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慰弦

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- 28章 -

-憎悪と情愛-

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行き着いた答えは先程の話と同じくらい、いや、それ以上に非現実的で、口にするのも躊躇してしまう。恐る恐る兄を見れば、なんだか悲しそうな顔で笑っていた。


「信じられなくてもしょうがないと思うよ。怖がらせてごめんね」

「…ううん、大丈夫。でも…嘘じゃないんだよね?」

「うん」

「……ここ、誰か居るの?」

「そうだね。何人か。でも」


混雑している自分を他所に、不思議と自分達2人しか利用者が居ない寝湯を見渡す兄に、恐怖を覚える。正確に言えば、兄ではなく、ここに居るかもしれない誰かに。


「ふふっ」

「えっ、なに、笑ってるの?」

「いや、皆楽しそうだから、つい」

「…そう、なの?」

「うん。せいのおかげかなぁ」

「俺っ!?」


楽しそう…と言うことは、危険な人達ではないのかもしれないけれど、怖がる必要もないのかもしれないけれど、ここで自分の名前が出てくるのはなんだか少し不安になる。


「えーとね、中二病っぽく言えば光と影、みたいな。宗教っぽく言えば陰と陽、みたいな?せいみたいに心根が明るい人の周りには、光とか陽とか、明くて良い人が集まるんだよね。不思議と」


楽しそうに笑いながら、何故か自分のすぐ隣を見ている兄の視線が少し怖い。


「…なんか、喜んで良いんだか悪いんだかわからないんだけど…でも誉めてくれてありがと…」

「俺としてはありがたいよ? どういたしまして」


少しひきつった笑顔を浮かべ、然り気無く側へとよってきた弟に、怖い思いをさせたくせにと思われるかもしれないが、場違いに心が和む。


「で、でもさ、それがなんで原因になるの?」

「…色々理由はあったと思うけど、怖いでしょ?」

「怖い…」

「怖くないの?」

「そりゃ少しは。怖くないって言ったら嘘になるけど…でもひじりが居るから平気」

「そっか。ありがと」


嬉しいことを言ってくれる。でもそれは今だから言ってもらえる言葉であり、当時は難しい事だったと思う。それに、なににどれだけ恐怖を感じるかだって人それぞれだ。


「むしろ、怖いのはひじりの方じゃないの?」

「俺?」

「そう。…だって、ほら。中にはさ、その…残念な亡くなり方した人も、居るんでしょ?」

「……あぁ。そういうこと」

「大丈夫なの?」

「…俺の心配されるとは思わなかったなぁ」


自分からそういった者が視えると言うことは、孤児院の家族以外には言ったことはない。

だが、ふとした切っ掛けで知られてしまうことはあった。は気持ち悪がるか、怖がるか、奇人変人がるか…なんにしたってマイナスの印象をもたれ距離を取られ、いじめられ…
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