんな事思ってないよ” と返せば、安心したような笑みを浮かべた。
そもそも、どんなに考えても、弟が悪い事をするなど想像もできない。万が一したとしても、それはきっと誰も気に止めないような、小さく可愛らしい事だろう。
例えばそう、アルミとスチールで捨て口は分かれているけれど、実は中では分かれていないゴミ箱に、アルミの捨て口へスチールを入れる、みたいな。
兄馬鹿かもしれないが、そう言うふうにしか思えないのだからしょうがない。
「そうしたらさ、聖と一緒に居るのに母さんの許可とか必要ないじゃん、ってか、なんかめちゃグルグル考えちゃったけど、そもそも必要なかったんじゃん!?って、今思ったw」
「…本当にそれで良いの?」
「うん?どうして?」
「本当は嘘なんてつきたくないんじゃないの?」
「嘘……ぃや、嘘といか…うーん…」
「本当は皆で仲良くしたいんでしょう?」
そんなの、当たり前だ。
自分の好きな人達がいがみ合うなんて、悲しいに決まっている。それが自分の家族なら尚更だ。
けれど、悲しいけれど、それが出来ない場合だってある。
それが、納得出来てしまう場合もある。
「まぁ、“皆仲良く”が1番理想ではあるし、大事にしたい事だけど、それと同じくらい“皆楽しく”も大事にしたいから、嘘は嘘なんだけど…嘘と言うか、“皆楽しく”の為の手段、みたいな? 嘘とはちょっと違くて…うーん、上手く言えないw」
「……大丈夫、なんとなく伝わったよ。ありがとう。でもさ、どうして就職することにしたの?」
「それは……」
解決策を見出せた為か、饒舌に話し始めた弟の口がピタリと止まった。
勿論、本人が本人の未来の為に就職という道を選んだのなら、口を挟む気はない。
けれど、弟のその選択が、自分と継母の不仲が理由ならば…その事が、弟がやりたい事の妨げになってしまっているのだとしたら…
『そんなの…駄目に決まってる』
怖いなんて言ってる場合じゃない。
上手く行く補償なんてないし、なんなら悪化させてしまう未来だって見えるが、やはり今が1歩踏み出す時なのかもしれない。
『裕子さんと話を…直接じゃなくても、せめて父さんを介してー…』
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