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慰弦

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- 28章 -

-憎悪と情愛-

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兄が望む未来の為、いつか、母がわだかまりなく兄を受け入れられられる、そんな未来が来た時の為、その時に、兄が気持ち良く戻って来る事が出来るような、そんな家族で居る為に…と、思った安積だったが、どうやら、月影が伝えたかった事はそうではないらしい。


せい自身の為に、そうあれれば良いなって」

「……俺自身のため?」

「そう。嫌い!腹立つ!って思うのってさ、結構体力使うし、お腹もすくし、嫌な事ばっかり考えちゃったりするし、疲れもするでしょ?でもなにかしらの〝好き〟があれば、そのイライラも少しはマシになったりするじゃない?だから、有り難迷惑だったとしても、少しでも多く、せいがありがとう、好きっ!て思える何かを見つけられれば良いなって!」

「……言ってることは、なんとなく分かる、けど」

「それに、せいが怒ったり悲しんだり、しんどい思いしないで幸せで居られるなら、俺はその方が嬉しいって思うよ? だから、せいがそうなれたら、結果的に俺の為って事にもなんだよね!一石二鳥っ!」

「一石二鳥って…w」


月影は、誰が見ても分かる程に、長谷川の事を好いている。ちょっとなっと思う所があっても、それ以上の好きがあるから、いつも仲良く楽しく居られる。これは対象が親友でなくても、親兄弟、ご近所さん、上司だったり部下だったり、どんな人間関係でも同じことが言えるのだろう。

安積にとって、これは新たな発見だった。

『でも……』

兄が言っている事はなんとなく分かる。
分かるのだけど…

それでも、安積が母に対しと思う事は、ちょっとでは済ませない程、多くの不幸や悲しみを撒き散らしたもので。

それを許せる程の好きを、見つけられる気はしなかった。

好きになる以前に、好きを見つける以前に、大きすぎる嫌いに足どめを食らってしまう…

『前途多難すぎる…』

好きな所と、嫌いな所の大きさが違いすぎて、うまくバランスがとれない。大きさを度外視して、各々を切り分けて考え、接することが出来れば、いつかは兄のように余裕のある大人になれるのだろうか?


「…大人になれば、感謝出来るようになるかな?」

「さぁ、どうだろうね?」

「嘘でもなれるって言ってよ…」


はたして兄の期待に応えることが出来るのか?
少し心細くなっていたのは隠しようがなく、ここは嘘でもなれるって言って鼓舞して欲しかった…


「やー、これは大人子供と言うよりも、性格とか考え方の問題だと思うからさ。大人でも1つ嫌いな所があったら全部嫌いって人も居るし、それで良しってしてる人も居るし」

「でも、それは良くない事なんでしょ?」

「え? 別に悪くないよ?」

「……ないの?」

「うん」
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