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慰弦

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- 28章 -

-憎悪と情愛-

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『や、いじめはそんなになかったか…』

あったのは安積家を出るまで…
たしか中学へ上がる頃までだ。

何故かは問わないで欲しい。
…反省はしてる。

それ以降は、ただ遠くから向けられるそういった視線が、少し居心地悪かったくらいだ。今と違ってコントロールなんてものは出来ず、他人の感情が、良い事も悪い事もお構いなしに、無遠慮に流れ込んで疲弊していた事もあり、それはそれで助かったとも言えるし、自分から避けていた所もあるのだけど…

だからこそ弟のこの反応には驚きを感じ、嬉しくもありー

そして同時に、親友2人の反応が思い出され、懐かしさに笑みがこぼれた。


「…例えばさ」

「ん?」

「俺達人間が今みたいな姿じゃなくて、傘のマークの製薬会社が作ったBOWに感染した人みたいな見た目で、最初から生まれてくるのだとしたら、せいはゾンビを怖いって思うかな?」

「例えが具体的かつ独特っww でも、生まれた時からかぁ…それなら怖いとは思わなかったかも?」

「でしょ? そんな感じなんだよね。物心つく頃には色んな人達視てたからさ。まぁ、ビックリする時はあるけど。だから平気だよ」

「……なるほど?」


納得の言葉を口にしつつも疑問符がつくあたり、納得しきれていないのが見てとれるけれど、こればかりは自身が体験をしてみないと理解することは難しいのかもしれない。

まぁ、時を重ねる毎に大切なものが増え、もし彼等が…と考えるようになったせいか、少しばかり怖いという思いが出てくるようになったりはしているのだけれど…気を使うだろうしと、そこは黙っていることにした。


「子供だったから創造力も未熟だったし、共感能力とかもね、低かったから尚更だよね。そもそも彼等が亡くなってる人ってのにも気がついてなかったし。でも、心配してくれてありがとう」

「…うん」

「昔はね、そういう人達が視えるのが普通だと思ってたの。だから普通に話しかけたりとかしてたんだけど、それって端から見たら誰もいない所に話しかける変な子供じゃない?怖いなって思っちゃうし、対応だって困っちゃうよねぇ」


自虐的ともとれるような言葉を、笑いながら口にする、兄のその心境はなんなんだろうか?
言葉通りの様にも見えるし、敢えてそう言葉を口にする事で、悲しみを受け流している様にも見えた。


「でも、だからって…別に視たくて視てる訳じゃないし、分かりたくて分かっちゃう訳じゃなかったんだろ?」

「まぁ、それはそうなんだけどね」

「やっぱりそんなことでって思っちゃうし…理解して貰えなくて、ひじりだって辛かったはずだろ」
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