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- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む絶対なんてモノはこの世にはない。
迷うことなく否定する弟に、そんな言葉を言いかけてグッと飲み込んだ。
真っ直ぐな弟の言葉を否定する事はしたくなかった。
その言葉が覆る可能性も考えたくなかった。
それでも…
言ってしまった自身の発言に縛られて欲しくはない。
事実を伝えてしまったら、怖がらせてしまうかもしれないし、最低だと思わせてしまうかもしれない。今のように、一緒に居られなくなるかもしれない。
勿論それは悲しいけれど、弟が母を嫌いになってしまうかもしれない未来が訪れないで欲しいと願うのも、無理だと思ったらちゃんと自分から逃げて欲しいと願うのも、本心だ。
「分かった。でも、もし聖がそう思っちゃったとしても、責めたりはしないから…したいようにしてね」
「……うん」
その時は、少しでも罪悪感を感じないで欲しい。そんな思いから保険ともとれる言葉を伝えると、体を少し傾かせ弟へと向き直った。
「…この冬休みで」
「えっ?うん?」
「一番思い出に残った事ってなに?」
「おもい、で?」
「あぁ、言わなくて良いよ?考えてみて」
「うっ、うん??」
唐突な質問に、おおいに戸惑った表情を浮かべた弟は、思案するかのように目をさ迷わせた。きっと1番の思い出なら、本調子でない今の自分にでも感じ取れるはずだtー……
「せっ、聖っ!!ちょっと待ったっ!!」
「Σ えっ!? なっ、なになにっ??」
「………あの、やっぱり、2番目でお願い」
「にっ、2番目?? にばん、め、2番目…」
ぶわっと流れ込んできた1番の思い出は、兄としても衝撃的過ぎたというか…なんというか…
『いやっ…、恋愛成就は喜ばしい事なんだけどさっ…ちょっと早すぎじゃないっ!?というか…まさか過ぎる…っていうかそれが1番なのっ!?いやっ、でも思春期真っ只中だししょうがないのかっ!? とっ、取りあえず…これはっ』
これを知ってしまのは、色々まずい気がする……
片手で口元を覆い、動揺する気持ちをなんとか落ち着かせると、頭を切り替えもう一度意識を集中させてみる。
それでもちらつく弟の1番の思い出に、負けじと全力で意識をそらし、次第に見えてきた2番目の思い出に安堵の溜め息をつく。
『まぁ…これなら…』
「あの、聖?」
「あっ、ごめん、なに?」
「なに、ってゆーか、考えてって、なんなんだろうって?」
「あー……ごめん、そうだよね。突然言われてもって感じだよね。えーっと……」
うかがうように自分を見る弟の顔が、気まず恥ずかしで直視できない…。悟られないように天井を向いたまま言葉を探していく。
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