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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む「俺も、勿論やり直したいって思ってたから、変な行動は起こさないようにしてたんだけど、ちょっと…ね、学校で色々とうまく行ってなくてさ。我慢しようと思ったんだけど、まだまだ子供で未熟だったから、思うように感情抑えられなくて……ぁー、まぁ、未熟なのは今もなんだけど」
『うまく行ってなかった?…って、もしかして虐めとか…ってこと?』
それ以外の何かなのかもしれないが、話の流れからそれしか考えられない。今の兄からは全くもって想像も出来ないが、嘘をつく理由もないだろう。
家のみではなく、学校でも辛い思いをしていた。家にも学校にも居場所がないなど、考えただけでも恐怖と孤独に胸が締め付けられる。
兄の身に一体どんな事があったのかは分からないが、兄に危害を加えた人達は、今更でも、今直ぐにでも、誰1人もらす事なく、渾身の力を込めて、一発殴ってやりたい程に許せない。
そんな怒りの感情を読み取られてしまったのか、少し慌てたような兄が、制止するように片手をぶんぶんと振った。
「あーっ、待って待ってっ!! 聖が考えてるような事された事なんて殆んどないからっ!そんなに怒らないでっ!」
「…そー、なの? 本当に??」
「本当本当っ! なんというか…まぁ、俺自身仕返しする気はね、まったくなかったんだけど…こう、色々とさ…俺じゃない人達が、ね…俺以上に奮起しちゃった、と言うか、なんというか…辛い思いしたのは、多分、結果的に俺より彼らの方だと思う」
「………そう」
かなり歯切れが悪く、濁した言い方をしているけれど、これはなんとなく分かってしまった。先程起こった現象は、兄の心境が起因しているのかも、と思ったのは、あながち外れではないのかもしれない。
もしそうだとしたらー
『そんなん、その人達の自業自得だよなぁ』
ざまぁみろ、とまでは言わないけれど、誰かにした悪い行いは必ず戻ってくるものだ。正しく因果応報だ。自業自得だ。少しスカッと感じてしまうのは否めず、なんとも複雑な気分が胸の中で渦巻いた。
『ほんと、良い子だなぁ、聖は』
弟の心中に渦巻く感情に、当時の自分はどうだっただろうかと思い馳せた月影だったが、それは自分の至らなさが浮き彫りになるだけだった。
あの頃の自分は間違いなく、彼らに対し、自業自得だ、良い気味だと…その他にも、攻撃的な考えを持っていたと思う。
もっともっと思い知れと、思ってしまっていた。それが結果的に悪い方向へと進んでしまう原因となってしまったのだから、反省しかでない。
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